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文化的消費活動の日記

高橋ユキ 『逃げるが勝ち: 脱走犯たちの告白』

『つけびの村』が大きな話題を呼んだ著者による『つけび』以降第一作。記憶に新しい2人の逃走犯と1人の昭和の脱獄犯について、逃走犯本人や現地の住民への取材も重ねながら、その逃走劇をまとめている。世間一般に絶対的な「悪者」として取り扱われる逃走犯にも、その逃走の動機に彼らなりの正義めいた論理があることがわかり(その正義を行使するならば、別な方法もあっただろうが……とも思うのだが)面白かった。

逃走劇を振り返る際に、著者はたびたび当時の週刊誌や新聞、スポーツ紙で報じられた様子を引用する。そこでは時に、現実と報道のギャップが明らかになる。ここが面白い、というか、特異な立ち位置のようにも思う。本書も大手出版社からでているものであるし、著者もまたマスメディア側の人間だと思うのだけれど、マスメディアに対しての批判的なまなざしがある。もっと言えば、情報の受け手側により近い側から情報を扱っている、というか(もっとも情報の受け手側に対してもいろいろと危惧されているところがあるのだが)。

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