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文化的消費活動の日記

『プルーストと過ごす夏』

 

元になっているのはプルースト研究者や批評家たちが自分の関心に寄せながら『失われた時を求めて』について語る、という2013年に放送されたフランスのラジオ番組らしい。素敵な番組だ。日本でも『源氏物語』とかヴォリュームがある本でやってほしいが、そんな番組は長いヴァカンスがあるからこそ文化的・生活的にマッチするのかもしれない。

「本国フランスでベストセラー! プルースト入門の決定版」と帯にはあるが、果たしてどうか。当然のことながら、あの長大な作品を読み通した人のほうが面白く読めるには違いなく、というか、まだ未読で興味あるんだったらさっさと集英社の鈴木道彦の訳で良いから読め!(解説があるなら入門的なテクストとしてはそれで十分だろ!)と思う。

良いなと思ったのは、各論者がプルーストの面白い部分や良い部分だけを抽出してくれているので、読者を悩ませるあの社交界のややこしい話や、ドレフュス事件がらみの記述などのダルい部分を読まずして「そうそう、そこが面白いんだよね」と確認できる点。なるほど、プルースト論の楽しみ方として、そういうのはあるな、って思う。再読しないで再読した気分になる、っていうか。

改めて思ったのは「プルーストはどこから読んでも良い」って書いてる人が多々いるけど(本書の訳者もあとがきにそう書いてる)それも大嘘だよな、ってことで。やっぱ頭から素直に読んでいくのが一番面白いよな。もう2周してるけど、また最初から読みたくなってきた。Kindleで新しい訳が全部出てほしい。

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