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文化的消費活動の日記

ウィリアム・ギブスン 『クローム襲撃』

 

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

 

こないだTwitterで『JM』(キアヌ・リーヴス主演の映画。この映画については、この名文をぜひとも参照されたい)の話をしていて「原作読んでなかったな」と思い。1986年に発表された短編集で、サイバーパンク的な作品が多く収録されている。2019年に34歳にして初めてギブスンを読む、みたいなところからして色々間違ってしまっているのだが、隔世の感があるなぁ……と微妙な気持ちになるところが多数。

日本のヤクザや地名が色々とでてきて、Japan as Number One を感じさせるし、なんか情報技術的なものの描き方にも噴飯ものの記述が多い。たとえば、表題作の「クローム襲撃」に関しても、ハッキング(とその対策)にハードウェアが登場してて、うーん……となる。今なら絶対ありえないよな、と。コンピューターの世界をヴァーチャルな立体的空間のように表現したその想像力はすごいし、そういう世界観って(SFをほとんど経由してこなかった)自分にも自然と刷り込まれているところはある。とはいえ「ヘッドセットを被ってネットワークに侵入して、システムを破壊するプログラムを起動させる」みたいな記述に、ナイナイ(笑)、って微笑をしてしまう。

かつての「ハッカー文化」みたいなもの(アングラ、サブカル、反社会的。コーラ飲んで、ピザ食って、ハッパ吸って、コード書く、みたいな)とギブスンのサイバーな雰囲気って地続きだったのに、いま現実のほうが漂白されちゃってる感じも大きくて。IT、いま全然自由で反体制、みたいな感じもないじゃん。どっちかっというと(いわゆる)意識高い系、あるいは体育会系ともいえる。サイバーエージェントみたいな企業が「サイバー」を冠している時点で、現実にフィクションが負けちゃってる感じがある。