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文化的消費活動の日記

『ユリイカ 2017年10月臨時増刊号 総特集◎蓮實重彦』

なんだか蓮實先生の追悼記念文集みたいな特集。本人へのロングインタヴューがやはりもっとも面白く、あとは授業を受けた人がある人だとか、ゼミ生だとか、指導されていた学生による思い出語りが良かった。それから蓮實重彦が学生時代に書いた小説も。わたしが通っていた大学で教鞭をとっておられたこともあるので「昔は蓮實重彦が映画の講義をやってて、そこから黒沢清塩田明彦って監督が出てきたんだよ」なんていう話をしている友達がいたことを思い出しもする。

改めて「この人って、マジカルな語り部」なんだなぁ、と思った。みんな、『映画千夜一夜』みたいな「くだけた蓮實重彦」を目撃していないの。みんな「先生」という扱い。尊敬の念が一定の距離を作っている。そして、書くものもフレンドリーじゃないじゃないですか(『伯爵夫人』は最高ですけれども)。それなのに「蓮實重彦のことはチェックしなきゃいけない」だとか「理解しなきゃいけない」だとか、ある種の強制力・誘引力が働く存在として、ある時期から君臨し続けている。本人は引っ張ってないのに、相手の方から引っ張られてくる、この不思議な重力圏がいまやもう珍しい気がして。わからないものに惹きつけられる感じ、これをもっと大事にするべきなのかも、とも思ったり。