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文化的消費活動の日記

國分功一郎 千葉雅也 『言語が消滅する前に』

『中動態の世界』『勉強の哲学』の刊行を記念した対談から続く國分 × 千葉による対談シリーズを収録したもの。いずれの書物も2017年の刊行で、この年は東浩紀『観光客の哲学』もあった。日本の現代思想業界でも大変に実り多い年と記憶している。この対談集は、両者の書物刊行後のアフタートーク、というか、解説のようにも読めるけれど、言語の失墜、というか、世の中で言語が大切にされなくなっている傾向、これを両者ともに大変に危惧していて、それに起因したさまざまな社会的な由々しき事態を指摘している。対談の場、というおそらくはショー的な要素もたぶんに含まれた場で発せられた言葉であるから、単なるボヤキ的にも響く部分もあるのだが面白い。軽くも読めるし、重くも受け取ることができる。たとえば國分功一郎が『中動態の世界』を書くにあたって、アテネ・フランセで古典ギリシャ語の教室に通った際のエピソード。そこでは普段は「先生」である自分が「生徒」となって学ぶ楽しさについておおらかに語られている。それは『勉強の哲学』における教師による(ひとまずの)有限化の機能的重要性ともつながるだろう。