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文化的消費活動の日記

『コーラン』

 

コーラン 上 (岩波文庫 青 813-1)

コーラン 上 (岩波文庫 青 813-1)

 

 

 

コーラン〈中〉 (岩波文庫)

コーラン〈中〉 (岩波文庫)

 

 

 

コーラン 下 (岩波文庫 青 813-3)

コーラン 下 (岩波文庫 青 813-3)

 

 井筒俊彦訳による『コーラン』を読み終える。訳者による『『コーラン』を読む』の内容を思い出しながら。この本が神との契約に関する本であること、商人文化のなかから生まれてきた宗教であること。これらを押さえながら読んでいくと、この聖典が、先行するユダヤ教キリスト教聖典とどういったキャラクターの違いを持つのかがわかってくる。旧約聖書新約聖書の登場人物も盛んに登場し、さながら先行する聖典の二次創作的な雰囲気もあるのだが、あれをするな、これをするな、という戒律の盛り込み方が、とにかく多い。そして、しちゃいけないことをするとどうなるか、つまりは、神との契約不履行(というか神に対する債務不履行に近いか)の場合、どういう目に合うかまでしっかり書いてある。

ここに書かれた内容のどこまでが現代のイスラム法に反映されているのかわからないけれど、結婚・離婚に関する部分とか普通に面白い。訳者が解説で「物語性に欠けるので旧約聖書新約聖書のようには読めない」と書いているのだが、異文化に触れるためのテクストとしてかなり興味深い本だと思う。旧約聖書の登場人物たちやイエス、聖母マリアが登場しているところを読むと、ユダヤ教キリスト教のレガシーをどれほど引き継いでいるのかも推し量れる。

あと面白いのは、井筒がこの翻訳にどういう思いで取り組んだのか。「翻訳不可能なものをどんな風に日本語化するのかにめちゃくちゃ悩んだ」と上巻、下巻の解説で触れている。ちょっとね、この文章がまるで日本語ロック論争みたいで。そもそもコーランの翻訳自体がイスラム法で禁じられているらしいんだけれど、それを偉い学者に聞いたら「翻訳はダメだけど、コーランの日本語解説として出したら大丈夫」と言われたというエピソードも面白い。

関連エントリー

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鹿島茂 『パリの秘密』

 

パリの秘密 (中公文庫)

パリの秘密 (中公文庫)

 

 鹿島茂が「歴史探偵」となってパリに残された建物や地名に隠された秘密を紐解く、という本。有名な観光スポットにフォーカスを当てているのではなく、パリを歩いていてちょっと目につくもの、あるいは、歴史的なパリの街並みに紛れてしまって全然注目されないものを多く取り上げているのが楽しい。かなりマニアックな観光ガイドとしても読めそう。知ってる建物、行ったことがある建物がでてくると、嬉しいものです。いつか4度目のパリに行く機会があったら、振り返りたい一冊。

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ルー・テーズ 『鉄人 ルー・テーズ自伝』

 

 16歳でデビューし、74歳まで現役を続けたプロレス界の「鉄人」、ルー・テーズの自伝。プロレス・格闘技関連の本には基本あまりハズレがないのだが、本書も面白かった。デビューが1933年、現役最後の試合が1990年だから、戦前から20世紀末までプロレス界に身を置いた人物の話なので、面白くないわけがない。戦前のアメリカのプロレス業界が、戦後に組織が統一されていき、テレビの登場によってプロレスの内容自体が「テレビ映えするもの」へと変遷していくところが読み取れる点がとても興味深い。一種の歴史書、とも言えよう。

テーズ自身は結構地味、と言えるほど真面目な人っぽい感じが伝わってくるもの良かった。怪我で長期休場を余儀なくされているあいだに養鶏場でアルバイトをしていた、とか書いてあって。すでに世界王者を経験しているレスラーが、一生懸命ブロイラーを育てていた姿を想像すると、かなり楽しい。

なお、本書はプロレス・ライターの流智美による「翻訳」という体裁をとっているが、翻訳者がかなり内容を改変している部分があると思われる(現役晩年から不自然なほど日本のプロレス界とのつながりがフィーチャーされていたりする)。テーズ自身が自費出版した自伝を元にしているらしいのだが、翻訳権の記載などどこにもなく、かなり謎。

ビール批評 名古屋のクラフトビールに感心する、の巻

https://www.instagram.com/p/BPzl4QPD5Ki/

#beercritic サッポロ / ビアサプライズ 至福のコク 度数6.5%でかなりボディが豊か。でも、それだけ、という感じ。

https://www.instagram.com/p/BQIRet8B7Pv/

#beercritic 盛田金しゃちビール / ヴァイツェン ひょっとするとソニーのファウンダー、盛田昭夫さんの実家がらみのビールか? 酵母から醸し出される濃厚なバナナ香、クリーミーな口当たり、秀逸な一本です。 @healthyboy さん、 @yo38shida さん、ありがとうございました! 早速いただいてます。

https://www.instagram.com/p/BQIaV36h6yD/

#beercritic 盛田金しゃちビール / ペールエール これもしっかりと美味しい、ちゃんと作っているビールだ。苦味に独特な香ばしさを感じる。ゆっくり飲みたい一本。

名古屋のクラフトビールの店で他にも飲んだけれど、それも美味しかった。

少し離れた駅周辺が自宅最寄り駅よりも良い感じだったときの口惜しさ、そして終わりのない哀しみ

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厚岸の牡蠣。たぶん8年もの。

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兵庫の牡蠣。たぶん明石、10年もの。濃さがあった。

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義父母との会食。義父いきつけのお店にて、大変美味しいものをいただき。厚岸と兵庫の牡蠣の食べ比べ、兵庫の牡蠣のほうが明らかに年数が経っていて、味も良いのに厚岸の方が高かったのが謎。紹介され間違えた可能性もある。

ジャン=リュック・ゴダール 『ゴダール全評論・全発言II 1967-1985』

 

ゴダール全評論・全発言〈2〉1967‐1985 (リュミエール叢書)

ゴダール全評論・全発言〈2〉1967‐1985 (リュミエール叢書)

 

 2巻はもう映画評論なんか載ってなくて、おもに自作に関する文書とインタビューが収録されている。前半はジガ・ヴェルトフ集団時代のもので、フランスの映画産業の構造を批判したり、まぁ、真っ赤な感じで、熱い。後半はその真っ赤な熱が冷めて、というか挫折してて「映画で社会を動かそうとしてたけど、あれやっぱ上手くいかないわ」とか言っている。

1巻の感想はこちら。

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個人的には2巻のほうが面白かったな。読みどころとしてはアメリカの映画批評家と公開対談の模様を収めたものがあって。オーディエンスの質問も、対談相手の質問もなんかのらりくらりとケムに巻いていく様子が良かった。まず、相手から指摘されたことに対して肯定することがない。

一番面白いのは、ゴダールのオーダーでものすごい金出して作らせたカメラにまつわるもの。そのカメラを開発した技術者との対談なのだが、巨額の金を投じて製作したのに、ゴダールがまともに使ってくれなくて「あんたが欲しいって言ったから一生懸命作ったのにひどいじゃないか!」と恨みつらみをぶつけられる、というシロモノ。それに対して「いや、こういう技術的な問題があってさ」とまたのらりくらりと言い訳するゴダール。「そんな問題は解決されていたハズだ!」と畳み掛ける技術者。このやりとりが最高。ゴダール、ひどいな、と思いつつも、当時の撮影技術に関して勉強になる記述がいくつも含まれていたのが良かった。

夫婦で並んで立てるキッチンは良い

https://www.instagram.com/p/BQAgAvVBREw/

夫婦でキッチンに並んで一緒に作ったミネストローネ

 

ライオントリフボール Mサイズ

ライオントリフボール Mサイズ

 

 食器は河童橋で買ったもの。安かったから有名なブランドのコピー商品なんだと思う。雰囲気が出れば良いや。ミネストローネは、冷蔵庫に残ったキャベツを使わなきゃ、と思って作り始めたが、キャベツを入れ忘れた(後で足した)。

 

 

食事後、買ってから観てなかったゴダールの『軽蔑』。モラヴィアの原作をちゃんとなぞっててビックリした。でも、映画の映画なんだな、と。そして改めてブリジット・バルドーの顔が苦手、ということ確認。