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文化的消費活動の日記

矢作俊彦 『フィルムノワール/黒色影片』

2014年の『フィルムノワール/黒色影片』は人気シリーズ「二村永爾」、神奈川県警の刑事(横浜育ち、慶応大学野球部出身)、シリーズの現時点での最新作(もっとも本作で二村は神奈川県警を退職済であるが)。『三つ数えろ』や『マルタの鷹』のごとき複雑なプロットをチャンドラーばりの文体で駆け抜ける正統派サスペンス……と見せかけて、ゴダールのごとき映画の引用の数々に、宍戸錠本人が本人役で「出演」し、デウス・エクス・マキナを司る神のごとき役回りを「演じる」。『あ・じゃ・ぱん』で試みられたポストモダニズム的な手法をハードボイルドというジャンル小説のなかでやってのける。日本で一番格好良い作家といえば、矢作俊彦の名前をあげるだろう。間違いない。