斎藤幸平の日本語第一著作を読みおえる。こないだ「100分 de 名著テキスト」を読んだ名残りもあったのですんなり読めた(マルクスをまったく知らないが、最近のメディア露出や新書で興味をもってこの本を手にとった人は、こっちのテキストをまず読んでおいたほうが良いだろう)。
刊行当初からSNSでも多く言及されているのを見た記憶がある。要するに話題書なわけだが、それがハイプな感じでなく面白かった。
これまで検討されてこなかったマルクスの遺稿やノートに光をあて、未完に終わった『資本論』におけるエコロジー思想、サステナブルな経済に関する思想を再構成しよう、という経済思想史的な内容になるが、マルクスが参照していた19世紀なかばの農学者や化学者たちのなかに、すでにグローバリズムに警鐘を鳴らし、サステナブルじゃない農業や工業を批判していた人たちがいた、という点が驚き。個人的にはマルクスがなにを言おうとしていたのか、というよりも、こっちの「えー、こんなこと言ってた人がいたのか!」ってほうが面白かった。マルクスを媒介して掘り起こされた19世紀のエコ思想、みたいな。