sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

ロベルト・ボラーニョ 『チリ夜想曲』

 

チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

 

これまで読んだボラーニョ作品のなかでは、一番「普通」の小説かも。死の淵にいるチリ人司祭による語りの形式をとっていて、ボラーニョの作品に特徴的な分裂的な、多層的な声がない。あくまで語り手(カトリックの司祭であり、詩人であり、批評家である)ひとりの視点で固定されている。一方で、その独白はときに記憶の混濁を表現するかのようで、基本的には直線的な時間軸で進んでいるハズなのに、ひどく区切りが曖昧だ。深い眠りに入るまえにみる夢みたい。だが、それは「夢のようなおとぎ話」というわけでなく、悪夢的であるのがボラーニョらしい。歴史的な教会建築を保護するために飼われた鳩殺しのための鷹たち、ピノチェトに請われて秘密裏におこなわれるマルクスに関する講義、華やかな文壇パーティがおこなわれる館の地下でおこなわれる拷問。エルンスト・ユンガーなどの実在の作家も登場し、死にゆく者が語る人生は、嘘とともに振り返られるチリの現代史でもある。

https://www.instagram.com/p/BfU9qQgB2W5/

#nowreading ロベルト・ボラーニョ 『チリ夜想曲』まったく改行がない文章の密度と意識と流れ。主人公が詩人を目指しているあたり、ボラーニョ作品の「型」を感じるが、これまで読んだなかでは一番普通の小説かも。まだ読み途中だけど、分裂的(多層的)なヴォイスがまだ出てこない。

 

フランシス・スコット・フィッツジェラルド 『グレート・ギャツビー』

 

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

 

本屋で導かれるようにして手に取った村上春樹訳の『グレート・ギャツビー』。たしか大学2年のときの英語のクラスで「なんでも良いからペーパーバックを1冊読んで感想を書け」という課題があり、無謀にもこの原書にチャレンジした覚えがある。その後、野崎孝の訳で気になる部分だけチェックする、という読み方をしていたのだが、今回「読み直し」てみて、俺はいったいなにを読んでいたのか、という思いに駆られた。んー、すごい小説。比喩の超絶技巧がこれでもかと連続し、まばゆいところはひたすらギンギラに、陰鬱なところはひたすらじっとりと描きこまれていてすごい。

恋愛小説であり、ミステリーでもある。そして、青春小説でもあろう。もちろん、主題のひとつであるギャツビーのもの哀しい虚構性にグッときつつも、語り手であるニック・キャラウェイの目の前でうんざりするような悶着が起こったときにその日が自分の30歳の誕生日に気づくところ。ここがとても良かった。ニックはその瞬間、人生の個人的に節目、というか、青春時代が終わってしまった! みたいな気づきをえる。絶望! かなり大げさな表現だけども、そういう気持ちはわからないでもない。本書の執筆を終えたときのフィッツジェラルドはまだ30歳になっていなかったのだけれども。

そういえば、昨年読んだチャンドラーの『ロング・グッドバイ』の訳者解説で、この小説との関連性というか、親近性について触れられていた。今年は年始に『ノルウェイの森』(この小説が印象的な使われ方をする)を英語で読み直した。『グレート・ギャツビー』のまわりをグルグルとまわっていたのかも。これも完璧な小説だなあ。

https://www.instagram.com/p/BfFdFXOBGZr/

#nowreading フィッツジェラルド 『グレート・ギャツビー』たしか19歳ぐらいのときに原書で読もうとしてガリガリと辞書引きながら格闘した覚えがある。その後、野崎孝訳で気になるところだけチェックする、みたいな読み方をしていた。いま新しい訳で読みはじめたら「俺はいったいなにを読んでいたんだ?」と思うことが多々ある。

 

関根浩子 『サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開』

 

サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開

サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開

 

「サクロ・モンテ(直訳するならば『聖なる山』)」とは聞きなれない言葉だが、それもそのはず、日本で本格的に紹介されるのはほとんどこの本が初めてで、起源をさかのぼると「聖地エルサレムに巡礼するのは大変だから、近場に疑似体験できるものを作ろうゼ」という意図で作られたキリスト教の宗教施設のことらしい。

中世ヨーロッパのキリスト教徒にとっては、エルサレム、ローマ、サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼というのは、人生における超一大イベントで、10世紀にはちょっとしたブームのようなものになっていたようである。しかしながら、イスラーム勢力によってエルサレムにいくのが難しくなったり、修道会などが新たな宗教生活のありかたを広めたおかげで「そんなに頑張って巡礼しなくても良くね?」みたいな感じになっていた。

サクロ・モンテという施設はそうした時代に、発明された装置だった。エルサレムイエス・キリストがらみの遺構が再現されたり、また、イエスの「十字架の道行き」の過程が疑似体験できるようなアミューズメントが設置されたりする。

わざわざ遠くに行かなくても近場のサクロ・モンテにいけば、エルサレムにいったのと同等の霊験あらたかな体験ができる、ということで、これは日本における分霊・分社を彷彿とさせるし、東武ワールドスクウェアか、ハウステンボスみたいだね、と思った。

そういう代替とか模造とかで間に合わせよう、というカルチャーは、日本に独特のものだと思っていたので、ヨーロッパにもそういうのがあったのは意外な歴史、と驚いた。

当然このニセモノ・カルチャーは「間に合わせ」の意味もあるだろうし、反作用的に「ホンモノの価値を高める」意味もあっただろう。ミラノにあるサクロ・モンテに作られた「キリストの墓」には、木彫のキリストの像が置かれている。そのちょっといかがわしい感じ & ニセモノ感は秘宝館っぽささえある。

 

sekibang.hatenadiary.com

 

山本周五郎 『樅ノ木は残った』

 

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

 
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)

 
樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)

 

高校受験のときに志賀直哉の『赤西蠣太』を読んでから、ずっと「伊達騒動」が気になっていて、いつかそれを題材にした山本周五郎の本も読みたいな、と思っていたのだが、時代小説ってまったく読んだことがなくて二の足を踏み続け、結局こんな歳になってしまった。初時代小説、初山本周五郎。大変に面白かった。

はじめ人物が初登場するたびに石高が記述されたりするその語り口に「ほう、時代小説ってこんな感じですか」と面食らったのだが、慣れると普通に読める。この「若干とっつきにくいけど、慣れると普通にテクストの世界に入っていける」感じは、海外小説と同質のようにも思われる。「国老」とか「堀普請」とか、馴染みがない言葉が頻出するいわば「異世界」のテクストなんだけれど、そこに書かれていることには共感をもって読める、というか。それは「サモワール」とか「コペイカ」とか馴染みのない言葉が出てくる海外小説でも同じことが言える。

幕府の脅威となりうる伊達藩を分割しよう、という陰謀から藩を守ろうとするお侍さんの物語なのだが、人間の描き方、というかキャラクターが良くて。まず、陰謀にめちゃくちゃ巻き込まれつつ奮闘する主人公の原田甲斐が、ホントはサムライ業なんかよりも山で鹿とか魚とか追っている方が好きで「めんどくさいのに巻き込まないでくれ……生まれてきたところ間違えた……」とか思っているところが良いよな、と。また、肉欲に溺れて堕落してしまう青年とかでてきて、普遍性あることを扱ってんだなー、と感心するのだった。山本周五郎、ちょっとハマりそうです。

2018年1月に聴いた新譜

2017年に引き続き今年も聴いた新譜を記録していきます。今月は新譜よりも敬愛する我が音楽的メンターの方々の2017年総括から知らないものをチェックすることが多かった。

kokorosha.hatenablog.com

d.hatena.ne.jp

スケッチズフロムアンアイランド(SKETCHES FROM AN ISLAND)(直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

スケッチズフロムアンアイランド(SKETCHES FROM AN ISLAND)(直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

  • アーティスト: マークバロット,MARK BAROTT
  • 出版社/メーカー: MUSIC 4 YOUR LEGS IMPORT / INTERNATIONAL FEEL
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

なかでも衝撃だったのは、ココロ社さんが紹介していたマーク・バロット。アンビエントニューエイジモンド・ミュージックをまぜてとてもちょうど良くした感じ、とでもいうのだろうか。ダンスとチルアウトとの合間にあるちょうど良い感じが「そうそう、こういう音楽が俺はずーっと欲しかったんだよ」と思ってハマっていた。Apple Musicで聴ける音源を全部プレイリストにぶち込んで、ランダムでひたすらリピート再生していた。 

Moritz Von Oswald & Ordo Sakhn

Moritz Von Oswald & Ordo Sakhn

 

ここから新譜扱いの話。tdさんに教えていただいたモーリッツ・フォン・オズワルドのアルバム。これもすごかったな。キルギスの伝統音楽とのコラボレーションらしいのだが(なんで?)「普通のワールド・ミュージック」とみせかけて、突如MvOの存在感が強烈に表出する音響処理が施されたりして、衝撃を受けた。

Corner Song / the Flying Man

Corner Song / the Flying Man

 

テンペルホーフ & ジジ・マシンのシングルも上記2枚の延長線で聴いてた。どうもこういう無国籍サウンドに惹かれる傾向にある。

ACID TEKNO DISKO BEATz

ACID TEKNO DISKO BEATz

 

石野卓球のソロ。前作『Lunatique』は変態度が高い硬派なアルバムだったけれど、本作は1曲目からメロウな、スウィートな感じだと思った。

順当すぎるグラミー賞他部門受賞のブルーノ・マーズのシングル。これは本気で90年代を殺しにきている感じがして息が止まりそうだった。最高です。おめでとう。これにはだれも文句が言えないでしょう。


Bruno Mars - Finesse (Remix) [Feat. Cardi B] [Official Video]

Jason Halliday

Jason Halliday

 

90年代、といえばシャロン・ベンソンを手がけたプロデューサー、ジェイソン・ハリデーのアルバムもすごかった。「90年代のリブートもここまで来たか!」と衝撃を受けたが、これはお蔵入りアルバムの蔵出しだとわかって納得。そうだよね……さすがにいま、こんな90年代の久保田利伸みたいなジャケットはないよね、と。ぜひ、id:ayakomiyamotoさんにも聴いていただきたい。

Todo Homem (Ao Vivo) [feat. Tom Veloso]

Todo Homem (Ao Vivo) [feat. Tom Veloso]

 

一方、2017年にカエターノ・ヴェローゾが3人の息子(モレーノ、ゼカ、トム)とライヴ活動をしているニュースだけが伝わっており、これはその片鱗を伝えるシングル。ゼカ・ヴェローゾがメイン・ヴォーカルをとっているのだが、モレーノ・ヴェローゾの作品よりもカエターノの血を感じさせて良かった。早く全貌が知りたい。


Zeca Veloso, Caetano Veloso, Moreno Veloso - Todo Homem ft. Tom Veloso

Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher [日本限定独自企画盤]

Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher [日本限定独自企画盤]

 

ロンドンの今ジャズ・グループによるアルバム。アメリカ西海岸のクラブっぽいジャズ、R&Bのシャレオツ感と共鳴するのだが「クラブ・ジャズ(笑)」的なダサさもあって、なんでイギリスでジャズやるとこういう風になるんだ? と不思議に思う一枚。オシャレなんだけど、突然サン・ラの「Space is the Place」が始まったりして。 

Let Me Down

Let Me Down

 
Things Could Be Better

Things Could Be Better

 

UKのR&Bでは上記の2枚が良い曲だったな。スティーヴン・バミデルはR&Bと言って良いのか、ちょっとわからないが(Coldplayが歌っててもおかしくない曲だし)。

「春の祭典」~ライヴ・イン・ルツェルン2017

「春の祭典」~ライヴ・イン・ルツェルン2017

 

ここからはクラシック。リッカルド・シャイールツェルン音楽祭管弦楽団によるストラヴィンスキー曲集はメインの《春の祭典》が新しい名演で素晴らしかった。録音の良さもあると思うのだが(ライヴなのに!)異常に細部がよく分かる演奏になっていて、もう15年ぐらい聴き馴染みのある曲なのに「あー、ここ、こういう風になっていたんだ」と新しい発見をくれる。 

Claude Debussy

Claude Debussy

 

バレンボイムドビュッシーのアルバムを出すのは実は初めてらしい。もう指揮者活動しかしないのかと思ってたし、全然期待もしていなかったのだが、良い意味で裏切ってくれる内容。リリカル、なのだが、だらしない感じがまったくなくて。 

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

 

イザベル・ファウストクリスティアン・ベズイデンホウトによるバッハのソナタ集も繰り返し聴いていた。古楽スタイルと現代スタイルの折衷でやっている人の代表選手……つまり、どっちつかずの人、と思っていたのだが、悪くないじゃん、と見直すきっかけに。過去の録音を聴いてみて、ちょっとファンになりつつある。

Bach: Goldberg Variations, BWV 988

Bach: Goldberg Variations, BWV 988

 

苦笑してしまったのは、韓国出身のピアニスト、ジ・ヨンによる《ゴルトベルク変奏曲》。グレン・グールドの呪縛めいたものだけを強烈に感じさせる。なんかハチャメチャな自分なりの装飾とか解釈を入れてしまったりして露骨すぎるだろ、と思った。20年前ならまだ「異端的解釈」とか言われたかもしれないが、ちょっと今これはない感じがする。

カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー

カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー

 

最後に平賀さち枝とHomecomingsの新譜を。平賀さち枝先生はずっとHomecomingsに歌詞を書いてあげてほしい……。

村上春樹を英語で読み直す 『ノルウェイの森(Norwegian Wood)』

 

Norwegian Wood (Vintage International)

Norwegian Wood (Vintage International)

 

正月休みのあいだにふと『ノルウェイの森』を読み返したくなって、戯れにまた英語で読み直してみた。村上春樹を英語で読み直すのは、これが3作品目。英語力が向上しているのかなんなのかこれまでで一番スラスラ読めた。が、それは原著を2回ぐらい通して読んでいるからだと思う。かなり細部まで記憶してて驚いた。

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もうひとつ驚いたのが、自分がこの小説の映画化について結構長く感想を書いていたことで。ひと通り自分の文章を読んで見たんだけれども、絶望的なほどに映画のことを思い出せなかったし、なにを伝えようとしていたのか、俺は、と思った。映画については、水原希子の緑しか記憶にない。今回の再読では、緑が水原希子で完全に再生されるほどにハマっていた。

作者が「リアリズムで書いてみた小説」と言っていたのが、今回の再読で、たしかにそうだよな、と腹に落ちた。主人公のワタナベくんは、多少不思議な体験はするものの(夜中に夢遊病状態の直子が裸を見せにきたり)、謎のモンスターに追われたり、深い井戸の底に降りたりしない。ファンタジー要素がない。

訳者のジェイ・ルービンも「日本の伝統的な私小説のように書かれている」と解説しているのだが、ワタナベくんが突撃隊にもらった蛍を話すシーンの、リリカルな感じとかめちゃくちゃ「日本の純文学」っぽいよな、と思った。代表作のひとつ、でありながら、極めて異質な生活をもち、かつ、骨格はほかの村上春樹作品と同じ、という変な作品だ。

初めて読んだのは、18歳か19歳ぐらいだったと思う。直子の自殺が読者に告げられる部分を、夜中、上板橋の日当たりが悪いアパートで読んでいて「ゲッ! 直子死ぬの!?」と驚愕した体験は、2度目の読書、今回の3度目の読書でもフラッシュバックしたのだが、ナウ、俺、もうすぐ33歳という時期で「これまでと読み方が変わった部分があるか?」と問われれば、断然、レイコさんの立ち位置で。

キレイなんだけれど顔にシワが多い、アラフォーの、痩せた女性、レイコさん。彼女とワタナベくん(20歳)が最後、体を重ねるじゃないですか。これまでそのシーンがどうしてもグロテスク、っていうか、気持ち悪ぃな、オバサンを抱くのって、しんどくないの?、って思えて仕方なかったんだけど、いま、この歳になって読み直すと、いや、全然レイコさん、アリだな、っていう感じになっている。

https://www.instagram.com/p/BduxwA_BAra/

#nowreading 村上春樹 『ノルウェイの森』 新年の戯れに英訳で読みなおしはじめる。知っている物語が別な言語で理解される面白さというのがある。「突撃隊」は Storm Trooper です。

次は『海辺のカフカ』とか『ねじまき鳥クロニクル』とか読み直してみようかな。

松浦弥太郎 『センス入門』

 

センス入門

センス入門

 

松浦弥太郎クックパッドに入社したり、退社したり、『暮らしの手帖』の編集長だった、というプロフィールは、わたしの趣味・趣向とはほとんど重なってない。が、チェックしているインターネットの人の文章によくこの名前がでてきていて気になっていた。

で、インターネットで公開されている彼の文章に触れたときは正直「これはちょっとマイルドすぎるな、漂白されすぎちゃってないか?」と思って半ば「ケッ」っという感じだったのだ。だが、こないだ、一緒に仕事をしたことのある会社からきたメルマガでこの本が紹介されていたので「これは読まなきゃな」と思って注文した。

我がプリンシプルとして「3人以上から勧められたらとりあえず試してみる」というのがある。

で、「ケッ」っていう感じも少なからずあるんだけれど、これはとても良い本だと思っていて。金言満載だな、と。基本は当たり前のことを言ってんだけども。

センスをよくするにはどうするか、って「参考になるメンターになる人を探して真似して、学んでいくのが良いよね」(当たり前)。でもさ、だんだん年をとってくるとメンターも見つからなくなってくるじゃん。わたしもそうなんだけれど、常にメンターが欲しいと思っている、けれども、メンターが「かつてメンターだった人」になっちゃったり、追い越しちゃったり、ってことがあるわけだ。

そういうときにどうするんだ、って話がこの本には載っている。だから、これは「これからセンスを磨いていく若者」向けの本ではなくて、ある程度、なにかを培った人が自分を見直すための本であると思った。基本に立ち返って、人の話を聞いてみる、とかさ、当たり前のことが書いてあるけど、改めて「ああ、そうやって社会のなかで開かれていくと、学ぶことも増えていくよね」とか思う。

本やインターネットで調べるということは、最初から失敗をしない方法を選んでいることです。それは失敗から生まれる可能性も放棄していることになります。

もっと残念なのが、口コミやランキングで情報を得ようとすることです。こんなにたくさんの人が「いい」と言っているわけですから、大きく失敗することはありえないでしょう。でもそれが落とし穴です。「いい」という口コミで「当たり」を続けていると、自分で心から感動することができなくなってしまいます。それは発見ではなくて、確認という作業になってしまうのです。

上記引用は、わたしが選ぶ本書のベスト金言。

子供が生まれたこともあって、いろいろ自分のライフスタイルを見直しているんだけど、コレクションじゃなくてセレクション、とか「それ、今の俺に一番必要な言葉です!」とか痺れたりした。卑しいマインドでコレクションしてきたモノをセレクションに変えて、家のなかに息子のためのスペースを作っていく必要が俺にはあるんだ。

https://www.instagram.com/p/Befi5DnhHhQ/

#nowreading 松浦弥太郎 『センス入門』違う人、3人ぐらいが言及していると途端に気になってくる。松浦弥太郎もそんなきっかけで。決め手は一昨年一緒に仕事した会社から来たメルマガに松浦弥太郎の名前が載っていたこと。「あなたの心のなかには、あなた自身が経験したり発見したりして得たものがありますか?」