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文化的消費活動の日記

村上春樹を英語で読み直す 『ノルウェイの森(Norwegian Wood)』

 

Norwegian Wood (Vintage International)

Norwegian Wood (Vintage International)

 

正月休みのあいだにふと『ノルウェイの森』を読み返したくなって、戯れにまた英語で読み直してみた。村上春樹を英語で読み直すのは、これが3作品目。英語力が向上しているのかなんなのかこれまでで一番スラスラ読めた。が、それは原著を2回ぐらい通して読んでいるからだと思う。かなり細部まで記憶してて驚いた。

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もうひとつ驚いたのが、自分がこの小説の映画化について結構長く感想を書いていたことで。ひと通り自分の文章を読んで見たんだけれども、絶望的なほどに映画のことを思い出せなかったし、なにを伝えようとしていたのか、俺は、と思った。映画については、水原希子の緑しか記憶にない。今回の再読では、緑が水原希子で完全に再生されるほどにハマっていた。

作者が「リアリズムで書いてみた小説」と言っていたのが、今回の再読で、たしかにそうだよな、と腹に落ちた。主人公のワタナベくんは、多少不思議な体験はするものの(夜中に夢遊病状態の直子が裸を見せにきたり)、謎のモンスターに追われたり、深い井戸の底に降りたりしない。ファンタジー要素がない。

訳者のジェイ・ルービンも「日本の伝統的な私小説のように書かれている」と解説しているのだが、ワタナベくんが突撃隊にもらった蛍を話すシーンの、リリカルな感じとかめちゃくちゃ「日本の純文学」っぽいよな、と思った。代表作のひとつ、でありながら、極めて異質な生活をもち、かつ、骨格はほかの村上春樹作品と同じ、という変な作品だ。

初めて読んだのは、18歳か19歳ぐらいだったと思う。直子の自殺が読者に告げられる部分を、夜中、上板橋の日当たりが悪いアパートで読んでいて「ゲッ! 直子死ぬの!?」と驚愕した体験は、2度目の読書、今回の3度目の読書でもフラッシュバックしたのだが、ナウ、俺、もうすぐ33歳という時期で「これまでと読み方が変わった部分があるか?」と問われれば、断然、レイコさんの立ち位置で。

キレイなんだけれど顔にシワが多い、アラフォーの、痩せた女性、レイコさん。彼女とワタナベくん(20歳)が最後、体を重ねるじゃないですか。これまでそのシーンがどうしてもグロテスク、っていうか、気持ち悪ぃな、オバサンを抱くのって、しんどくないの?、って思えて仕方なかったんだけど、いま、この歳になって読み直すと、いや、全然レイコさん、アリだな、っていう感じになっている。

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#nowreading 村上春樹 『ノルウェイの森』 新年の戯れに英訳で読みなおしはじめる。知っている物語が別な言語で理解される面白さというのがある。「突撃隊」は Storm Trooper です。

次は『海辺のカフカ』とか『ねじまき鳥クロニクル』とか読み直してみようかな。