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sekibang 3.0

読んだ本などの記録

2017年4月に聴いた新譜

4月はなんだか忙しくて。あまり新譜を追っかける余裕がなかった。そのかわりブラジルの7弦ギター奏者、ヤマンドゥ・コスタの存在に出会って彼の音源を熱心に聴いていた。ショーロ系のミュージシャンなのだが、まぁとにかく凄まじいテクニックで。情熱とブルーズのあいだに宿るサウダーヂを堪能しまくっていた。ブラジル音楽の深さを改めて知った次第。バンドリンのアミルトン・ヂ・オランダとの競演盤が素晴らしいです。

Live! by Hamilton de Holanda / Yamandu Costa (2011-07-19)

Live! by Hamilton de Holanda / Yamandu Costa (2011-07-19)

 
Mafua

Mafua

 
Negro Del Blanco

Negro Del Blanco

 
Yamandú

Yamandú

 
Ida E Volta

Ida E Volta

 
Lado B

Lado B

 

空中カメラ / Dr. KIDS LIFE

Dr.KIDS LIFE

Dr.KIDS LIFE

 

そんななか今月の新譜はまず、空中カメラのファーストを。平均年齢がまだ20代前半とかのとても若いバンドなのだが、ちょっと完成されすぎてはいないかい、と驚くべきサウンドで愛聴した。やや穿った表現を使えば『レコードコレクターズ』とか『ミュージックマガジン』を愛読しているオッサン連中に受けそうなアレンジ、と言いますか。そういうのまったく嫌いになれないですし、いや、むしろ、愛してます、っていう。ジェフ・リンや大瀧詠一、あるいは奥田民生やたま、といった先人たちの意匠が色濃く受け継がれている。


空中カメラ - 恋するシャボン玉 【Official Music Video】

Tuxedo / Tuxedo II

Tuxedo II

Tuxedo II

 

こういう音楽を「ブギー」と呼ぶんですってね(松尾潔のラジオ番組で学んだ)。最初聴いたときは、個人的な好みよりもBPMが速いなぁ、もっとネットリやってくれよ、と思ったが、マイケル・ジャクソンの『Thriller』や『Off the Wall』を全編にわたって彷彿とさせ続ける音色とグルーヴがだんだんと癖になってきて、よく朝の電車が会社の最寄駅に着く頃に聴いていた。

Alexandra Savior / Belladonna of Sadness

Belladonna of Sadness

Belladonna of Sadness

 

1995年生まれ、若くて可愛いのだが、腰が据わってる、というか、どういう育ち方するとこんな渋くて深いデビュー・アルバムがでてくるんだよ、という女性SSW。ちょっとBeckが闇落ちした、みたいな雰囲気もあって。アドリアーナ・カルカニョットが「女カエターノ」と呼ばれたのに習うなら「女Beck」と呼びたいかもしれない。ちょっと音作りがオルタナロックに影響を受けたMPBの人たちみたいでもある。

Yo Yo Ma, Chris Thile and Edgar Meyer / Bach Trios

Bach, J.S.: Trios

Bach, J.S.: Trios

 

クリス・シーリ(マンドリン)、エドガー・メイヤー(コントラバス)、そしてヨーヨー・マ(言わずもがなのチェロ)によるバッハの名曲をトリオに編曲して演奏したアルバム。エドガー・メイヤーは知らない人だったが、調べたら超絶技巧のバンジョー奏者、ベラ・フレックとも一緒に演奏しているグレート・アメリカーナとクラシックの演奏を両立するすごい人だった……。そういうわけで全員クロスオーバーな活動をしている演奏家、が、かなりガッツリとバッハに取り組んでいる。のだが、楽器の音色の性質上、ファミリー感というか、親しみやすい空気があって、とても良い。ヨーヨー・マの録音ひさしぶりに聴いたけれども、艶っぽさがやっぱり凄まじく良いな……。うっとりしてしまう。

FKJ / French Kiwi Juice

French Kiwi Juice

French Kiwi Juice

 

仙台のメロウ番長、tmymさんがレコメンドしてくれなかったら出会わなかっただろう。今様のブラック・ミュージックの様相を感じさせつつも、ヌケ感、というか、ねっとりとしない感じは、ヨーロッパっぽいな、と思ったら、ほう、ほら、フランスのビートメイカーだったのね、と。ちょっとこのメロウな感じ、わたしはGallianoとか2 Banks of 4とかに通ずるものがあると思うんだけれど、アシッドジャズ、と呼ばれているものよりもずっと軽みがあって。ブラックな重さから、軽みへ、というモードがきてもいいんじゃないか、と思ったりもする。服屋で、重いビートのダンスミュージックばかり流れているのとか、ちょっと。

Kendrick Lamar / Damn.

Damn

Damn

 

あのまま、ジャズとヒップホップの融合路線でいくのかと思ったが、すげえ渋くないですか。たまに電車のなかでリリックをチェックしながら聴いているんだけれど、カンフー・ケニー(Kung Fu Kenny)というキャラを押し出してきたり、よくわからないところが多いのだった。リアーナとのコラボレーションは、メロウで良いです。あと、話題のこのPVドン・チードルとケンドリック・ラマーがカンフーっぽい動きでバトル!)。

 Ephemerals / Egg Tooth

Egg Tooth

Egg Tooth

 

Apple Musicでのジャンルが「R&B/Soul」となっているが、やや不適切。シカゴ音響派あたりのオルタナ臭い感じがやたらと強い、アシッド・ジャズ & アフロ・ビート、そしてちょっとスピリチュアル・ジャズも入っている、だろうと(すみません、嫌いじゃないぜ、そういうの)。テクニック的な凄さは全然感じないですよ。でも、汚い音で大見得を切るかのようにブロウするサックスではじまる曲とか、たまらないですよ。

PJ Morton / Gumbo

Gumbo

Gumbo

 

Maroon 5のサポートメンバーから正式メンバーになった人、が、こういう曲を書くのか……と衝撃をうけた1枚。全編、スティーヴィー・ワンダーのようなマジックに溢れている……というか、そのまま。

Mary J. Blige / Strength of a Woman

Strength of a Woman

Strength of a Woman

 

そして、4月の最後に届いたこれ。メアリー・J.・ブライジ。アルバムのなかで「Queen」と敬して称されてはいるけれど、もはや、この大御所感は女王を通り越して「キング」っていうか。収録時間は60分近く、わたし個人としては結構長めのアルバムなのだが、あっという間にすぎてしまう密度、圧倒的な声の力。表題曲のサビの歌詞も「アタシがいなくてどうやって暮らすつもりなの? そんなの不可能、不可能」と力強く歌っていらっしゃる。なかなか、あれだよな、逆西野カナ的な世界観。とくに「Set Me Free」という曲。これ、冒頭からクソダメな男への決別を切り出すような話で始まるんだけれど、歌と伴奏のポリリズム感がすごくて、テクニカルにもなにが起こっているか一瞬わからなくなる、そこが良い。それにやはり歌詞が。ひょっとすると、彼女が歌う女の世界のリアルって、アリス・ゴフマンが書いているそれに近いのかな。それはこのぐらいのキャリアがある人、実力がある人じゃないと腹に響いてこないのかもしれない。