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文化的消費活動の日記

犬塚壮志 『東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる』

 

東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる

東大院生が開発! 頭のいい説明は型で決まる

 

駿台講師による伝わる説明方法のメソッド。「なぜ、自分の話は伝わらないのか……」と悩んだことがないもので、個人的には新しく学ぶところがあまりなかったのだが、過去の経験を振り返ってみたら「あの話法ってこういう型で分析すると、型通りの話法だったんだなあ」と時間差で感心がおこったりする。具体的に言うと、過去に金融機関に勤めていたときに1ヶ月ぐらいフィールドにでて、営業をやるという実習があった。その際にメンターとなってくれたスーパー営業マンから享受された話法。人の話し方を分析したり、改善させたりするときのツールとして本書で提唱されている「IKPOLET法」を使うと良いのかもしれない。

篠原信 『自分の頭で考えて動く部下の育て方: 上司1年生の教科書』

 

自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書

自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書

 

著者は農学系の研究者(人事とか、コンサルとかこの手の本を出しそうなエキスパートではない)のだが、大変に良い本だと思う。「上司1年生の教科書」というサブタイトルに偽りなし。

基本的な方針としては、

  1. 新人はできないのが当たり前という前提の上で
  2. 上司はあれこれ指示出しせずに方向性だけ示して、上手いこと行かせたい方向に進ませる
  3. それをあとから反省させたり、良いフィードバックを与える

こういうプロセスを繰り返しおこなうことで、自分の頭で考えて動く部下が育つんだ、と。このためにどうすれば良いのか、アンチパターンも含めて丁寧に解説してある。自分より年上だったり、ベテランの部下への接し方もカヴァーしてあってありがたい。

部下(または自分が指導する相手)を持つ立場になって 、それなりに時間が経つけれど、これまでうまく行かなかったことを反省する機会になったし、自分が「良い上司だなぁ」、「この人は育成が上手いなあ」と思っていた人のふるまいの意味について「ああ、あれはこういうことだったんだな」という気づきを得ることができた。

本書に書かれたような指導を受けなくても育つ人っているよね、と考えたのだけれども、そういう人はたぶん自分のほうから上司に働きかけて、良い指導を引き出すことができているんだろうな。そういう意味で、本書は部下側が読んでも良いんじゃないか。まともに指導ができない上司から良い指導を引き出すために部下が頑張る、ってなかなか涙ぐましい話ではあるけれども……。

スティーヴ・ソレイシィ 大橋弘佑 『難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!』

 

難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!

難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!

 

NHKラジオの講師も務める英会話講師(昔、わたしもこの人が講師を努めている番組のテキストを買って勉強していたことがある)による英語教材。英語を話すときに日本人が心理的障壁として感じがちな「間違ってたら恥ずかしい」、「間違えたら怖い」というハードルを下げてくれる良い本だと思う。既存の英語知識を利用して、言いたいことをとりあえず伝えるためのテクニックが紹介されていて、とても勉強になった。

中学で英語の勉強をはじめて、20年以上経っているけれども「え、こんなテクニックがあるなら中学校で教えてよ!」と思う。初めて英語圏に旅行する前に読んでおきたい本かもしれない。こうしたテクニックと著者が提唱する英会話習得の方法についての案内が本書の大まかな内容。習得方法については、

  • オンライン英会話を活用しろ
  • スピーキングテストを受けろ

この2つとなっていて「自分もちょっとやってみようかな(何度も人生のなかで諦めているけれど、次こそ)」みたいなモチベーションを上げてくれるようでもある。日本の英語教材業界への批判なども含まれていて面白かった。著者曰く「「日本人が勘違いしているけど、実はヤバい英語表現」とかの教材は悪影響。そんな不安を煽るから余計に英語が使えない人材が増えるんだ」と。

堀江貴文 『多動力』

 

多動力 (NewsPicks Book)

多動力 (NewsPicks Book)

 

ホリエモンの本を読むのは初めて。まったく普段はフォローしていないのだが、今年の年始から飛ばしているのを目にして「面白いな」と思ってしまった。逆鱗のスイッチの場所と、そのスイッチがはいったときの熱量のコントラストが良すぎる。

rocketnews24.com

著者による有名な賛否両論を呼び起こしたトピック、「寿司屋の修行はムダ」みたいな話が多数収録されているのだが、結構面白く読んでしまった。要約すると、

  • バカは相手にしなくていい
  • 悩んでるあいだにトライ&エラーでも行動したほうがいい
  • ひとつのことでナンバーワン(100点)をとるんじゃなくて、複数のそこそこ(80点)を集めて、組み合わせると100点を越えられる
  • 人生に目的とか意味とかない、楽しんだもの勝ち

みたいなことになる。これらによって想起させられるのは千葉雅也の議論だったりして(『多動力』というタイトルは、『動きすぎてはいけない』とまったく正反対なんだけども。なんか両者のフォルムというかシルエットも似てる気がしてきた)。

干場義雅 『究極の私服』

 

究極の私服

究極の私服

 

テストステロンのおばけみたいな男性の姿を最近ネット広告でよく見る。調べたら『LEON』とか『OCEANS』とか男性ファッション誌をヒットさせた編集者とのことで。そういう人が書いている「大人のためのカジュアル・ファッション」の本だから、どれだけ噴飯もののことが書いてあるのか楽しみで読んだのだけれども「普通でいいんです、普通で」というキーワードが強調されており、拍子抜けだったのが逆に面白い、というか。「自分の体のサイズを把握すること」とか「ネイビージャケットは万能だから絶対持っておけ」とか本当に普通のことが書いてある。

銀座とか新宿とかの六本木周辺のカフェ、あるいはレストランで高級ブランドの洋服に身を包んだ女性を連れているおじさん(本人が高級ブランドを着ているわけではないのがポイント)が、こういう格好していたら良いんじゃないか、と思うし、「普通と言われても普通がわからないんです」という人にはためになりそう。趣味の悪くない金持ち向けか……*1

休日は90%以上の確率でMUJILABOの白Tシャツに、UNIQLOジーンズで過ごしているわたしには、ほとんど関係ない本である。「素敵なジャケットだな」と思っても、休日ジャケット着て行く場所もわからないから「買っても着ねえな」と思って買えない生活。白Tシャツにジーンズじゃレストランには入れないかもしれないけれど、子供がいるから「レストランにいく」という選択肢がない生活。本書を読むことでいかに自分が無オシャレの真空状態にあるかを認識できはする*2

本書における「普通」に到達できる日がくるのか……? とは思うのだが、ひとつ気になるのは、こういうオシャレの前提が「女性からモテること、よく思われること」になっていること。それは大事なことなのかもしれないけれど、果たしてこういう格好で本当にモテるのか? そして、モテることが「究極の私服」を支えていて良いのか、貧しくないか、とは思う。

*1:「オーダーシャツは敷居が高い、と思うでしょ、でも2万円も出せば、オーダーシャツは作れるんです」(大意)とか書いてあって力強くツッコミたくなるけれども。シャツ、2万は高いよ、って(それに百貨店だってもっと安くオーダーシャツを作れるし)

*2:もちろん、子供がいてもオシャレをしているお父さんはいらっしゃるので「子供がいるとオシャレできない」というのは、言い訳にすぎないのだけれども……。そう、なんか俺の生活圏のなかで「オシャレなお父さん」のイメージは『men's FUDGE』とか好きそうな、タグがついてるニット帽かぶって、パーカーのうえにベージュのトレンチとか羽織ってる……みたいな、そういう感じなんだけど、俺はそういうのじゃないんだよ! っていう

『超筋トレが最強のソリューションである: 筋肉が人生を変える超科学的な理由』

 

超筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超科学的な理由

超筋トレが最強のソリューションである 筋肉が人生を変える超科学的な理由

 

筋トレにまつわる迷信・俗信の打破と、筋トレにまつわる科学的なエヴィデンスの紹介。「筋トレすると身長が伸びなくなる」という話に今のところエヴィデンスがない、とか「食事誘発性熱産生」という概念(栄養素を消化するときに消費される熱量のこと)を知ることができて、個人的には収穫があった。が、本に含まれる「情報」に対して「ノイズ」が多すぎ。有名なTwitterアカウントの人とスポーツ科学の研究者による対話で進んでいくのだが、Twitterの人の部分は盛大に読み飛ばして良いと思う。筋トレ最高、という著者たちの気持ちはわかるが、個人的には「筋トレより大事なことがある」という立場のほうに共感する。

www.asahi.com

とはいえ、筋トレ否定派ではないのだった。昨年の10月から「Freeletics」というアプリを使って筋トレを継続していることに加えて、12月から日常的な飲酒をまったくしなくなったおかげで、34歳を目前にして自分史上最高の美ボディに近づきつつあり、これを継続して、デカい体を作ろうかな、と思っている。

www.freeletics.com

筋力は重要だよな、と思うのは、三浦雄一郎さんの存在も大きい。今年の年始に南米最高峰にチャレンジしていたニュースを見て「この人、ウチのばあちゃんとほとんど歳変わらないんだな……」と驚愕したんだけれども、やっぱりあの活力を支えるところに筋力があるハズだ、俺も知力を保ちながら長生きするために体を鍛えておこう、と決意したのだった。三浦雄一郎さんと自分の祖母を比較すると「やっぱりさ、フィジカルな力を保たないと、インテレクチュアルな力も保てないよね」とか思うもの。

大石哲之 『コンサル一年目が学ぶこと』

 

コンサル一年目が学ぶこと

コンサル一年目が学ぶこと

 

基本的なことしか書いてないが、良い本だと思う。Excelパワポの超初歩的なテクニックの案内もあるし(内容的には全然足りてないけども)。わたしも今はコンサル業界に勤めているが、中途でこの業界に参入しているので、生え抜きのコンサルタントがどういう教育を受けているのかよく知らない。そういう人が部下に仕事を教えるうえでも参考になるのでは、と。大事なところが強調して書かれてるので、そこを拾い読みするだけで充分な本ではある。