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文化的消費活動の日記

マイケル・ジャクソン 『スコッチウィスキー、その偉大なる風景』

スコッチウィスキー、その偉大なる風景

スコッチウィスキー、その偉大なる風景

 

ビールとウイスキーに関する権威として知られた英国のライター、マイケル・ジャクソンスコットランドを旅し、各地の蒸留所を訪れ、そこで見た風景、そこで出会った人について綴った紀行文、そこに彼が見た風景の写真が添えられている。本当に素晴らしい本で感動してしまった。ウイスキーに少しでも興味がある人にはぜひ手にとっていただきたい一冊。飲んだことのある(あるいはこれから飲むかもしれない)スコッチ・ウイスキーが、どんなところで作られていたのかをとてもよく伝えてくれる。

とくに写真が素晴らしい。どの風景も、どこか荒涼としている。あんまり賑やかな様子はない。山の中にぽつんと蒸留所の建物があるだけだったり、林の中を流れる川が写っているだけだったりする。しかし、ああ、あのウイスキーはこの川の水から作られているのか、とか、あの香りはこの海岸からくる風が影響しているのか、とか、想像力を刺激するような絵になっている。村上春樹の『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』という本があるけれど、あの本の視点をもっともっとウイスキー本体から遠くに置いて、スコットランドの自然から描き出そうとしているよう。水から、風から、土から、歴史から、人から。

読書は旅のようなもの、だと思うのだが、この本はウイスキーをめぐる旅を体験させてくれるような本だった。これからスコッチのシングル・モルトを飲むたびに、この本に登場するスコットランドの風景を思い出したい。酒を飲むたびに、旅に出られる。

www.dubliners.jp

余談だが、都内にお住いの方は、渋谷にこられる機会があったら、アイリッシュパブ「ダブリナーズ」に行かれると良い。カウンターに本書が置いてあるので酒を飲みながら試し読みができる(わたしはそこでこの本に出会って、その場でAmazonで注文した)。