さて、2020年に良かった曲の続き。後半は結構仕事が忙しかったりして音楽を聴く時間が激烈に減ったりしたもんで30曲のエントリー。しかしながら濃さで言えば前半よりも濃いかも。
- The Vacant Lots / Rescue
- アンダーソン・パーク / Lockdown
- 宇多田ヒカル / 誰にも言わない
- Brasstracks & Samm Henshaw / Change For Me
- Keedron Bryant / I JUST WANNA LIVE
- Sofie / Try to Reach Me
- リアン・ラ・ハヴァス / Weird Fishes
- ジェイムス・ブレイク / Godspeed
- ライ / Helpless
- ブルース・ホーンズビー / No Limits
- シーロー・グリーン / Don't Lie
- 蓮沼執太フルフィル / windandsindows (Remix)
- U-zhaan & BIGYUKI / City Creatures
- 藤原ヒロシ / TIME MACHINE #2
- ビーバドゥービー / Care
- METAFIVE / 環境と心理
- 環ROY / Protect You
- トラヴィス・スコット / THE PLAN
- プリンス / I Could Never Take The Place Of Your Man
- Negicco / 午前0時のシンパシー
- Samuel Seo / Link
- SZA / Hit Different (feat. Ty Dolla $ign)
- Fenne Lily / I, Nietzche
- Avery Wilson / Smoke
- ヴィクトリア・モネ / Experience (feat. Khalid & SG Lewis)
- Tiana Major9 / Same Space?
- Dinner Party / Sleepless Nights (feat. Phoelix)
- Dent May / Hotel Stationary
- 坂本慎太郎 / 歴史をいじらないで
- Cribas / Los Amores
- 関連エントリー
The Vacant Lots / Rescue
USのエレクトロ・ニューウェーヴデュオの3枚目のアルバムより。ちょうどアメリカ大統領戦が盛り上がっている時期にリリースされていたのだが、現代アメリカに対しての直接的な諦念がエレクトロ・パンクな感じで歌われているのが良かった。ちなみに彼ら、インスタに「レコード買ったよ」と投稿すると、必ずコメントをくれてすごくマメ。「Suicideとかジザメリを思い出すよ」みたいな感想を送ったら、「恐縮です」みたいなことを言われた。
アンダーソン・パーク / Lockdown
これもBLMソング、であり、かつさらにはコロナ・ソング。2020年で忘れられない楽曲のひとつ。
宇多田ヒカル / 誰にも言わない
2020年の方角のベストトラックだったかも。小袋成彬プロデュース、ということで現代R&Bに極めて接近するサウンドなのだが、音圧で攻めてくる感じではなく、空間性を活かした音の構成が素晴らしい。リズムトラックやサックスのソロなど、モデルにしている英米のR&Bの形はあるのだが、モノマネではないスペシャルな楽曲に仕上がっている。やはり宇多田は天才だな、と恐れ入った。
Brasstracks & Samm Henshaw / Change For Me
NYを中心に活躍するトラックメーカーユニット、Brasstracks(ブラス・ウワモノ担当とリズムトラック担当の二人組らしい)はおそらくこれからもっと注目度が上がっていくであろう。ソウルの陽性部分をうまく抽出したような楽曲の作り方が良い。
Keedron Bryant / I JUST WANNA LIVE
これまたBLMソング(などという物言いはあまりに消費的かもしれないが)。若干12歳にしてYouTubeで歌ったアカペラの楽曲(お母さんが作詞した)で注目を浴びたキードロン・ブライアント。このシングルはそのアカペラの楽曲に対して、あとから音を付け足して編集して楽曲化したもの。この楽曲化も今様であるのだが、歌詞がシンプルに胸を打つ。
Sofie / Try to Reach Me
オーストリア出身のシンガーらしい(これはtdさんのブログで知ったのだと思う)。ものすごい気だるさとそのなかに潜むロマンティークが刺さらないわけがなく……。
リアン・ラ・ハヴァス / Weird Fishes
2020年大ブレイクした女性歌手といえばこの人なのではないだろうか。アルバムのリードトラックである「Bittersweet」はラジオでもよく流れていた。晩年のプリンスとも共演していたことにたまたま気づいて「(たぶんレーベルがワーナーだったというつながりもあるのだろうが)プリンス慧眼すぎでしょ」と驚きもした。UKロック/オルタナとR&Bとを接近させたサウンドで絶妙なのだよな。この「Weird Fishes」は、おー、めちゃくちゃレディヘっぽい、UKサウンドだ、と思ったら、レディヘのカヴァーだった。
ジェイムス・ブレイク / Godspeed
これは車を運転しててラジオで聴いた。あまりに衝撃的だったのでローソンにいくところだったところまで覚えている。ジェイムス・ブレイク、普通にゴスペルやってるじゃん! と思ったら、フランク・オーシャンのカヴァーだったという。その後、カヴァー曲を集めたEPのなかにこの曲も収められたが、そのピアノと彼自身の声によって構成される音楽の親密さが素晴らしくて。ジョニ・ミッチェルやキャロル・キングとも近い世界観を持っている気がする。
ライ / Helpless
で↑のジェイムス・ブレイクの次に流れていたのがライのこの曲だった、という。一切過去作との芸風が変わっていない感じだがそれがまた良し!
ブルース・ホーンズビー / No Limits
これは今年になって聴きはじめたピーター・バラカンのラジオで知った。ブルース・ホーンズビー自体を初めて知ったのだが、ポスト・クラシカル的な音楽語法をポップスのなかに取り込んでいてこういうのはアメリカでなきゃ生まれないだろうなあ、という天才的な楽曲で驚いた。
シーロー・グリーン / Don't Lie
まったく話題になっていなかった感じがするがシーローのこのアルバムもオーセンティックな感じで最高だったと思う。とくにこの曲の良さ! 単純に歌がめちゃくちゃ上手い人がめちゃくちゃいい曲を歌っているだけ、でもあるのだが、しかし!
蓮沼執太フルフィル / windandsindows (Remix)
ジャケットがプログレみたいで。端的にいい曲だし、蓮沼執太は新しいポップスの音世界をどんどん開拓していってほしい。
U-zhaan & BIGYUKI / City Creatures
無国籍の民族音楽、というか。軽くネバつくようなBIGYUKIのリズムとタブラの音色が心地よく。BIGYUKIは『2099』もめちゃくちゃ良かったなあ。
藤原ヒロシ / TIME MACHINE #2
藤原ヒロシが音楽についてちゃんとフォローを初めたのは前作(名盤)からだったが、その続編的なアルバム。ここに挙げた曲以外にもサカナクションのカヴァーも最高。メロウ、かつ、ダビーなサウンド・メイクが実に今の気分で今年の邦楽のベスト・アルバムにも挙げたい一枚。ヴァイナルでも出してほしい。ちょうどこのアルバムを聴いていたころにカセット・デッキを家で稼働させはじめたのも今年の後半、新譜を聴く量が減った理由のひとつか。このアルバムは戯れに配信音源からカセットに落として聴いたりもしていた。
ビーバドゥービー / Care
フィリピン出身のSSWのデビュー・アルバム。この曲もかなりラジオで聴いた。フィリピンといえばR&B系の実力派シンガーを近年次々に送り出している印象があったが、こういう90年代オルタナサウンドが蘇ったような音楽性が2020年に出てくるのは意外、しかし、これまた涙なしには聴けないような楽曲。何ッシング・パンプキンズなのか、マイ・何ッディ・ヴァレンタインなのか、って感じだけれど、最高。今年のベスト5に入る。
METAFIVE / 環境と心理
これはカセットでシングルが発売されていて思わず買った。高橋幸宏の健康問題など心配なことがあったが、これだけ素晴らしい音楽を送り出してくれているとなるとまた復活してほしい、という気持ちを強く抱く。
環ROY / Protect You
前作の『なぎ』はリリース以降長く聴き続けてきた。新譜はまた音楽性が変わっていて、実はそれがそこまで個人的にはハマってないのだが、この楽曲は2020年っぽい空気を感じるリリックだったなぁ。イマイチ日本語ヒップ・ホップには興味をちゃんともてないでいるのだが、環ROYにだけは目が離せない。それはマック・ミラーの遺作で感じたSSW的な世界観を感じるからなのだろう。
トラヴィス・スコット / THE PLAN
2020年大きく話題を集めた映画『TENET』のエンディングで流れていた楽曲。劇中にもこの曲のイントロで流れているような奇怪なシンセベースっぽいオスティナートめいた反復音が緊張を煽っていた。劇場の爆音でスタッフロールとともに鳴り響く論理を超越した身体レベルで訴えかけてくるカッコよさ。「We don't know where we stand......」というリリックは、映画の感想にも聞こえる。
プリンス / I Could Never Take The Place Of Your Man
今年の個人的トピックとしてはプリンスの『Sign O' The Times』のリマスター再発も大きい(USオリジナル盤を持っていたりもしたのだが、ヴァイナルでリマスター再発を買いました。リマスター効果がかなり良くてまったく無駄な買い物ではないことをここに書き記しておく)。発掘音源盛りだくさんのスーパー・デラックス・エディションはサブスクで時間をかけて聴き通したがなかでも出物はこの「I Could Never Take The Place Of Your Man」の1979年ヴァージョン。まるでThe Carsのような小気味いいバンド・サウンドで最高だった。
Negicco / 午前0時のシンパシー
一十三十一プロデュースによるNegiccoの新譜。歌詞もすごくよく練られて気持ちいい言葉の配置なっているような気がして良かった。
Samuel Seo / Link
ジャケットは去年出てたラファエル・サディークのアルバムみたい。韓国R&Bのなかの最左翼であり、最右翼ともいえるサミュエル・セオの新譜から。前作はまんまディアンジェロで笑ったが、本作は相当にジャジーな方向に接近していて、カマシとかが絡んでてもおかしくないサウンドでまた驚愕したのだった。US録音だったりするのだろうか、と思って調べたら全部韓国、ミュージシャンも全員韓国人なんだよね。それもまた驚き。韓国はもうサウンド的にはUSの最新サウンドが国内リソースだけで作れてしまうのだ。
SZA / Hit Different (feat. Ty Dolla $ign)
SZAも客演仕事が多い人だが、やはり客演仕事が多いTy Dolla $ign(今年でたアルバム・タイトルが『Featuring Ty Dolla $ign』!)との共演によるこのシングル曲は良い空気感があって良かった。The Neptunesがプロデュースなせいか音もすごかった。バスドラが今年一番出てた曲な気がする。
Fenne Lily / I, Nietzche
tdさんのブログで知った「涙なしには聴けない」系のアルバム。tdさんも書いていたけれど、ヴァシュティ・バニヤンを彷彿とさせる歌声で、オルタナっぽかったり、あるいはトラッド・フォークみたいな味わいがあったり。これもまた英国からしか生まれ得ないであろう音楽。
Avery Wilson / Smoke
これもメロ夜経由で。いま松尾潔が最も評価しているシンガー、ということだったのだが、大変甘やかなる歌声の持ち主で一発でキマった。この楽曲もヴィブラートがかかったエレピに、ベース、ドラム、という非常にシンプルなトラックなのだが、だからこそ、この歌声がより映える感じが。
ヴィクトリア・モネ / Experience (feat. Khalid & SG Lewis)
これもディスコっぽい曲調で抗えない感じだった。
Tiana Major9 / Same Space?
ティアナ・メジャー9はUK出身でモータウンと契約している歌手。24歳とは思えないめちゃくちゃ成熟した歌声。
Dinner Party / Sleepless Nights (feat. Phoelix)
テラス・マーティン、ロバート・グラスパー、9th Wonder、カマシ・ワシントンという4人組によって結成された歌モノグループ。スーパー・グループ、といって良いでしょう(グラスパーとテラス・マーティンは、R+R=NOWでも一緒)。ジャズとヒップ・ホップとソウルの垣根を無くすような音楽性がコンセプトらしい。リード・トラックであるこの楽曲は、冒頭からのカマシのサックスの音色がセクシーで最高。なお、よりヒップ・ホップ色が強い『Dinner Party: Dessert』というアルバムも出している。
Dent May / Hotel Stationary
これは仙台のメロウ番長、tmymさんが出演していたポッドキャストで年末に知った。このデント・メイという人の作品は、前作から大好きだったのだが、完全に気づかずスルーしていたのでホントに助かった。モダン・ソフト・ロック、とでも言うべきか、西海岸的、あるいはブライアン・ウィルソン的な美しいハーモニーを本作でも聴かせてくれる。
坂本慎太郎 / 歴史をいじらないで
これまたスゴい歌詞で今の日本でリアルな(それこそBLMに反応しているUSのR&B系SSWのように)歌詞を書ける人って坂本慎太郎しかいない気がする。
Cribas / Los Amores
ほとんどサブスクかアナログでしか音楽を聴いていないのでこの新譜を忘れていた。コトリンゴとも共演するアルゼンチン・ネオ・フォルクローレのグループ。アコースティックで親密な音楽。そういえば今年はカルロス・アギーレもいつのまにかサブスク解禁になったりしてて一時期よく聴いていた。