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文化的消費活動の日記

近藤康太郎 『三行で撃つ: 〈善く、活きる〉ための文章塾』

 

 これほど破天荒な、本書の言葉を用いるならば「気の狂った」文章案内は見たことない。朝日新聞の記者として活躍し、現在は九州で猟師や百姓も営む作家によって上梓された、すべてのライターのための……「実用書」……という体裁をとりつつ、ラカンデリダの言葉も引かれる細部を取り上げるだけでも異様な本だとわかる。文章のハウツー本になぜ、フレンチ・セオリーが必要なのか。異様だし、異形だ。

丁寧な本とはいえないだろう。さらに、即効性のあるトピックは全体の半分程度に留まっていると思う。特に第4章は「書けるようになるための生き方」が記しており、すぐに書けるようになるためのテクニックの話ではない。文体も速いし、脱線も多い。にもかかわらず、だからこそ、面白く読める。同じ九州在住の作家、坂口恭平が持つグルーヴも思い出す。