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文化的消費活動の日記

『WIRED』Vol. 32 「DIGITAL WELL-BEING」

 

以前からお慕いしている方のブログに「ウェルビーイング」という言葉がでてきたのでフォローしてみる気分に。手はじめに『WIRED』のバックナンバーから。特集序盤から『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』のベストセラーで知られるユヴァル・ノア・ハラリの対談などが読みごたえある。

そこでは18世紀の哲学を基盤にして構築された人間観や社会制度は現代のテクノロジーに対して時代遅れになっており、アップデートする必要があるのだ……という大きな提言がなされている。提言の大きさに対して「テック企業は倫理的であるべきだ」みたいな「廊下は走っちゃいけません」レベルの話しかできていない気もして、それは18世紀的な倫理観とは言えないのか、とか思うのだが、脳科学などの成果によって身体や脳や思考といったレヴェルで、人のなかで起きていることを把握し、何をするか予測できるようになり、人間が「ハック可能な動物」となっている、という表現は面白い、と思った。

ハックされる領域は、中動態的なエリアだと言えるだろう。アルゴリズムによってレコメンドされるものを素直に受け取ってしまう行動性は、自分の意識の全面/前面にでている意志の領域ではない部分まで読み取られ、ハックされている、ということだ。精神分析ではないやり方で無意識に対して/現実界に対して処理がおこなわれていく感じとも言いかえられるかもしれない。

ハックされることが即ち悪ではない、とはいえ、個人的には「めちゃくちゃにハックされすぎてしまうことが、どうして悪だと言えるのか?」と疑問に思わなくもない。ハックされすぎてしまった人間が逸脱する規範は、18世紀的な人間観に過ぎないのでは、ということで。もちろん、わたしとしては「ハックに抗っていく道」をいきたいとは思うのであるが……。