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文化的消費活動の日記

土井善晴 『土井善晴の素材のレシピ』

 

土井善晴の素材のレシピ

土井善晴の素材のレシピ

 

人気の料理研究家、というよりかは近年は料理の思想家*1に近い活躍をされている土井善晴先生の最新レシピ本。元になっているのはテレビ朝日系列で放送されている「おかずのクッキング」と同名のテキストで紹介されたレシピ*2

既刊のレシピ本と重複があるものの「レシピ本は道具だ」という本書の帯にあるコピーをそのまま受け取れば、書きぶりが変われば、内容が同じでも違う道具になりうるのがレシピ本の面白いところだと言える。

素材ごとに見開きで4種類ずつの料理が紹介され、ページの右上にはその素材の旬がいつなのか記号で示されている。料理はどれもがシンプル。写真をみてもそのシンプルさが伝わってくる。『おいしいもののまわり』*3の一節が思い出される。

この頃は素材の大切さを物語ることが少なくなったように思う。素材そのものの話よりも、「どうやってつくるの?」という話ばかり。気がつけば、私たちは自然からずいぶん離れてしまっているのかもしれない。

大変ポップな作りの本だが、このポリシーはしっかりと貫かれている。簡単は手抜きじゃない。またもや帯の繰り返しだが、素材からはじめること、そして、素材をいかにいじらずに食べるか。今度は『一汁一菜でよいという提案』から引いてみよう。

見た目を良くしようと意識して手数を増やせば、素材はまずくなります。それは、場違いなひと手間です。毎日の料理は食材に手を掛けないで、素材をそのままいただけばよいのです。

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*1:……という強い語感は似合わないか

*2:なお、当番組はもともと土井先生の父である土井勝がメインキャストをつとめていた

*3:この本も「おかずのクッキング」に連載されたエッセイをまとめたものだ