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文化的消費活動の日記

中村右介 『歌舞伎 家と血と藝』

中学の修学旅行で二代目市川猿翁(当時三代目市川猿之助)のスーパー歌舞伎(たしか三国志だったと思う)を見て以来、歌舞伎に縁はないのだが、去年ぐらいに古い邦画を観ていて「歌舞伎と映画の関係ってどういう感じなんだろう」という疑問が湧いていて、歌舞伎の歴史が気になっていたのだった。そうそう、なんかTwitterだったと思うけれど「歌舞伎は伝統芸能だけれども松竹という企業の専属体制で云々」みたいな文言を見かけ、へー、そうなんだ、私営企業が伝統芸能を一挙に収めてる、ってなんか特殊な感じがするな、って思ったりもしたのだった。

本書では現在活躍している歌舞伎役者の家系図を明治時代から遡っている。Kindleで買って読みはじめたが紙だと448ページもある大著。かなりすごいヴォリュームだが面白く読んだ。10年近く前の本なので、十二代目市川團十郎や十八代目中村勘三郎の死、そして現在の歌舞伎座の建て直しについて大きく取り上げられている(十代目坂東三津五郎はまだ死んでない)。ゴシップ的なものも含めたストーリーがしっかり組み上げられているのも面白いし、松竹の歌舞伎だけでなく、東宝、そして東映の話も出てくる。本書においては、歌舞伎界での権力争いで微妙な立ち位置にいた役者や、権力によって押し出された役者が映画界に流れ着くような整理がなされている。