sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

2018年2月に聴いた新譜

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

 

今月はなんと言ってもRhyeだったな……。もう、ずーっと聴いてた。心地よく、ずっと、繰り返し繰り返し聴けるアルバム。ここまでハマったのはグラミーで賞をとりまくったブルーノ・マーズのアルバム以来かも。前作をスルーしていたことを恥じてしまうが、いま本アルバムと前作を比べて聴いてみると、あきらかに音楽が深化している。ダンスミュージックでありながら、ベッドタイムミュージックでもある、というR&Bの本質を結晶化したよう。2018年暫定ベスト。 

Um Corpo no Mundo

Um Corpo no Mundo

 

リリースは去年だが半年以内なので新譜として扱おう。ブラジルの女性歌手、ルエヂ・ルーナ。これがデビュー盤とのこと。これも良かったなー。Rhyeかこれか、ってぐらい繰り返し聴いたかも。ものすごくアフリカ色が強く、冒頭のギターから西アフリカあたりの伝統音楽の豊かさを感じさせるのだが、そこに彼女のヴォーカルが乗っかると非常に新鮮なブラジル音楽として響く、という。(もはや俺のなかでは完全に食傷気味になっている)いわゆる「ミナス新世代」が霞んでしまうぐらい。 

Terapia

Terapia

 

ラテンアメリカの音楽だとキューバのCimafunkのアルバムも「おー、良いじゃないの」と思った。世界的にも注目されていないので、俺が責任をもって注目しておく。ジャケット写真を見ると「お、キューバのWeekendか?」とか思ってしまうのだが、あんなナヨっとしてなくて、結構暑苦しい歌唱である。ちょっとブラジルのカルリーニョス・ブラウン的な暑苦しさだな、と。ただ、アルバム中に何曲か、良い感じにメロウな風が抜けるときがあって、それがグッときたね。とくにこの「Parar el Tiempo」って曲。


CIMAFUNK - Parar el tiempo [Acústico]

シェニア XENIA

シェニア XENIA

 

話をブラジルに戻すとバイーア出身のシェニア・フランサのデビュー盤も良いね〜、と思った。プロデュースにロウレンソ・ヘベッチスも関連しているそうで、昨年のアート・リンゼイのアルバムと似た感じはある。モダンR&Bとブラジル音楽の融合、という感じではかなり露骨。新鮮さではルエヂ・ルーナに軍配があがる。

Chris Dave & the Drumhedz

Chris Dave & the Drumhedz

 

ヒップホップとジャズをつなぐドラマー、クリス・デイヴのアルバムも結構良かったな。はじめピンとこなかったのだが、繰り返し聴くにつれ、おお、これはすごいゾ、となった。ドラマーのアルバムなので、当然ずっとドラムの音が入っていて、というか、ビートが感じられる内容で、“いまの気分”的には「ビート感希薄な曲が何曲か入ってて欲しいな」って思ってしまうのだけれども。ビラルの参加曲がとにかく色っぽくて良かったですね。

Sleepless Dreamer

Sleepless Dreamer

 

盟友、tdさんの今年の暫定ベストとのこと。ジャンルがApple Musicでは「Indie Rock」と表示されているのだが、あんまりインディー感がない、というか、音は「どメジャー」って感じである。ポップスの王道をいく、というか、なんか歌謡AORみたいな曲もあったりして「なんだこれは、どういうコンテクストからこういうアルバムがでてくるのよ」とか思った。とりあえず、表題曲の「Sleepless Dreamer」は抗えない大名曲。こういうキラキラしたギターのバッキング、ホント、好きじゃないわけがない。


Pearl Charles - Sleepless Dreamer (Single)

For Gyumri

For Gyumri

 

アルメニアのジャズ・ピアニスト、ティグラン・ハマシアンの音楽には、2月末で辞めた会社のなかにあるカフェで休憩してたときに初めてめぐり逢ったのだった。キース・ジャレット的な(ペラい)深遠さ(要するにECMっぽい感じ)がある一方で、おそらくはその出自からきているトラッド感と、ときどき聴くことのできるエゲツないポリリズムに燃える。ちょっと規範からハズれて聴こえるところが魅力的だ。

Pulse/Quartet

Pulse/Quartet

 

さて、ここからクラシックの話をしよう。スティーヴ・ライヒの新譜。《Pulse》は2015年、《Quartet》は2013年に書かれた曲。個人的な意見だけれども2010年の『Double Sextet / 2x5』というアルバム以来の快作だったのではないか。後者は近年のスティーヴ・ライヒの「手グセ感」を感じさせる「まぁ、悪くないよね」という曲なのだが(ちょっと吉松隆みたいな綺麗さがあるんだけれども)、《Pulse》は「ライヒ、こんな曲も書くのか」という新しさを感じさせる(初演当時は80歳だったらしいのだが)。ベースとウワモノではっきりとしたレイヤーの分離があって気持ち良いアンビエンス。「これ、何クトリック・カウンターポイント?」みたいな曲じゃない曲も投げてるところがエラい。

月の光~ドビュッシー:ピアノ名曲集

月の光~ドビュッシー:ピアノ名曲集

 

有名なピアニストが没後100年となるドビュッシーのアルバムを出している。まずはバレンボイム。御歳75歳(ドビュッシーのピアノ・アルバムはこれが初めてらしい)。もう指揮者としてのほうが有名で、てっきりピアニストとしては引退してるのかと思っていたぐらいなのだが、いやいや、これがなかなか素敵なドビュッシーで。メロウです。日本盤の表題曲にも使われている《月の光》なんか、情感たっぷりなルバートを使っているのだが、巨匠然とした重々しさがない。いや、タッチのみずみずしさなんか若々しくて、清潔感があって素晴らしいじゃないですか!

ドビュッシー:前奏曲集第2巻、白と黒で

ドビュッシー:前奏曲集第2巻、白と黒で

 

そしてポリーニドビュッシーを。まぁ、難しいのに聴き映えがしないアルバムを出したなぁ……としか思わないのだが、76歳でこのテクニックはすごいよなぁ……。一番ビックリするのはジャケット写真におけるポリーニの老け具合だけれども。えー! こんなにおじいちゃん感あったっけ?! と思った。 

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」&第29番「ハンマークラヴィーア」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」&第29番「ハンマークラヴィーア」

 

ビックリといえば、マレイ・ペライアベートーヴェン。「銭湯で録音したんですか?」ってツッコミをいれたくなるリヴァーブがかかっていて《ハンマークラヴィーア》の冒頭で吹いてしまった。来日の予定が体調不良でキャンセルになっているらしく、心配ではあるがこの人ぐらい「名前は知ってるけど、なにが得意なピアニストなんですか?」って思う演奏家はいないと思う。名前と演奏イメージが結びつかない、というか……。 

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

 

2017年からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任していたアンドリス・ネルソンス。いま注目の指揮者らしい。そのブルックナーの録音。いやー、なかなか良いんじゃないですか、このブルックナーは。4月には7番の録音もでるみたいなので、そっちに期待。4番は曲があんまり好きじゃないので何度も繰り返しは聴けなかった。 

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

 

イザベル・ファウストの演奏はこれまでノータッチだったのだが、今回のバッハの録音はハープシコードクリスティアン・ベズイデンホウトだったので。バッハのヴァイオリンのための曲って無伴奏ばかり聴いていて鍵盤の伴奏ある曲はあまり馴染みがなかったのだけれど、良いですね……。とくに3番の3楽章のアダージョ。これはメロウ。イザベル・ファウストという演奏家もこれをきっかけに過去の録音を聴いてみたら、聴いたことないカデンツァでベートーヴェンのコンチェルトを録音していたり面白かった。

カリプソ娘に花束を (通常盤)

カリプソ娘に花束を (通常盤)

 

2月はNegiccoのひさしぶりのシングルも出てて、もちろんこれも7インチをゲットした。ウェディングソング。完全に娘を嫁に送り出すお父さんの気持ちで聴いてしまって泣けたね……。


Negicco「カリプソ娘に花束を」(作詞・作曲 connie 編曲 YOUR SONG IS GOOD)

 

ロベルト・ボラーニョ 『チリ夜想曲』

 

チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

チリ夜想曲 (ボラーニョ・コレクション)

 

これまで読んだボラーニョ作品のなかでは、一番「普通」の小説かも。死の淵にいるチリ人司祭による語りの形式をとっていて、ボラーニョの作品に特徴的な分裂的な、多層的な声がない。あくまで語り手(カトリックの司祭であり、詩人であり、批評家である)ひとりの視点で固定されている。一方で、その独白はときに記憶の混濁を表現するかのようで、基本的には直線的な時間軸で進んでいるハズなのに、ひどく区切りが曖昧だ。深い眠りに入るまえにみる夢みたい。だが、それは「夢のようなおとぎ話」というわけでなく、悪夢的であるのがボラーニョらしい。歴史的な教会建築を保護するために飼われた鳩殺しのための鷹たち、ピノチェトに請われて秘密裏におこなわれるマルクスに関する講義、華やかな文壇パーティがおこなわれる館の地下でおこなわれる拷問。エルンスト・ユンガーなどの実在の作家も登場し、死にゆく者が語る人生は、嘘とともに振り返られるチリの現代史でもある。

https://www.instagram.com/p/BfU9qQgB2W5/

#nowreading ロベルト・ボラーニョ 『チリ夜想曲』まったく改行がない文章の密度と意識と流れ。主人公が詩人を目指しているあたり、ボラーニョ作品の「型」を感じるが、これまで読んだなかでは一番普通の小説かも。まだ読み途中だけど、分裂的(多層的)なヴォイスがまだ出てこない。

 

フランシス・スコット・フィッツジェラルド 『グレート・ギャツビー』

 

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

 

本屋で導かれるようにして手に取った村上春樹訳の『グレート・ギャツビー』。たしか大学2年のときの英語のクラスで「なんでも良いからペーパーバックを1冊読んで感想を書け」という課題があり、無謀にもこの原書にチャレンジした覚えがある。その後、野崎孝の訳で気になる部分だけチェックする、という読み方をしていたのだが、今回「読み直し」てみて、俺はいったいなにを読んでいたのか、という思いに駆られた。んー、すごい小説。比喩の超絶技巧がこれでもかと連続し、まばゆいところはひたすらギンギラに、陰鬱なところはひたすらじっとりと描きこまれていてすごい。

恋愛小説であり、ミステリーでもある。そして、青春小説でもあろう。もちろん、主題のひとつであるギャツビーのもの哀しい虚構性にグッときつつも、語り手であるニック・キャラウェイの目の前でうんざりするような悶着が起こったときにその日が自分の30歳の誕生日に気づくところ。ここがとても良かった。ニックはその瞬間、人生の個人的に節目、というか、青春時代が終わってしまった! みたいな気づきをえる。絶望! かなり大げさな表現だけども、そういう気持ちはわからないでもない。本書の執筆を終えたときのフィッツジェラルドはまだ30歳になっていなかったのだけれども。

そういえば、昨年読んだチャンドラーの『ロング・グッドバイ』の訳者解説で、この小説との関連性というか、親近性について触れられていた。今年は年始に『ノルウェイの森』(この小説が印象的な使われ方をする)を英語で読み直した。『グレート・ギャツビー』のまわりをグルグルとまわっていたのかも。これも完璧な小説だなあ。

https://www.instagram.com/p/BfFdFXOBGZr/

#nowreading フィッツジェラルド 『グレート・ギャツビー』たしか19歳ぐらいのときに原書で読もうとしてガリガリと辞書引きながら格闘した覚えがある。その後、野崎孝訳で気になるところだけチェックする、みたいな読み方をしていた。いま新しい訳で読みはじめたら「俺はいったいなにを読んでいたんだ?」と思うことが多々ある。

 

関根浩子 『サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開』

 

サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開

サクロ・モンテの起源: 西欧におけるエルサレム模造の展開

 

「サクロ・モンテ(直訳するならば『聖なる山』)」とは聞きなれない言葉だが、それもそのはず、日本で本格的に紹介されるのはほとんどこの本が初めてで、起源をさかのぼると「聖地エルサレムに巡礼するのは大変だから、近場に疑似体験できるものを作ろうゼ」という意図で作られたキリスト教の宗教施設のことらしい。

中世ヨーロッパのキリスト教徒にとっては、エルサレム、ローマ、サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼というのは、人生における超一大イベントで、10世紀にはちょっとしたブームのようなものになっていたようである。しかしながら、イスラーム勢力によってエルサレムにいくのが難しくなったり、修道会などが新たな宗教生活のありかたを広めたおかげで「そんなに頑張って巡礼しなくても良くね?」みたいな感じになっていた。

サクロ・モンテという施設はそうした時代に、発明された装置だった。エルサレムイエス・キリストがらみの遺構が再現されたり、また、イエスの「十字架の道行き」の過程が疑似体験できるようなアミューズメントが設置されたりする。

わざわざ遠くに行かなくても近場のサクロ・モンテにいけば、エルサレムにいったのと同等の霊験あらたかな体験ができる、ということで、これは日本における分霊・分社を彷彿とさせるし、東武ワールドスクウェアか、ハウステンボスみたいだね、と思った。

そういう代替とか模造とかで間に合わせよう、というカルチャーは、日本に独特のものだと思っていたので、ヨーロッパにもそういうのがあったのは意外な歴史、と驚いた。

当然このニセモノ・カルチャーは「間に合わせ」の意味もあるだろうし、反作用的に「ホンモノの価値を高める」意味もあっただろう。ミラノにあるサクロ・モンテに作られた「キリストの墓」には、木彫のキリストの像が置かれている。そのちょっといかがわしい感じ & ニセモノ感は秘宝館っぽささえある。

 

sekibang.hatenadiary.com

 

山本周五郎 『樅ノ木は残った』

 

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

 
樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (中) (新潮文庫)

 
樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)

樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)

 

高校受験のときに志賀直哉の『赤西蠣太』を読んでから、ずっと「伊達騒動」が気になっていて、いつかそれを題材にした山本周五郎の本も読みたいな、と思っていたのだが、時代小説ってまったく読んだことがなくて二の足を踏み続け、結局こんな歳になってしまった。初時代小説、初山本周五郎。大変に面白かった。

はじめ人物が初登場するたびに石高が記述されたりするその語り口に「ほう、時代小説ってこんな感じですか」と面食らったのだが、慣れると普通に読める。この「若干とっつきにくいけど、慣れると普通にテクストの世界に入っていける」感じは、海外小説と同質のようにも思われる。「国老」とか「堀普請」とか、馴染みがない言葉が頻出するいわば「異世界」のテクストなんだけれど、そこに書かれていることには共感をもって読める、というか。それは「サモワール」とか「コペイカ」とか馴染みのない言葉が出てくる海外小説でも同じことが言える。

幕府の脅威となりうる伊達藩を分割しよう、という陰謀から藩を守ろうとするお侍さんの物語なのだが、人間の描き方、というかキャラクターが良くて。まず、陰謀にめちゃくちゃ巻き込まれつつ奮闘する主人公の原田甲斐が、ホントはサムライ業なんかよりも山で鹿とか魚とか追っている方が好きで「めんどくさいのに巻き込まないでくれ……生まれてきたところ間違えた……」とか思っているところが良いよな、と。また、肉欲に溺れて堕落してしまう青年とかでてきて、普遍性あることを扱ってんだなー、と感心するのだった。山本周五郎、ちょっとハマりそうです。

2018年1月に聴いた新譜

2017年に引き続き今年も聴いた新譜を記録していきます。今月は新譜よりも敬愛する我が音楽的メンターの方々の2017年総括から知らないものをチェックすることが多かった。

kokorosha.hatenablog.com

d.hatena.ne.jp

スケッチズフロムアンアイランド(SKETCHES FROM AN ISLAND)(直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

スケッチズフロムアンアイランド(SKETCHES FROM AN ISLAND)(直輸入盤帯ライナー付国内仕様)

  • アーティスト: マークバロット,MARK BAROTT
  • 出版社/メーカー: MUSIC 4 YOUR LEGS IMPORT / INTERNATIONAL FEEL
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

なかでも衝撃だったのは、ココロ社さんが紹介していたマーク・バロット。アンビエントニューエイジモンド・ミュージックをまぜてとてもちょうど良くした感じ、とでもいうのだろうか。ダンスとチルアウトとの合間にあるちょうど良い感じが「そうそう、こういう音楽が俺はずーっと欲しかったんだよ」と思ってハマっていた。Apple Musicで聴ける音源を全部プレイリストにぶち込んで、ランダムでひたすらリピート再生していた。 

Moritz Von Oswald & Ordo Sakhn

Moritz Von Oswald & Ordo Sakhn

 

ここから新譜扱いの話。tdさんに教えていただいたモーリッツ・フォン・オズワルドのアルバム。これもすごかったな。キルギスの伝統音楽とのコラボレーションらしいのだが(なんで?)「普通のワールド・ミュージック」とみせかけて、突如MvOの存在感が強烈に表出する音響処理が施されたりして、衝撃を受けた。

Corner Song / the Flying Man

Corner Song / the Flying Man

 

テンペルホーフ & ジジ・マシンのシングルも上記2枚の延長線で聴いてた。どうもこういう無国籍サウンドに惹かれる傾向にある。

ACID TEKNO DISKO BEATz

ACID TEKNO DISKO BEATz

 

石野卓球のソロ。前作『Lunatique』は変態度が高い硬派なアルバムだったけれど、本作は1曲目からメロウな、スウィートな感じだと思った。

順当すぎるグラミー賞他部門受賞のブルーノ・マーズのシングル。これは本気で90年代を殺しにきている感じがして息が止まりそうだった。最高です。おめでとう。これにはだれも文句が言えないでしょう。


Bruno Mars - Finesse (Remix) [Feat. Cardi B] [Official Video]

Jason Halliday

Jason Halliday

 

90年代、といえばシャロン・ベンソンを手がけたプロデューサー、ジェイソン・ハリデーのアルバムもすごかった。「90年代のリブートもここまで来たか!」と衝撃を受けたが、これはお蔵入りアルバムの蔵出しだとわかって納得。そうだよね……さすがにいま、こんな90年代の久保田利伸みたいなジャケットはないよね、と。ぜひ、id:ayakomiyamotoさんにも聴いていただきたい。

Todo Homem (Ao Vivo) [feat. Tom Veloso]

Todo Homem (Ao Vivo) [feat. Tom Veloso]

 

一方、2017年にカエターノ・ヴェローゾが3人の息子(モレーノ、ゼカ、トム)とライヴ活動をしているニュースだけが伝わっており、これはその片鱗を伝えるシングル。ゼカ・ヴェローゾがメイン・ヴォーカルをとっているのだが、モレーノ・ヴェローゾの作品よりもカエターノの血を感じさせて良かった。早く全貌が知りたい。


Zeca Veloso, Caetano Veloso, Moreno Veloso - Todo Homem ft. Tom Veloso

Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher [日本限定独自企画盤]

Chapter 7 + Juan Pablo: The Philosopher [日本限定独自企画盤]

 

ロンドンの今ジャズ・グループによるアルバム。アメリカ西海岸のクラブっぽいジャズ、R&Bのシャレオツ感と共鳴するのだが「クラブ・ジャズ(笑)」的なダサさもあって、なんでイギリスでジャズやるとこういう風になるんだ? と不思議に思う一枚。オシャレなんだけど、突然サン・ラの「Space is the Place」が始まったりして。 

Let Me Down

Let Me Down

 
Things Could Be Better

Things Could Be Better

 

UKのR&Bでは上記の2枚が良い曲だったな。スティーヴン・バミデルはR&Bと言って良いのか、ちょっとわからないが(Coldplayが歌っててもおかしくない曲だし)。

「春の祭典」~ライヴ・イン・ルツェルン2017

「春の祭典」~ライヴ・イン・ルツェルン2017

 

ここからはクラシック。リッカルド・シャイールツェルン音楽祭管弦楽団によるストラヴィンスキー曲集はメインの《春の祭典》が新しい名演で素晴らしかった。録音の良さもあると思うのだが(ライヴなのに!)異常に細部がよく分かる演奏になっていて、もう15年ぐらい聴き馴染みのある曲なのに「あー、ここ、こういう風になっていたんだ」と新しい発見をくれる。 

Claude Debussy

Claude Debussy

 

バレンボイムドビュッシーのアルバムを出すのは実は初めてらしい。もう指揮者活動しかしないのかと思ってたし、全然期待もしていなかったのだが、良い意味で裏切ってくれる内容。リリカル、なのだが、だらしない感じがまったくなくて。 

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

 

イザベル・ファウストクリスティアン・ベズイデンホウトによるバッハのソナタ集も繰り返し聴いていた。古楽スタイルと現代スタイルの折衷でやっている人の代表選手……つまり、どっちつかずの人、と思っていたのだが、悪くないじゃん、と見直すきっかけに。過去の録音を聴いてみて、ちょっとファンになりつつある。

Bach: Goldberg Variations, BWV 988

Bach: Goldberg Variations, BWV 988

 

苦笑してしまったのは、韓国出身のピアニスト、ジ・ヨンによる《ゴルトベルク変奏曲》。グレン・グールドの呪縛めいたものだけを強烈に感じさせる。なんかハチャメチャな自分なりの装飾とか解釈を入れてしまったりして露骨すぎるだろ、と思った。20年前ならまだ「異端的解釈」とか言われたかもしれないが、ちょっと今これはない感じがする。

カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー

カントリーロード/ヴィレッジ・ファーマシー

 

最後に平賀さち枝とHomecomingsの新譜を。平賀さち枝先生はずっとHomecomingsに歌詞を書いてあげてほしい……。

村上春樹を英語で読み直す 『ノルウェイの森(Norwegian Wood)』

 

Norwegian Wood (Vintage International)

Norwegian Wood (Vintage International)

 

正月休みのあいだにふと『ノルウェイの森』を読み返したくなって、戯れにまた英語で読み直してみた。村上春樹を英語で読み直すのは、これが3作品目。英語力が向上しているのかなんなのかこれまでで一番スラスラ読めた。が、それは原著を2回ぐらい通して読んでいるからだと思う。かなり細部まで記憶してて驚いた。

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もうひとつ驚いたのが、自分がこの小説の映画化について結構長く感想を書いていたことで。ひと通り自分の文章を読んで見たんだけれども、絶望的なほどに映画のことを思い出せなかったし、なにを伝えようとしていたのか、俺は、と思った。映画については、水原希子の緑しか記憶にない。今回の再読では、緑が水原希子で完全に再生されるほどにハマっていた。

作者が「リアリズムで書いてみた小説」と言っていたのが、今回の再読で、たしかにそうだよな、と腹に落ちた。主人公のワタナベくんは、多少不思議な体験はするものの(夜中に夢遊病状態の直子が裸を見せにきたり)、謎のモンスターに追われたり、深い井戸の底に降りたりしない。ファンタジー要素がない。

訳者のジェイ・ルービンも「日本の伝統的な私小説のように書かれている」と解説しているのだが、ワタナベくんが突撃隊にもらった蛍を話すシーンの、リリカルな感じとかめちゃくちゃ「日本の純文学」っぽいよな、と思った。代表作のひとつ、でありながら、極めて異質な生活をもち、かつ、骨格はほかの村上春樹作品と同じ、という変な作品だ。

初めて読んだのは、18歳か19歳ぐらいだったと思う。直子の自殺が読者に告げられる部分を、夜中、上板橋の日当たりが悪いアパートで読んでいて「ゲッ! 直子死ぬの!?」と驚愕した体験は、2度目の読書、今回の3度目の読書でもフラッシュバックしたのだが、ナウ、俺、もうすぐ33歳という時期で「これまでと読み方が変わった部分があるか?」と問われれば、断然、レイコさんの立ち位置で。

キレイなんだけれど顔にシワが多い、アラフォーの、痩せた女性、レイコさん。彼女とワタナベくん(20歳)が最後、体を重ねるじゃないですか。これまでそのシーンがどうしてもグロテスク、っていうか、気持ち悪ぃな、オバサンを抱くのって、しんどくないの?、って思えて仕方なかったんだけど、いま、この歳になって読み直すと、いや、全然レイコさん、アリだな、っていう感じになっている。

https://www.instagram.com/p/BduxwA_BAra/

#nowreading 村上春樹 『ノルウェイの森』 新年の戯れに英訳で読みなおしはじめる。知っている物語が別な言語で理解される面白さというのがある。「突撃隊」は Storm Trooper です。

次は『海辺のカフカ』とか『ねじまき鳥クロニクル』とか読み直してみようかな。