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文化的消費活動の日記

北村紗衣 『お砂糖とスパイスと爆発的な何か: 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』

 

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

 

先日ご恵投いただいた本。「フェミニスト批評入門」とタイトルにあるが、思想的/政治的なところを抜きにして優れた文学案内*1だと思う。ポップ、でありながら、文学や批評という知的な営みのなかでどういうことが実践されているのかをキチンと説明してくれている。「フェミニスト批評」という文言で「読まない」という判断をしている人がいるとしたらもったいない。わたしみたいに「文学部/文学研究ってなにやっているか実はよく知らない」、「批評もそんなに読んでない」というタイプの人間にはありがたい教育的な内容とも思う。

著者の専門とする英文学が中心に取り上げられている。このラインナップが見事にわたしの読書遍歴とかぶっておらず、いかに自分が英文学をスルーしてきたかに改めて気付かされる*2のだが、『嵐が丘』やシェイクスピアといったクラシックに対しても、前述の通り、ポップな面白さを引き出しているところに、本書のガイドブックとしての価値を感じる。エラいもの、真面目に取り組まなくてはいけないもの、構えなくてはいけないもの、と思われがちな古典を、時には下世話とも言える視点で、ポップの舞台に引きずり下ろしてくれるところが良い。

なお、本書、わたしの名前が印字された本のなかではたぶん一番売れてるんじゃないかろうか。

 

*1:取り上げられているのは映画や舞台も含む

*2:それは改めて北村さんとわたしの趣味の違いを気づかせるものだったかも知れない。北村さんはThe Smithsモリッシーが嫌いだとどこかで書いてたと思うが、わたしは大好きである