sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

2017年7月に聴いた新譜

7月も結構怒涛で、いつこの流れが途切れるのやら……という感じだったし、家族が増えるなど色々と変化があった。

Negicco 2011~2017 -BEST- 2 [CD+Blu-ray Disc]

Negicco 2011~2017 -BEST- 2 [CD+Blu-ray Disc]

 

そんななかNegiccoの2枚目のベスト盤がやはり最高で。新曲1曲、初音源化1曲を含んでいるのだが、新曲はKIRINJI、初音源化曲はHomecomingsが提供している、というなんとも俺狙い撃ち的なものであってナイス。過去の曲も全体的に音圧があがって音が良くなっている(特に「アイドルばかり聴かないで」は劇的に良くなっている……!)ので、すべて新曲のような感覚で聴けるほど。特典でついてくるライヴBDも内容が素晴らしくて……。Negicco、まずはこれを聴いてくれ、と思う。8月にアナログがでるのだが、今それを買うかどうかめちゃくちゃ悩んでいる。


Negicco「愛は光」(作詞・作曲 堀込高樹、編曲 KIRINJI)

パープル・レイン DELUXE-EXPANDED EDITION

パープル・レイン DELUXE-EXPANDED EDITION

 

プリンスの『Purple Rain』リマスターも楽しみにしていたアイテム。ファン向けのアイテムには違いなく、そもそも『Purple Rain』って個人的にそんなに好きなアルバムじゃないから、そこまで衝撃を受けなかったんだけれど、アンドレ・シモンに提供した「Dance Electric」のプリンス・バージョンなど未発表音源が聴けて楽しい。あと、これもライヴDVDがついてくる。あまり画質も音質も良くないんだけれど、プリンスのセンス爆発の演出が最高で、生前に一度もライヴを見れなかった自分としてはグッときた。とくにプリンスがギターのネックを激しくコスると、ヘッドの先から液体がピューッとでるシーン。

Mellow Waves

Mellow Waves

 

Corneliusは11年ぶりでしたか……。METAFIVEでの活動やしょっちゅういろんな人のライヴに参加したりで、なにかしら姿形を見ていたから全然久しぶり、って感じがしない。音と音の隙間、構成で魅せていくところは前作を踏襲した感じがあるが、今回注目すべきは、音の質感で、とくに冒頭の「あなたがいるなら」のギター・ソロに顕著だけれど、ギターだけやけに生々しい、というか、空気の存在を感じる音で録音され、周りのペカペカした超クリア、超ハイファイな音とのものすごい差を感じる部分、これが面白かった。畏友、tmymさん(a.k.a メロウ番長)ともやりとりしたのだが「小山田圭吾までメロウって言い出して、やっぱ、時代はメロウだよな」と。

なぎ

なぎ

 

あと7月は環ROYの新譜を繰り返し聴いていた。名前は知っていたが、ちゃんと聴いたのは本作が初めて。日本人ラッパー、なのだが、この人の書くリリックの世界観やリズム感は、ヒップホップ、という感じではなくて、佐野元春と隣接するように思っていた。ビッグヒットなキラーチューンが含まれているわけではないのだが、アンビエント的なトラックも心地良くて、自然と聴く回数が多くなった。まぁ、疲れていたんだな、と思う。Corneliusも、環ROYも、なんとなく聴き流してても気持ちよい音。

リラックス

リラックス

 

4月に出たドメニコの新譜はピンとこなかったが、カシンの新譜は良かった(そういえば昨年のカエターノ・ヴェローゾの来日の際にも、彼の姿を見かけたな)。2000年代以降に活躍しはじめた「MPB新世代」のなかでも、この人のプロデュース能力やセンスは群を抜いている、と改めて。「Something Stupid」のポルトガル語カヴァなど、坂本慎太郎のソロにも通ずる音。

日韓台米混合のアイドル・グループ、TWICEの日本デビュー盤。最高ですよね、これ。ヒット曲「TT」をすでに聴いていたので「え、日本デビューまだだったの」という感じだけれども。日韓で歌詞の内容に違いがあるかどうかまで確認してないのだが、やはりヒット曲「TT」が良い曲すぎて。改めて、恐ろしいグループだな、と思った次第。成熟したパフォーマンス、で、歌詞は幼稚とも言えるほどガーリー。この落差はつんく♂中田ヤスタカばりの発明。このコンセプト、天才すぎる。


TWICE「TT -Japanese ver.-」Music Video

MOVE YOUR BODY

MOVE YOUR BODY

 

世界的なブギー・ムーヴメントの最中、注目を浴びる日本人ビート・メイカーのファースト。いや、これすごいな、と。今が2017年で、21世紀で、3年後には2回目の東京オリンピックが控えているとは思えないほど、燃え上がるようなブギー / ディスコの音で、言うなれば、アナクロニズムなのだけれども、めちゃくちゃカッコ良い。ジャケットのエッチな雰囲気も含めて最高。

音楽と私(限定盤)(DVD付)

音楽と私(限定盤)(DVD付)

 

原田知世のセルフカヴァ。伊藤ゴローのプロデュースがいい仕事、って感じで呉田軽穂がどんだけ良い曲を書きまくっていたか、を主に再確認した。

アーキテクト・ジョビン

アーキテクト・ジョビン

  • アーティスト: 伊藤ゴローアンサンブル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

伊藤ゴロー仕事でもう一枚。ジョビン名曲集。伊藤ゴローのブラジル音楽リスペクトものって、なんかキレイにまとまりすぎる感じがしてそこまでハマれてなかったのだが、これは大変に良かった。全編、クラシックの室内楽風のアレンジで演奏されているのだが、とくに「Luiza」(ジョビンが愛娘に捧げた大名曲)における遠藤真理(チェロ)と村治佳織(ギター)の演奏が美しすぎる。聴いていると、ジョビンがどれだけドビュッシーラヴェルといった印象派の作曲家に影響を受けていたのかを再確認することもできる。

Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]

Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]

 

テラス・マーティンの新プロジェクト。自身名義によるアルバムも最高にメロウでシャレオツだったけれども、こちらも最高。30歳過ぎたら、メロウに行かなきゃね、と再確認する。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンなど著名なジャズ・ミュージシャンが参加。アナログで出て欲しいな。

MANIJU(通常盤)

MANIJU(通常盤)

 

佐野元春の新譜、これは快作だなぁ、と。よくこんなカッコ良い日本語を思いつくよなぁ、と感心しまった。いまだに日本語ロックの可能性を広げてくれるようなアルバム。日本語でディランみたいな言葉の乗せ方を自然に実現してたりして。

新譜ではないけれど、佐藤博の『awakening』もよく聴いた。美容室で読んだ雑誌で藤原ヒロシだったかが紹介していたので聴いて見たんだけれども、今聴いても全然古びてないし、むしろ、今聴くのにすごく良いアルバム。 

「江戸博物文庫」シリーズ

江戸博物文庫 鳥の巻 ―――天地を舞う

江戸博物文庫 鳥の巻 ―――天地を舞う

 
江戸博物文庫 花草の巻 ―――四季を彩る

江戸博物文庫 花草の巻 ―――四季を彩る

 
江戸博物文庫 魚の巻―――水界の王族たち

江戸博物文庫 魚の巻―――水界の王族たち

 
江戸博物文庫 菜樹の巻―――恵みの稔り

江戸博物文庫 菜樹の巻―――恵みの稔り

 

書店でたまたま見かけて思わず全巻その場で買い求めてしまった本。ふだん読んでいる本のカテゴリー的なところからすると意外に思われるかもしれないが、これまで工作舍の本を熱心にフォローしてきてないわたしであるけれど、これは大変素晴らしいシリーズと思った。

18世紀末から19世紀のなかば、江戸時代後期に描かれた博物学的な図を、特定のテーマで集めて、それぞれに気の利いた短いコメントがついている。ただ、それだけの本なのだけれども、パラパラとめくっているだけで、ほわわ〜んと楽しくなってくる本である。読んでいて、そういえば子供の頃、図鑑を眺めるのが好きで、飽きずに何度も読んだっけ、と童心を思い出しつつ、こういう本を楽しんで今も読んでいる、つまりは三つ子の魂百まで、的なことわざを強烈に意識せざるをえない。

とりわけ「鳥の巻」を興味深く読んだ。扱われている鳥たちには、日本で見ることのできる種類だけでなく、東南アジアやニュージランド、あるいは中東やアフリカで見られる鳥も含まれている。これらは観賞用や愛玩用に珍妙な姿形をした鳥たちが輸入されていたという事実にもとづいている(生体だけでなく、剥製も輸入されていたという)。「江戸時代 = 鎖国」的なイメージをもっていると、こうした外国からの流入物が少し意外にも感じられるところであろう。

ただ「日本には好奇心と美意識、アートとサイエンスが一体となっていた幸福な時代があった」というキャッチコピーはいかがなものか。まるでこうした芸術と博物学の融合体的なヴィジュアル文化が日本固有のもの(日本文化はすごい!)と煽るかのようだが、有名なものであれば、ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテの『バラ図譜』のような例があるし、そもそも、日本の絵画史に写実的な表現がもたらされたのには、中国の沈南蘋の影響や、西洋の銅版画のインパクトがあったはずである。

つまりは、根元には海外からの文化の流入が存在しながら、独自の文化が育まれていったわけであって、ちゃんとこのへんの歴史的な経緯を掘り返したほうが、当世のグローバリズム的な時流に乗っかっているのではないか、と思う。世界のなかの江戸の文化、みたいな感じで。

ぶつくさと書き連ねたが、大変良いシリーズなので、ぜひバカ売れしてこの先も続刊が出て欲しいものである。新書サイズで場所を取らないのもグッド。

谷川健一 『谷川健一著作集 第7巻 女性史篇: 女の風土記 無告の民』

民俗学者谷川健一が女性史について言及した新聞連載や雑誌への寄稿を集めた本。『女の風土記』と『無告の民』という著作のワンセット。昔の人だし、書かれた時代(70年代前半)も古いし、今日の水準でこの本が「役に立つ女性史の本」か? と問われると相当な疑問が残る。というか、問題の方が多かろう。

たとえば、人身売買されて海外に娼婦として売られた、いわゆる「からゆきさん」が戦時中、国のために多額の寄付をおこなっていた、という点に対して「体を売って作った金を国のために使って、彼女たちはえらい!(近代日本のナショナリズムを彼女たちの汚い金が支えていた!)」みたいな形で、ひどい搾取を美化してストーリーを作っている感じ。そうした事実を掘り返して、伝えていることには価値を感じるし、実際面白いエピソードには枚挙にいとまがない。

けれど、その伝え方は「自分は男」(だから女の苦労はわかんない)みたいな突き放し方だと思うし、そもそも、男性優位の立場にどっしり腰を下ろして、女性を評価するような書きぶりである。ここまで谷川健一の著作をいろいろ読んできているが、この本が一番搾取を美化するやり方(要するに昔の日本にはこんなひどいことがあったんだぜ、それを耐え忍んでいた人たちはえらいでしょう! という話の作り方)がエグい。ある意味、谷川のストーリー作りの基本がこの本に一番現れている、とも言えるかも。

ただ、からゆきさんが地球上のどこまで到達していたのか、とか、戦時中の日本のスパイが馬賊に捕まった際、大陸に入り込んでいた日本人娼婦たちに何度も命を助けられていた、とか、紹介されている話はとても面白い。少し継続して調査してみたいポイントもいくつか見つかった。

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若桑みどり 『フィレンツェ: 世界の都市の物語』

フィレンツェ (講談社学術文庫)

フィレンツェ (講談社学術文庫)

 

イタリアのルネサンスマニエリスム期絵画研究で著名な研究者によるフィレンツェ案内。フィレンツェという都市の成立から、フィレンツェ、といえばもちろん、メディチ家であり、その一族の隆盛から没落までを描きつつ、最後はメディチ家が収集した美術品を収蔵しているウフィツィ美術館で見ることのできる作品をネタにしながら西洋美術の鑑賞の仕方について、図像学・図像解釈学に迫る……というもの。正直、都市の歴史と政治の歴史についての記述はかなりマニアックなものだと思うのだが、政治史と美術史が深く絡み合って語られるものだからなかなか読み飛ばせない。ダ・ヴィンチミケランジェロラファエロ……といっただれもがその名前を知っている天才たちを庇護していたのは時の権力者、であったのだから、その語りも当然といえば当然か。新婚旅行でいったフィレンツェ、また行きたいな、って思ったりもする。

2017年夏までに飲んだ焼酎

https://www.instagram.com/p/BPzo8kDDkj3/

#今日の一本 森伊蔵酒造 / 森伊蔵 定期的ないただきもの(義父がくれる)。お湯割りでいただくと、ホントにお芋そのものの香りである。しかしながら、すごい高級感。 

https://www.instagram.com/p/BRqKgVfh0fz/

#酒 一刻者〈茜〉、限定出荷らしい。めちゃくちゃフルーティ!

全量芋焼酎 一刻者 〈茜〉25% 720ml

全量芋焼酎 一刻者 〈茜〉25% 720ml

 

https://www.instagram.com/p/BTOBSXJBDke/

#酒 本坊酒造 / 大自然林 屋久島の女性杜氏によるいも焼酎。まろやかさと甘みが素晴らしい。

https://www.instagram.com/p/BUof5tABanF/

#酒 黒木本店 / 中々 先日の大分出張で麦焼酎に開眼。麦はすべての食事に合いそうな気がする。美味です。

https://www.instagram.com/p/BWARQfOBTU3/

#酒 #nouvelle風流 夏なんで、泡盛の一升瓶で。

泡盛 仲間酒造 宮の鶴 30度 1800ml

泡盛 仲間酒造 宮の鶴 30度 1800ml

 

https://www.instagram.com/p/BWpMlZNh0uU/

#酒 #焼酎探訪 柳田酒造 / 赤鹿毛 麦。宮崎の。これは素晴らしいな……。麦の香りと、柔らかい甘みのバランスが最高で。ソーダ割りは爽快感がすごいです。ハートランドのボトルには焼酎:水を6:4にしたものが入っています(前割りの仕込み)。

麦焼酎 赤鹿毛(あかかげ) 1.8L

麦焼酎 赤鹿毛(あかかげ) 1.8L

 

大分出張でたまたま飲んだ麦焼酎で「開眼」してしまい、麦をいろいろ攻めていっている。割って飲んでいる時の、食事の邪魔をしない感じは麦が一番良い。かと言って、味がしないわけではない。アルコール度数をビールぐらいうすーく割っても「お酒」の個性が伝わってくるし、なににでも合う。汎用性が高すぎる。

ハイボールや水割りを飲むのに良いグラス

ここ最近家で飲むものといえば、焼酎のソーダ割りや水割りが主で(もちろん、ビールも飲むのだけれど、焼酎を一升瓶で買って割って飲むことのコスパの良さに気づいてしまって)。これまでハードリカーを割って飲むときは、ロングカクテル用の細長いタンブラーを愛用していたんだけれど、それが割れてしまったから、新しいタンブラーを買い求めたのだった。

「酒飲みなら、グラスにはこだわりたい」とか言ってたのは、池波正太郎だったか、伊丹十三だったか。「この酒を飲むなら、このグラスだ!」みたいな理想のイメージがわたしのなかにもある。今回浮かんだイメージとしては、口にあたる部分が薄くて、飲み屋でサントリーの山崎だとか白州のハイボールを頼むとたまにウイスキーの銘柄名がプリントされてでてくるようなタンブラー、みたいなやつ。

東洋佐々木ガラス タンブラー 薄氷 うすらい 食洗器対応 日本製 B-21112CS
 

で買ったのが、これ。

https://www.instagram.com/p/BWofIRBBNJq/

極薄で有名な「うすはり」(松徳硝子)ほど繊細なつくりではないのだけれど、充分満足できる薄さであって、日常的に気兼ねなく使えそうな頑丈さ、そして値段の安さにおいて、すごく良い。これにたっぷりの氷をいれて、前割りの焼酎なんかを注いで飲むと、寝かせたことでよりまろやかに感じられる焼酎の甘みがさらに濃く感じられるよう。「そうそう、こないだ店で飲んだ前割りの焼酎って、こんなだったわ」と思った。

ロベルト・ボラーニョ 『通話』

[改訳]通話 (ボラーニョ・コレクション)

[改訳]通話 (ボラーニョ・コレクション)

 

ボラーニョの小説を読むのはこれが4冊目。第1短編集だがボラーニョの作家性のエッセンスを感じられ面白かった。ボラーニョを読むならまずこの一冊からか。冒頭を飾る「センシニ」が「架空の作家を主題にした小説」というボラーニョらしい一篇で、しかも大名作。「架空の作家もの」はこの他にも複数収録されているが、同じスタイルの作品ばかりではない。本短編集におけるカメレオン的にさえ思える作品のさまざまなスタイルは、作家のテクニックが只者ではないことを示している。ミステリータッチのものもあれば、(レイモンド・カーヴァーの小説にでてきそうな)報われない人生を送る女性が主人公の作品もある。どの作品もリリカルで、どの登場人物もつねになにか満たされないものを抱えて彷徨っているように見える。

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