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文化的消費活動の日記

佐久間裕美子 『ヒップな生活革命』

 

ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)

ヒップな生活革命 (ideaink 〈アイデアインク〉)

 

著者はニューヨーク在住のライター。DIYや住んでるところの近くで生産された食料、はたまたサードウェーブコーヒー。いまだグローバル経済の中心であるアメリカ合衆国内部で起きた「アンチグローバリズム」的、もっと適切な言葉を選ぶなら「グローカル」的な消費行動の変化について紹介した本。大量消費・大量生産がもたらす歪みから離れて、公益やサステナブルなことも気を使ってますよ、的な、マーケティング3.0的な。

2014年の本だから、いま現在こういうカルチャーもだいぶ日本に入ってきている気がするし、アメリカ自体が大きく変化してる(なにせ、オバマからトランプに大統領が変わっている)から情報の鮮度は確実に落ちてしまっている、けれども、そういう思想の持ち主が、どういう気持ち・心意気で事業を起こしたのか、あるいは、そのムーヴメントに乗っかる消費者の雰囲気を知ることができる本だと思う。で、そのへんの気持ちとか雰囲気は、今も変わってないだろな、と。

自分自身について考えてみる。以前に育児関係のエントリーで似たようなことを書いたかもしれないが、わたし自身、いま地元志向を大事にしたい、と考えるようになってきている。メガネだったら、JINSだとかZoffじゃなくて、地元のメガネ屋で買うとか、ネットショッピングはなるべくしないぞ、みたいな。

地元に金落とさないと、カルチャー不毛地帯になっちゃう、という危惧感からそうしているんだけれども*1、大量生産から離れようとする消費行動も少し余裕がなければ選択不可能なのであって「見えにくい格差のメルクマール」とも言えるよな、と。メルクマールなのに見えにくい、って矛盾してるけど。

つまり、ロレックスとかオメガとか高級時計身につけて、レクサスとかBMWとかメルセデス・ベンツとか乗って、タワマンとか住んでたら「ああ、この人、金持ってんだな」とかわかりやすいけど「ユニクロジーパンじゃなくて国産でオーガニック・コットンのジーパン履いてる」とか、そういうのってパッと見じゃわかんない。同じ白Tシャツでも、わたしは無印で2枚で1990円のTシャツしか持ってないけど、世の中には1万円する白Tシャツとか売ってるじゃん。

でも、それって絶対に買えないものではない。ちょっと頑張ったり、勇気を出したりすると買えたりもする。でも、そこに到達できない人も絶対いる。「見えにくい格差のメルクマール」のカルチャーが広がっていくことによって、そこに到達できない人が見えにくくなっていくことって結構怖いよね、とも思う。

ファーマーズ・マーケットとかもさ、高度なロジスティクスがあるからこそ実現できるものであって、そんなのやっぱり都会のカルチャーだし、ど田舎じゃありえないでしょ、って。本書で紹介されてるカルチャーもある程度の規模の都市でしか成立しないわけ。こういうカルチャーにばっかり触れてると、地方を忘れてしまいそうになる気がして。

ところでこの朝日出版社の「アイデアインク」というシリーズ、少し気になるものが他にもあるのだけれど、シリーズは本書で終わってしまった模様。あまり売れなかったのかな?

*1:とはいえ、食品とか地元スーパーじゃなく少し離れたビッグで大安売り系の神スーパーこと「OKストア」に行ってしまうし、紙おむつは毎度Amazonで買ってしまっているのだが。そもそも地元スーパーで地元の野菜なんか売ってないのだから、地元に金を落とそうにもどうしようもない、という問題はある