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文化的消費活動の日記

川上未映子 『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

 

川上未映子が歌手時代に自身のサイト上に綴っていた文章をまとめたもの。2003年からの3年分。ちょうどわたしが大学にはいって上板橋のアパートでダラダラした学生生活を送っていたころだ。内容がどうこうの詳しいところじゃなくて、こういうちょっとエキセントリックな勢いのある文章って、なんだか懐かしいね、っていうのが一番強い印象。

「そうそう、こういう文章を書き連ねる女性(女の子、女子)をチヤホヤするカルチャーがあの頃のインターネットの一部にはあったよね」と思い出したりなんかして。そういうの、もうないよね。TwitterInstagramに吸収されちゃったでしょう、きっと。自分もそういえば、わざわざ「ホームページ」をみてだれかの文章を読む、という行為をしていないし。

内容は、だから、正直言ってあんまり面白いとは思わず。いまの川上未映子の文章のほうが断然に良い。

今と過去のあいだでは文筆家としてのパーマネントな感性は変わってない気がするんだけれども、今は洗練と社会化がされていて、読者に対しても開かれているんだと思う。このデビュー随筆集だと「わかる人にだけわかればいい(とにかくわたしは書きたいから書いている)」というトゲトゲしい勢いがある気がする。それがどういうプロセスで変化していったのかが気になっているので、たぶん、しばらく継続して川上未映子を読んでいくと思う。