青木淳、阿部仁史、乾久美子、佐藤光彦、塚本由晴、西沢立衛、藤本壮介、藤森照信、古谷誠章、山本理顕。著名な建築家の卒業設計、そしてそれが現在のスタイルにつながっているのか、あるいはつながっていないのかをめぐる対談集。知らない建築家ばっかりだったのだが(名前を調べると、ああ、あれか、とピンとくるぐらいの人たちではある)、大変面白く読んだ。
対談の最後はつねに「最近の学生の卒業設計ってどうですか」的な質問で締められる。で、多くの建築家が「最近の学生ってこじんまりとまとまっているよね。スマートなんだけど、野心が感じられない」的に答えているところが、まぁ、なんというか……「わかるな」と。最近の若いコ、マイルドだよね、みたいなところは30歳過ぎたわたしも感じるところであって、どの業界も一緒なんだな、とか。
ただ、これ刊行年を考えると、この本のなかで厳しいことを言われている「若者の世代」って完全にわたしの世代のことなのだった。その証左として、巻末に収録された五十嵐太郎と本江正茂との対談に、オブザーヴァーとして参加している学生(当時)が、高校のオーケストラ部で一緒だった先輩、というのがある(知らずにこの本を手にしてたので名前を見て驚いた)。自分たちが言われてたことを、いまの若者に当てはめて「わかるな」とか思ってるの、って完全おっさんじゃねーか、などと反省してしまった。
卒計の内容も発言も藤森照信の章が一番良かった。「処女作にすべてが出ないような人は、ダメなんじゃない?」とか若者をぐったりさせそうな放言が満載。しかし、これも藤森が丹下健三だとか前川國男だとか槇文彦の卒計を調査して、卒計からのその後の作品とのつながりとの関連を見出しているところからなされた発言なのだった。だから、一理も二理もある言葉だな、と。