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文化的消費活動の日記

レイモンド・チャンドラー 『大いなる眠り』

 

大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

村上春樹訳。役者の解説でも触れられているけれど、作家の世界観を提示するために「ミステリー」の構造を利用している、という指摘は言い得て妙であり、ここには探偵、美女、暴力、悪人、酒、煙草、ピンチ(と脱出)、そして謎解きがある。「007」的な「お約束」の物語構造、だから(なのに)読ませる。ここがすごい。で、この小説内でのフィリップ・マーロウ、33歳であって、わたしと同い年なんだよな。マーロウのこの成熟、作品が発表された1939年では、リアリティがあるものだったのか、そのへんが気になってしまう。1939年の33歳がこんなにカッコ良かったら、世界はどんどん幼稚化している、という仮説を立てられそうである。

マーロウと執事の対話がいつも小気味よく、これは村上春樹そのものだな、と思った。村上春樹が訳してるから当たり前だけれど。この作品のなかから、村上春樹がチャンドラーから学んだものをいくつも拾い集めることができるだろう。