sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

ウィリアム・フォークナー 『響きと怒り』

響きと怒り (講談社文芸文庫) 作者:ウィリアム・フォークナー 講談社 Amazon 学生時代に読もうとして挫折したまま15年以上経っていたフォークナーの小説に再チャレンジ。今度は無事最後まで読み通した。 学生時代にはじめて読もうとしたフォークナーがこの作…

佐藤可士和 『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』

佐藤可士和のクリエイティブシンキング (日本経済新聞出版) 作者:佐藤可士和 日経BP Amazon 佐藤可士和については、いろんな会社のロゴを作りまくってる人、そしてオフィスの打ち合わせ用椅子の整列にめっちゃ細かい人、という印象しかもっておらず(あと佐…

丸谷才一 『日本文学史早わかり』

日本文学史早わかり (講談社文芸文庫) 作者:丸谷才一 講談社 Amazon 丸谷才一による日本文学史を扱った批評・エッセイ集。文学、といって小説を思い浮かながらいざ読みはじめたのだがぜんぜん違う内容で(毎度調べてから読めよ、という話であるのだが)面食…

『機能する道具・傑作品: 20世紀の文化を象徴する道具たち』

機能する道具・傑作品―20世紀の文化を象徴する道具たち 作者:土居 輝彦 グリーンアロー出版社 Amazon 雑誌「モノ・マガジン」に連載されていた工業製品に関する蘊蓄記事をまとめたもの。平成元年に出版されたとあるから今からもう30年以上前にでている本なの…

ジークムント・フロイト 『精神分析入門』

精神分析入門(上) (新潮文庫) 作者:フロイト 新潮社 Amazon 精神分析入門 下 (新潮文庫 フ 7-4) 作者:フロイト 新潮社 Amazon 学生時代に買って読みきれずに本棚に収めてあったものを読み直す。さんざっぱらラカンの入門書を読んできたおかげで読み切れる…

鷲田清一 『てつがくを着て、まちを歩こう』

てつがくを着て、まちを歩こう―ファッション考現学 (ちくま学芸文庫) 作者:鷲田 清一 筑摩書房 Amazon 先日読みなおした『モードの迷宮』に引き続き、鷲田清一のファッションに関するエッセイを読んでみる。90年代後半に書かれた短い文章を集めたもの。風俗…

甚野尚志 『中世ヨーロッパの社会観』

中世ヨーロッパの社会観 (講談社学術文庫) 作者:甚野尚志 講談社 Amazon 文庫化されるあたって改題が行われている。改題前は『隠喩のなかの中世: 西洋中世における政治表徴の研究』で、こちらのタイトルのほうが本書の内容をちゃんと伝えているように思う。…

ロラン・バルト 『モードの体系: その言語表現による記号学的分析』

モードの体系――その言語表現による記号学的分析 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon バルトの著作のなかでももっともメジャーな一冊であり、記号学の代表的な本。モード雑誌における衣服の言語表現がどのようになされるのかを体系的に整理したものだが、…

Evan Gilman, Doug Barth 『ゼロトラストネットワーク: 境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計』

ゼロトラストネットワーク ―境界防御の限界を超えるためのセキュアなシステム設計 作者:Evan Gilman,Doug Barth オライリー・ジャパン Amazon セキュリティのことも勉強したいぞ、という気持ちで買ってみた。「ゼロトラスト」の概念的な説明から実装にかかわ…

小山田育 渡邊デルーカ瞳 『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』

ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと 作者:小山田育,渡邊デルーカ瞳 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) Amazon ニューヨークに事務所を構えるアートディレクターが「ブランディング」について語る本…

國分功一郎 『はじめてのスピノザ: 自由へのエチカ』

はじめてのスピノザ 自由へのエチカ (講談社現代新書) 作者:國分功一郎 講談社 Amazon 「100分 de 名著」のテクストを再構成・加筆したもの。スピノザが扱う形而上学的な主題のなかでも意思論については本書の書きぶりがもっともわかりやすいテクストだと思…

鷲田清一 『モードの迷宮』

モードの迷宮 (ちくま学芸文庫) 作者:鷲田 清一 筑摩書房 Amazon 高校時代、おそらくほとんど初めて読んだ思想の本(たしか模擬試験の現代文のテクストにこの本からの文章が選ばれていたのだと思う)。当時通学時間に線を引いたり、付箋を貼ったりしながら熱…

松本卓也 『人はみな妄想する: ジャック・ラカンと鑑別診断の思想』

人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想- 作者:松本卓也 青土社 Amazon 『疾風怒濤精神分析用語辞典』に引き続き、ラカン関連の本を。こちらは松本卓也の第一著作(2015)。ラカンの理論的言説を通時的にたどりながら鑑別診断(本書で取り扱わ…

向田邦子 『阿修羅のごとく』

阿修羅のごとく (文春文庫) 作者:向田 邦子 文藝春秋 Amazon 向田邦子の脚本をノベライズしたもの。谷崎潤一郎の『細雪』をベースに書かれてるんじゃないかと思うのだが、同じぐらい面白い。これを読んで森田芳光が監督した映画が前半部分だけだったことを知…

松原岩五郎 『最暗黒の東京』

最暗黒の東京 (講談社学術文庫) 作者:松原岩五郎 講談社 Amazon 明治時代のジャーナリストが当時の東京の貧民窟を取材した実録ルポ。文章が現代文じゃないのでかなり読みにくい部分もあるのだが、かなり壮絶なことが書かれていて面白い。たとえば都内の木賃…

福尾匠 『日記〈私家版〉』

tfukuo.booth.pm 研究者であり、批評家の福尾匠による2021年1月20日から2022年1月19日までの日記。↑のリンクはPDF版だが、書籍(わたしが持っているものは121番のシリアルナンバーが振られている)は日めくりカレンダーのように製本されていて(実際に日めく…

片岡一竹 『疾風怒濤精神分析用語辞典』

psycha.theshop.jp 昨年読んだ本のなかでも個人的にかなり重要な著作だった『疾風怒濤精神分析入門』のまえに書かれた(まだ21歳とかで書いている!)ラカン入門の同人誌(!!)。『入門』のほうは本書よりもさらに初学者向けを目指して書かれたものである…

2022年に読んだ本を振り返る

坂本龍一 後藤繁雄 『skmt 坂本龍一とは誰か』 - sekibang 3.0 國分功一郎 千葉雅也 『言語が消滅する前に』 - sekibang 3.0 ジル・ドゥルーズ 『ドゥルーズ・コレクション1: 哲学』 - sekibang 3.0 浅田彰 『ヘルメスの音楽』 - sekibang 3.0 坂口恭平 『躁…

坂口恭平 『継続するコツ』

継続するコツ 作者:坂口恭平 祥伝社 Amazon 今年は2月ぐらいに訳もなくグッと落ち込むことがあり、すがるようにして坂口恭平の本を読んでいた時期があった。今年最後に読み終えた本も坂口恭平。継続。英語の勉強、筋トレ、早寝早起き、今年は禁酒も訳あって…

『世界最先端の研究が教える すごい哲学』

世界最先端の研究が教える すごい哲学 総合法令出版 Amazon 若手の哲学研究者が英語圏の哲学研究について紹介しているオムニバス。「こんなことも研究テーマになっているのか」という驚きもあるし、倫理や美学に関わる問題に関しては日常に即したものが取り…

小林泰彦 『ヘビーデューティーの本』

ヘビーデューティーの本 (ヤマケイ文庫) 作者:小林 泰彦 山と渓谷社 Amazon 『アーバン・アウトドア・ライフ』は80年代だが、こちらは70年代。70年代になってアメリカで盛り上がったというアウトドア志向のムーヴメントにおけるファッションをアイビー・ファ…

岩間一弘 『中国料理の世界史: 美食のナショナリズムをこえて』

中国料理の世界史:美食のナショナリズムをこえて 作者:岩間 一弘 慶應義塾大学出版会 Amazon 2022年のサントリー学芸賞受賞作のひとつ。「中国料理の歴史書」のようなタイトルになっているが「中国料理と世界史」のほうが本書の内容を捉えている。もちろん中…

芦澤一洋 『アーバン・アウトドア・ライフ』

アーバン・アウトドア・ライフ (中公文庫) 作者:芦澤 一洋 中央公論新社 Amazon 都会に住みながら大自然に思いを馳せ、そして自然を愛でる、自然のなかで生きていることを感じる。日本に「アウトドア」の概念を持ち込んだ第一人者による名エッセイ。とても気…

山崎武司 『野村監督に教わったこと: 部下は上司で生き変わる』

野村監督に教わったこと 部下は上司で生き変わる (講談社+α文庫) 作者:山崎武司 講談社 Amazon 野球好きのメンバーと中日から楽天に移籍したあとの山崎武司の「復活」について話していて気になった本。単行本としての初出が2008年でもうかなり古い本(だし…

姜尚美 『京都の中華』

京都の中華 (幻冬舎文庫) 作者:姜尚美 幻冬舎 Amazon いつのまにか「町中華」という(苦手な)言葉も聞かなくなった(気がする)が、なんかいま自分のなかで中華料理がアツい感じだ。今年のサントリー学芸賞に『中国料理の世界史:美食のナショナリズムをこえ…

中村右介 『歌舞伎 家と血と藝』

歌舞伎 家と血と藝 (講談社現代新書) 作者:中川 右介 講談社 Amazon 中学の修学旅行で二代目市川猿翁(当時三代目市川猿之助)のスーパー歌舞伎(たしか三国志だったと思う)を見て以来、歌舞伎に縁はないのだが、去年ぐらいに古い邦画を観ていて「歌舞伎と…

杉並ペンギンズ 『泥縄日記 二〇二一年』

日記を売ります。 pic.twitter.com/Eyl6jJepHE — 遠藤進平 (@iepmihs) 2022年12月9日 杉並に住んでいるらしい男女による2021年の日記。文中で明言はないが、ある種のパートナーシップを結んでいるらしいことを察することができるふたりの日常が、上下二段組…

川勝正幸 『丘の上のパンク: 時代をエディットする男、藤原ヒロシ半世紀』

丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記 作者:川勝 正幸 小学館 Amazon 2009年、藤原ヒロシは当時45歳のときに刊行された「半生記」。筆者の前書きでもベンヤミンの『パサージュ論』が引かれているが、さすが藤原ヒロシ、バイオグラフィ…

大野盛雄 『イラン農民25年のドラマ』

イラン農民25年のドラマ (NHKブックス) 作者:大野 盛雄 日本放送出版協会 Amazon 積ん読の古層から発掘された本(買ったのは多摩センターに昔あったブックオフの100円本コーナーだった。なんか創作のネタになるか思って買ったことを覚えている)。著者は人文…

村上春樹を英語で読み直す 『国境の南、太陽の西(South of the Border, West of the Sun)』

South of the Border, West of the Sun 作者:Murakami, Haruki Random House UK Ltd Amazon 村上春樹を英語で読み直したのはこれで5作品目。日本語で初めて読んだのが20歳(ひょっとしたらまだ10代だった可能性もある)ぐらいだと思うので、これまで読み直し…