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文化的消費活動の日記

ドミニック・ローホー 『少食を愉しむ: シンプルにやせる、太らない習慣』

 書店で目について(とくにダイエットをしているわけではない)。無理せず、持続的な習慣をコツコツとやってダイエットするために必要なマインドセットや手法を紹介した本。フランスで話題に! みたいな宣伝がされているのにやけに日本の話がでてくるな、と思ったら、著者は日本在住歴も長いフランス人だそうで。で、栄養学の専門家でもなく、なにかのインストラクターというわけでもない。ライフスタイル系のライター、というのが正確なところなのだろう(大学で教鞭をとっていたこともあるらしい)。

そういうわけで本書の内容がどこまで正確なものなのかは判断ができない部分がある。たとえば、本書の基本スタンスとしては「脂質は満腹感や脳の働きのためにも適量が大事、しかし糖質は絶対悪。糖質はすぐに脂肪として蓄えられてしまう、体の脂肪をエネルギーに変えていけば自ずと痩せていくんだ」的な、糖質絶対悪的なものが見られる。

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この糖質絶対悪に対しては、(↑)こういう話もあるし(糖質を過剰にとっても一日に生成される脂肪の量は決まっている!)、トレーニング界隈では糖質をカットすることで体から水分が抜けて体重が落ちるだけ、というのはもはや常識レベルの知識だろう。よって、糖質を悪者扱いってどうなのよ、って感じである。

また、P. 148の「私たちは一日何キロカロリー必要?」では「医者は通常の代謝機能を持つ女性に対しては一日に1200kcal、男性は1500kcalを推奨しています」などと書いているが、これも明らかに数字がおかしい。ここで挙げられている数字は、生命維持に最低限必要な基礎代謝量の数値であって、こんな摂取カロリーを奨めている医者なんかどこにもいないだろう。一般男性が一日1500kcalで生活をしていたら、運動をあまりしない人でも大体10日で1kgの脂肪燃焼ができることになってしまうが、これは相当に少食を強いられるハズだ。

ただ、新たな習慣を身につけるためのテクニックを知る本としては面白いと思う(また、本書では著名人の食事スタイルなどもたくさん紹介されていて、なかでもグールドがどんな食事をしていたか、という記述は面白かった)。時節柄なんか派手にライフスタイルを変えてみたり、ジムにいってめちゃくちゃ体を動かしたり、みたいなことってやりにくくなっている、と思うんだけれども、そうしたなかで自分の食生活を見直すきっかけとしては良さそう。