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文化的消費活動の日記

ディオゲネス・ラエルティオス 『ギリシア哲学者列伝』

ギリシア哲学者列伝 上 (岩波文庫 青 663-1)

ギリシア哲学者列伝 上 (岩波文庫 青 663-1)

 
ギリシア哲学者列伝〈中〉 (岩波文庫)

ギリシア哲学者列伝〈中〉 (岩波文庫)

 
ギリシア哲学者列伝〈下〉 (岩波文庫)

ギリシア哲学者列伝〈下〉 (岩波文庫)

 

ギリシアの哲学者の生涯や学説をあれこれ紹介した本。退屈な教科書めいた記述がダラダラと続くのではなく、かなり雑多な内容が含まれているのが魅力。たとえばエピメニデスを紹介した章では「羊を探しに野原にでたら、途中で57年間も眠り込んでしまい、起きたら自分の土地が一切合切なくなってて、老人になった弟だけが自分を覚えていた」みたいな浦島太郎めいたファンタジーが披露される。

その雑多具合の最もたるものが犬儒学派ディオゲネスの章だろう。「タダ酒ほどうまい酒はない」など大変に共感できる言葉もあれば、公衆の面前でオナニーにふけりながら「お腹もこんな風にこすりさえすれば満たされるといいのに」と言っていた、など奇人変人エピソードが満載。

これだけいろんな人を紹介し、長いこと読み継がれてきたのに著者のディオゲネス・ラエルティオスについては、生没年はおろか名前さえもはっきりしていない(どうやら2世紀後半に活躍した、ということになっているらしい)というのが、また味わい深いな、と。