2015年に運営されていた村上春樹がファンから寄せられる質問メールに答えるサイトの書籍化。先日文庫本になっていたので、ちょうど軽いものが読みたい瞬間があったので手に取る。たしかリアルタイムでもサイトをほとんど追っていた気がする。毎回面白い回答がされているわけではなく、質問に質問で返すような、相手を脱臼させるような回答も多くあるのだが、おおむね面白く読んだ。とはいえ、大部分を流し読みしてしまっているのだが、それでもいくつかの質問と回答は記憶に残るものがある。
とくに鑑別所で村上春樹の著作に出会って、それからずっとファンである、という質問。これは村上春樹の作品へのファースト・アプローチのシチュエーションとしては、かなり珍しい部類なのではないか、と思う。その珍しさが、なにか物語的なエピソードとして成立しているような気さえする。端的に「そういう人生もあるんだ」という気づきがあって。
それから複数の質問者が「不倫を書いているのはいかがなものか」、「セックスについて書きすぎなのではないか」と質問の形をした主義主張をおこなっているのも印象に残る。なにが「いかがなもの」なのか。本が人に与える影響を多く見積もり過ぎな人間の存在を改めて確かめられるようである。じゃあ、ドストエフスキーを読んだら金持ちのおばあさんを殺す事件が増えるのか、とか思ってしまうんだが。