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文化的消費活動の日記

菊地成孔 『次の東京オリンピックが来てしまう前に』

 

次の東京オリンピックが来てしまう前に

次の東京オリンピックが来てしまう前に

 

 エッセイ集は『時事ネタ嫌い』以来になるのか? もはや皮肉というか、予言めいたタイトルと化しているが、近年の菊地成孔の著作のなかではダントツ面白い(し、誤字脱字がまったく気にならない。これはこの著者の本としては極めて珍しいことだ)。2017年〜2020年のWeb連載がまとめられており、まだ扱われている題材には鮮度がある。けれども、ところどころで参照された過去に吹き出してしまう。たとえば、2018年の年表(各年のはじめには年表がついている)にはその年の流行語として「そだねー」と記されている。一瞬なんのことかまったくわからない。が、1・2・3秒ほど思考を巡らせた結果、あの、なんかお菓子を食べながら漬物石的なオブジェクトを氷の上で滑らす競技の人たちだ、という記憶が蘇ってくる。「そだねー」! なんか、そんなのあったわ! まったく流行ってた感じがしないけれども、と思って笑いがこぼれる。あと10年ぐらい寝かしたらもっと熟成されて良い本になりそう。