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文化的消費活動の日記

Henry Chadwick 『Augustine』

Augustine: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

Augustine: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)

 

先月読んだ『勉強の哲学』をきっかけに、かねてから勉強したいと思っていたアウグスティヌスの入門書を読む。思いたった瞬間にはまだ日本語でちょうどいいサイズの入門書が出ておらず(いまは岩波から新書がでている)、困ったときのオクスフォード大学出版。著者のヘンリー・チャドウィックはイギリスの神学界の大御所みたい。わずか130ページあまりでアウグスティヌスの思想をバランスよく伝えている。

先日、アウグスティヌスに関する論考を発表したばかりのアダム高橋さんともやり取りをしていたのだが、アウグスティヌスに関しては、とかく「意思の問題に西洋哲学史上もっとも早く取り組んだ哲学者」だとか「心の哲学」とかいう語られ方がされがちで、ちょっと問題があるんじゃないのか、という状況であるそうな。

一読した限りでは、この本にはそういう偏りがない。もちろん、意思の問題にも触れられるのだが、18世紀にまでおよぶ後世への影響についても触れているし、アウグスティヌスの思想的な背景にも触れられている。広く浅く、だからこそ、フラットに伝わってくるものがあるし、ここから広げるための選択肢も豊か。個人的には彼が生まれた4世紀なかばの北アフリカの文化的状況の記述が面白かった。

同じシリーズでは、以前に読んだこちらの本もたいへん良い本だった。基本的に平易な英語で書かれているし、日本語で手頃なものがないときはこれからもお世話になりそう。