sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

2018年2月に聴いた新譜

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

BLOOD [LP] [12 inch Analog]

 

今月はなんと言ってもRhyeだったな……。もう、ずーっと聴いてた。心地よく、ずっと、繰り返し繰り返し聴けるアルバム。ここまでハマったのはグラミーで賞をとりまくったブルーノ・マーズのアルバム以来かも。前作をスルーしていたことを恥じてしまうが、いま本アルバムと前作を比べて聴いてみると、あきらかに音楽が深化している。ダンスミュージックでありながら、ベッドタイムミュージックでもある、というR&Bの本質を結晶化したよう。2018年暫定ベスト。 

Um Corpo no Mundo

Um Corpo no Mundo

 

リリースは去年だが半年以内なので新譜として扱おう。ブラジルの女性歌手、ルエヂ・ルーナ。これがデビュー盤とのこと。これも良かったなー。Rhyeかこれか、ってぐらい繰り返し聴いたかも。ものすごくアフリカ色が強く、冒頭のギターから西アフリカあたりの伝統音楽の豊かさを感じさせるのだが、そこに彼女のヴォーカルが乗っかると非常に新鮮なブラジル音楽として響く、という。(もはや俺のなかでは完全に食傷気味になっている)いわゆる「ミナス新世代」が霞んでしまうぐらい。 

Terapia

Terapia

 

ラテンアメリカの音楽だとキューバのCimafunkのアルバムも「おー、良いじゃないの」と思った。世界的にも注目されていないので、俺が責任をもって注目しておく。ジャケット写真を見ると「お、キューバのWeekendか?」とか思ってしまうのだが、あんなナヨっとしてなくて、結構暑苦しい歌唱である。ちょっとブラジルのカルリーニョス・ブラウン的な暑苦しさだな、と。ただ、アルバム中に何曲か、良い感じにメロウな風が抜けるときがあって、それがグッときたね。とくにこの「Parar el Tiempo」って曲。


CIMAFUNK - Parar el tiempo [Acústico]

シェニア XENIA

シェニア XENIA

 

話をブラジルに戻すとバイーア出身のシェニア・フランサのデビュー盤も良いね〜、と思った。プロデュースにロウレンソ・ヘベッチスも関連しているそうで、昨年のアート・リンゼイのアルバムと似た感じはある。モダンR&Bとブラジル音楽の融合、という感じではかなり露骨。新鮮さではルエヂ・ルーナに軍配があがる。

Chris Dave & the Drumhedz

Chris Dave & the Drumhedz

 

ヒップホップとジャズをつなぐドラマー、クリス・デイヴのアルバムも結構良かったな。はじめピンとこなかったのだが、繰り返し聴くにつれ、おお、これはすごいゾ、となった。ドラマーのアルバムなので、当然ずっとドラムの音が入っていて、というか、ビートが感じられる内容で、“いまの気分”的には「ビート感希薄な曲が何曲か入ってて欲しいな」って思ってしまうのだけれども。ビラルの参加曲がとにかく色っぽくて良かったですね。

Sleepless Dreamer

Sleepless Dreamer

 

盟友、tdさんの今年の暫定ベストとのこと。ジャンルがApple Musicでは「Indie Rock」と表示されているのだが、あんまりインディー感がない、というか、音は「どメジャー」って感じである。ポップスの王道をいく、というか、なんか歌謡AORみたいな曲もあったりして「なんだこれは、どういうコンテクストからこういうアルバムがでてくるのよ」とか思った。とりあえず、表題曲の「Sleepless Dreamer」は抗えない大名曲。こういうキラキラしたギターのバッキング、ホント、好きじゃないわけがない。


Pearl Charles - Sleepless Dreamer (Single)

For Gyumri

For Gyumri

 

アルメニアのジャズ・ピアニスト、ティグラン・ハマシアンの音楽には、2月末で辞めた会社のなかにあるカフェで休憩してたときに初めてめぐり逢ったのだった。キース・ジャレット的な(ペラい)深遠さ(要するにECMっぽい感じ)がある一方で、おそらくはその出自からきているトラッド感と、ときどき聴くことのできるエゲツないポリリズムに燃える。ちょっと規範からハズれて聴こえるところが魅力的だ。

Pulse/Quartet

Pulse/Quartet

 

さて、ここからクラシックの話をしよう。スティーヴ・ライヒの新譜。《Pulse》は2015年、《Quartet》は2013年に書かれた曲。個人的な意見だけれども2010年の『Double Sextet / 2x5』というアルバム以来の快作だったのではないか。後者は近年のスティーヴ・ライヒの「手グセ感」を感じさせる「まぁ、悪くないよね」という曲なのだが(ちょっと吉松隆みたいな綺麗さがあるんだけれども)、《Pulse》は「ライヒ、こんな曲も書くのか」という新しさを感じさせる(初演当時は80歳だったらしいのだが)。ベースとウワモノではっきりとしたレイヤーの分離があって気持ち良いアンビエンス。「これ、何クトリック・カウンターポイント?」みたいな曲じゃない曲も投げてるところがエラい。

月の光~ドビュッシー:ピアノ名曲集

月の光~ドビュッシー:ピアノ名曲集

 

有名なピアニストが没後100年となるドビュッシーのアルバムを出している。まずはバレンボイム。御歳75歳(ドビュッシーのピアノ・アルバムはこれが初めてらしい)。もう指揮者としてのほうが有名で、てっきりピアニストとしては引退してるのかと思っていたぐらいなのだが、いやいや、これがなかなか素敵なドビュッシーで。メロウです。日本盤の表題曲にも使われている《月の光》なんか、情感たっぷりなルバートを使っているのだが、巨匠然とした重々しさがない。いや、タッチのみずみずしさなんか若々しくて、清潔感があって素晴らしいじゃないですか!

ドビュッシー:前奏曲集第2巻、白と黒で

ドビュッシー:前奏曲集第2巻、白と黒で

 

そしてポリーニドビュッシーを。まぁ、難しいのに聴き映えがしないアルバムを出したなぁ……としか思わないのだが、76歳でこのテクニックはすごいよなぁ……。一番ビックリするのはジャケット写真におけるポリーニの老け具合だけれども。えー! こんなにおじいちゃん感あったっけ?! と思った。 

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」&第29番「ハンマークラヴィーア」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」&第29番「ハンマークラヴィーア」

 

ビックリといえば、マレイ・ペライアベートーヴェン。「銭湯で録音したんですか?」ってツッコミをいれたくなるリヴァーブがかかっていて《ハンマークラヴィーア》の冒頭で吹いてしまった。来日の予定が体調不良でキャンセルになっているらしく、心配ではあるがこの人ぐらい「名前は知ってるけど、なにが得意なピアニストなんですか?」って思う演奏家はいないと思う。名前と演奏イメージが結びつかない、というか……。 

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

 

2017年からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任していたアンドリス・ネルソンス。いま注目の指揮者らしい。そのブルックナーの録音。いやー、なかなか良いんじゃないですか、このブルックナーは。4月には7番の録音もでるみたいなので、そっちに期待。4番は曲があんまり好きじゃないので何度も繰り返しは聴けなかった。 

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

Bach, J.S.: Sonatas for Violin

 

イザベル・ファウストの演奏はこれまでノータッチだったのだが、今回のバッハの録音はハープシコードクリスティアン・ベズイデンホウトだったので。バッハのヴァイオリンのための曲って無伴奏ばかり聴いていて鍵盤の伴奏ある曲はあまり馴染みがなかったのだけれど、良いですね……。とくに3番の3楽章のアダージョ。これはメロウ。イザベル・ファウストという演奏家もこれをきっかけに過去の録音を聴いてみたら、聴いたことないカデンツァでベートーヴェンのコンチェルトを録音していたり面白かった。

カリプソ娘に花束を (通常盤)

カリプソ娘に花束を (通常盤)

 

2月はNegiccoのひさしぶりのシングルも出てて、もちろんこれも7インチをゲットした。ウェディングソング。完全に娘を嫁に送り出すお父さんの気持ちで聴いてしまって泣けたね……。


Negicco「カリプソ娘に花束を」(作詞・作曲 connie 編曲 YOUR SONG IS GOOD)