『奇想の系譜』で知られる美術史家がひとりで書きあげた日本美術史の教科書。縄文から現代までの日本の視覚芸術(映画を除く)・工芸について抱負なヴィジュアルとともに通読可能な大変素晴らしい一冊であった。
仏像のデザインであったり、絵の画風であったり、日本の美術がどれだけ大陸からの影響を受けて形成されていったのか改めて理解できたのも収穫だったのだが*1、最も胸が熱くなったポイントは、狩野派繁栄の基礎を築いた狩野元信に関する記述だった*2。
狩野元信は室町時代の足利義政に抱えられていた絵師で、義政のコレクションを見て内外のさまざまな絵画技法を学んだらしい。ここでの義政の役割がまるでルネサンス期のパトロンそのものであるのも面白いのだが、当時の画壇(という言い方は相応しくないのだろうけれど)において、元信が貴族好みだったやまと絵の潮流と、武士好みだった漢画の潮流を融合させる新たな様式を作り上げた、というところ、ココが激アツである。なんというか、北斗神拳と南斗聖拳が融合した、みたいな面白いトピックだとおもって。
数年前にアダム・タカハシさんにオススメされていた本だった*3のだが、*4これはもっと早く読んでおくべきだったかも。(最近は生活リズムが変わって全然見れていないのだが)『なんでも鑑定団』の再放送を毎週日曜日に観ています、みたいな人間にはハマりまくる名著。この本を教科書にしてあちこちの美術館に足を運んでみたいと思っている。