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文化的消費活動の日記

ブレイディみかこ 『いまモリッシーを聴くということ』

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

いまモリッシーを聴くということ (ele-king books)

 

モリッシーの全キャリアを振り返りながら、各アルバムが発売されたときの英国のカルチャーや雰囲気、そしてモリッシーの私生活や状態関係性を読み解く、英国在住のライターによる一冊。控えめに言っても大名著。The Smiths以降のモリッシーについてはあまりフォローしておらず、彼の自伝も途中で読むのにうんざりして投げた自分のようなファンにはうってつけの本だと思った。

「モテと非モテリア充とオタク、人間と動物、クールとアンクール、ノーマルとアブノーマル、金持ちと貧乏人。これらの対立軸で、モリッシーは常に後者の側に立っていた」。一方で、モリッシーには、こうした対立軸の両極端に属するキャラクターが同居している。

内向的でありながら、自尊心も強く、基本は純粋なのだけれど、かなりの戦略家でもある。端から見たら矛盾だらけでやっかいな人、めんどくさい人間。個人的には絶対一緒に仕事したくないタイプの人であるのだが、モリッシーのこうした複雑な人間性を、胸いっぱいの愛で魅力的に描き出している。自伝の翻訳が許可されていない現時点で、モリッシーThe Smithsについて書かれた最良の本のひとつなのではないか。