- 作者: 檀一雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/09/25
- メディア: 文庫
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メロウ番長、tmymさんが 紹介していた岩手県盛岡市の古本屋さんBOOKNERDさんのインスタで紹介されていた。「勉強家」であり「料理をしないシェフ(=料理本は好んで読むが、料理はあまりしない)」を標榜するわたしであるから、いずれは読むであろう「名著」であったのだが、きっかけを与えてもらえた感じ。とても良い本。こういうきっかけがインターネット上で生まれるのはとても嬉しいこと。
子供の頃に母が出奔、それから一家の料理番を担ってきた、という小説家が書いた料理に関する文章。産経新聞上でこの連載がはじまったのが1969年だという。世界中のあちこちで食べてきた料理を紹介しており、言うなれば「食のコスモポリタン」的なアティテュードが本書にはある。情報の早さとホンモノ度は、伊丹十三のそれに勝るとも劣らないレヴェルだと言えよう。いくつかのページに付箋をはって、食材の旬が来たら作ってみようかな、と思いながら読んだ。
珍しい食材、あまり食べられていない食材、あるいは逆にありふれた食材をどうにかする。そのとき、メインとなる食材は(本書で多用される言葉をもちいるならば)「きばって」買い込む。面白いのは、それを調理するときの調味料やダシをとるときに「○○がなかったら××でも△△でもかまわない」と書いてしまうところだ。
人によってこれは「いい加減」、あるいは「豪快」とも捉えられようが、料理の基本が備わっている人にしか書けないことがらだと思う。××でも△△でもかまわないけれど、なんでもいいわけではない。こういうのは、美味しく仕上がるための勘所がわかっている人にしかわからない。そういう意味で、檀一雄の料理って、料理人的ではなく、主婦的であると思った。食材の運用のセンスが感じられる、というか。