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文化的消費活動の日記

谷川健一 『谷川健一著作集 第7巻 女性史篇: 女の風土記 無告の民』

民俗学者谷川健一が女性史について言及した新聞連載や雑誌への寄稿を集めた本。『女の風土記』と『無告の民』という著作のワンセット。昔の人だし、書かれた時代(70年代前半)も古いし、今日の水準でこの本が「役に立つ女性史の本」か? と問われると相当な疑問が残る。というか、問題の方が多かろう。

たとえば、人身売買されて海外に娼婦として売られた、いわゆる「からゆきさん」が戦時中、国のために多額の寄付をおこなっていた、という点に対して「体を売って作った金を国のために使って、彼女たちはえらい!(近代日本のナショナリズムを彼女たちの汚い金が支えていた!)」みたいな形で、ひどい搾取を美化してストーリーを作っている感じ。そうした事実を掘り返して、伝えていることには価値を感じるし、実際面白いエピソードには枚挙にいとまがない。

けれど、その伝え方は「自分は男」(だから女の苦労はわかんない)みたいな突き放し方だと思うし、そもそも、男性優位の立場にどっしり腰を下ろして、女性を評価するような書きぶりである。ここまで谷川健一の著作をいろいろ読んできているが、この本が一番搾取を美化するやり方(要するに昔の日本にはこんなひどいことがあったんだぜ、それを耐え忍んでいた人たちはえらいでしょう! という話の作り方)がエグい。ある意味、谷川のストーリー作りの基本がこの本に一番現れている、とも言えるかも。

ただ、からゆきさんが地球上のどこまで到達していたのか、とか、戦時中の日本のスパイが馬賊に捕まった際、大陸に入り込んでいた日本人娼婦たちに何度も命を助けられていた、とか、紹介されている話はとても面白い。少し継続して調査してみたいポイントもいくつか見つかった。

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