sekibang 3.0

Nouvelle茶人、あるいは勉強家によるブログ

伊藤亜紗 『手の倫理』

 

 頭で考えることから離れて、身体のレベルから立ち上ってくるような感覚について考えてみたいような気がしていて、伊藤亜紗の仕事がその関心に近いのかもしれない、と思って読んだ……のだが、なんか違っていたかも。「さわる」と「ふれる」という触覚に関する日本語の意味の違い、ニュアンスの違いから、触覚から広がっていく倫理を検討していく本。(健常者にとっての)日常から、そうではないものまで多様な触覚世界、触覚感覚について言及されていて、それ自体は知らなかったものを教えてくれるし、端的に美学がこういう領域まで扱えるものなのかという驚きもある。のだが、自分的なハマらなさのポイントが、触覚がやはり体の表面からまずは感じ取り、あるいは感じ取られることだから、なのだと思う。本書で紹介されているヘルダーの言葉を借りれば「触覚=対象に「内部的にはいりこむもの」」ということだが、たぶん、自分の関心は逆で、内部から表面に発せられるもの、なのだろう。肌ではなく、体幹から湧き上がってくるもの。この著者の仕事についてはもう少し読んでみよう。

W. G. ゼーバルト 『移民たち: 四つの長い物語』

 

 2021年に読むゼーバルトの2冊目。ここ数年はかなり小説を読む機会が減っていて、それはなぜかといえば、フィクションの世界に浸るような余裕、というか隙間がどんどん少なくなっているからだと思っている、そんななかで2冊も同じ年に同じ作家を読んでいるのは極めて異例。なんか、ハマッてるんだと思う。そのわりには、彼の生涯に関するプロフィールはまったく知らなくて、この本を読んでいる途中に「へ〜、57歳で亡くなっているんだぁ」とか結構驚いた。本書は散文作品としては2作目に発表されたもの(1992年)。52歳のときだ。なるほど(それが思いがけないものだったとはいえ)晩年に作品を発表していた人なんだなぁ。作家としてこういうような世間への出方もあるのか、とも感心する。

4本の様々な長さの短編はいずれも著者本人が投影されているらしい語り手と人生のなんらかで巡り合った「移民たち」の生涯を追うもの。随筆ともフィクションともつかぬ書きぶりで、史実と虚構を織り交ぜながら進んでいくところは『土星の環』と同様。出どころがよくわからない写真(日本の金閣寺も紛れ込んでいる)への手の混んだ嘘キャプション的な文章としても読めるし、なにを読まされているんだ……と途方にくれる箇所もある。だが、それが良い。個人的な理想形に近い文章。

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2021年8月1日、あるいはオーラ

8月になってしまった。珍しく8時近くまで寝た。変な夢を見る。Tさんから「これ面白かったですよ」と論考のPDFをもらっている。英語の科学史関連のもので、事典の一項目らしい。ミハイル・バフチンスキーという、バフチンにに過ぎた名前の著者。その論考が収録されてる本を神保町の古本屋で探すと版によって全然内容が違っていることがわかり……夢まで自分が書いてる小説めいた雰囲気になっている。

朝食後、筋トレ、胸、上腕二頭筋、腹筋。

その後、ディーラーに行って車の点検。日産オーラの実写見る。デザインがやぼったいかな、と思ってたが実車を見るとそうでもない。むしろ、良い。さらにインテリアがかなり高級感あってお買い得感がすごい。ポーズのヘッドレスト埋め込みスピーカーによるサラウンドも良かった。

昼食はびっくりドンキーへ。Hがサラダをバクバク食べていた。

レコード屋に寄って帰宅。

「サンソン」。

その後、「Zガンダム」の録画を観る。シロッコのキレキレ具合。

スケボーを持って自転車の付き添い。高齢の女性に「これは難しいんですか? 13歳の子でも金メダルが取れるものですか?」と訊ねられる。毎週末ちょっとずつオーリーができるようになっているのが嬉しい。

帰宅後、即風呂、ヱビス・ザ・ホップ。この流れがもう完璧。

泡盛ソーダを飲みつつ、夕食。「Barakan Beat」。締めにハイボール

ストレッチ。

Hに『猿の惑星』のあらすじを話して寝る。

2021年7月31日、あるいは体験

7時に起きる。映画を観ながら酒を飲みすぎたので軽い二日酔い。朝食を準備しながら「ウィークエンドサンシャイン」。上履き洗い後に筋トレ、腹筋のみ。「世界の快適音楽セレクション」を聴きながら掃除。

Hをスイミング体験に連れて行く。頑張って口まで水につけていた。ほかの子と比べると明らかにHは筋肉質だということがわかる。

昼食は回転寿司へ(激安ではないやつ)。テレビによく出ている店だったのだが、かなり美味かった。

帰宅して昼寝。

夕方、自転車の練習にスケボーをもってついていく。毎週ちょっとずつオーリーの具合が良くなっている気がする。

帰宅して風呂、糖質ゼロビール。さらに泡盛ソーダに柑橘類をいれて。ついつい飲みすぎてしまう。

ストレッチ。

寝かしつけから復帰できず朝まで寝る。

2021年7月30日、あるいは婦人倶楽部の衝撃

6時過ぎに起きる。筋トレ、肩、上腕三頭筋

Welcome 2 America

Welcome 2 America

  • アーティスト:Prince
  • Legacy Recordings
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 プリンスの没後新譜を聴きながら仕事をはじめる。2010年に録音されていてお蔵入りしていたアルバムということらしい。2010年といえば『20Ten』を発表していた時期で、たしかツアーにもでていた気がする(イタリアの空港かなんかでライヴのポスターを見た記憶がある)。冒頭からダークなファンク色が強いが、全体的には衒いのないプリンス流ソウル、って感じではないか。なんでお蔵入りにしていたのかと思うが、当時のプリンスはインターネットの違法ダウンロードに抗議するために新譜のリリースをしない、とか宣言してたんだっけ。

 ショパンの《24の前奏曲》にリゲティニーノ・ロータ武満徹などをコンパイルした新譜。こういうアルバムの編み方はかなり今っぽいし、演奏も思慮深い、知性を感じさせるものだ。

強い雨が降ってくる。今朝のインシデントで洗っていたシーツが濡れる。

雨が上がったタイミングで自転車。今月はランニングが45km、自転車が168kmとなった。

Negiccoに関するネットの記事を読んでたら佐渡に婦人倶楽部なるグループがあることを知る。不勉強で知らなかったが、2014年からやってたらしい。プロデュースはカメラ=万年筆のひと。アートワークは川島小鳥。聴いてみたらCymbalsの遺伝子を色濃く感じる絶妙なシティ・ポップでちょっとすごかった。新潟のローカルアイドルどうなってんだ! ヤバすぎるだろ!!!

 「ほしいものリスト」を眺めていて、買っておかなきゃと思った本を注文。

夕方、ヱビス・ザ・ホップ。白ワイン、すだち泡盛ソーダ。レモンよりもすだちだな! と悟る。

ストレッチ。さらにハイボール

風呂。風呂後に鏡を見たら脂肪減少により顔つきが変わってきていることを実感する。 

 買ってあったBDを観る(画質・音質、ともにめちゃくちゃレベルが高くて買う価値あり)。20年ぶり? いや、もっとかもしれないし、逆に、大学に入ってから見直しているかもしれないが、これほど観直すことによって、自分の理解の解像度が上がった実感があった作品はない。物語のキーとなる、レイバーに組み込まれたOSをたったひとりのプログラマーが開発していて、かつ、そのソースを開発した企業もちゃんと把握していない、とか、パスワードを開発者の名前で設定している箇所がある、とかはありえなさすぎるのだが、そうした今のITの常識からすれば噴飯物である設定を差し置いても大傑作。『AKIRA』が1988年で、これが1989年だという。この映画も夏休みの映画として繰り返し放送されていた記憶があるが、恐ろしいことだ。素晴らしすぎる作品。

2021年7月29日、あるいは柑橘を買う

6時過ぎに起きる。筋トレ、背中、腹筋。まだ左の脇が痛む。

 先日からマイケル・マクドナルド関連を聴いてみている。

ランチ前に5km。たまにはランチで外食して地域経済に貢献するか、と思ったが、めんどくさくなってやめた。

気絶しながら仕事。

夕方ふと思い立ってスーパーで柑橘類を買う。泡盛ソーダに入れて飲む用。

帰宅してヱビス・ザ・ホップ。食事をしながらレモンを入れた泡盛ソーダ

ストレッチ。風呂。

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 読了。

トマ・ピケティ 『21世紀の資本』

 

 もう邦訳がでてから6年以上が経ってしまって「なんでこの本、流行ったんだっけ……?」って疑問が浮かんでしまうが、ちゃんと面白い! 経済学の基礎知識を備えていれば全然難しい話はでてこないから、体力と根気さえあればまるごと理解できる本だろう。問題は、めっちゃ長い、ってこと。

  • 長いスパンで見たら「r(資本、すなわち不動産とか株とか得られる収益率)>g(経済成長率)」っていうのが常態化してて、これで格差がどんどん広がってるっぽいよ
  • 経済成長ってのは1%ぐらいしか年間伸びないのが普通で、第二次世界大戦後から1970年代までが異常に伸びてただけ
  • 世界規模での戦争以外で格差は縮まってないよ(戦争によるインフレが金持ちの資産をギュッと圧縮しちゃうので格差が縮小する)

……とかの話をベースに細かいデータを見ていってるので、必然的に記述が長くなってしまう(格差をどう是正していくか、については金持ちにどうやってもっと税金を払わすかのか、って話に終止する)。ただ、その長さが本書の面白さでもあるので、たぶん要約本で本書のエッセンスだけ読んでも「なんだ、つまんなそうな本だな」ってなってしまうだろう。バルザックやオースティンの19世紀における資本が、今日における資本とどう違うのかとかは、文学方面でも受けそうだし、20世紀の仏米における格差の変遷の分析も面白い。参照してるデータもいちいち面白いから脱線しがいがある。

 たとえば、P. 336に乗っている「ヨーロッパと米国におけるトップ十分位の所得シェア」の図(9-7)では、スウェーデンのトップ10%の所得シェアが1960年から1980年までに急激に落ち込んだあとで、2010年までに急成長している(グラフの動き方としてはフランスと似ているが変動はより激しい)。こういうところからスウェーデンの経済ってどんな感じになってるんだっけ? という疑問が浮かび、ググッて↑のような資料にあたったりして。ピケティも「スウェーデンは、しばしば私たちが思っているような構造的な平等な国ではない」と言っているのだが、この資料は、北欧 = 幸福度が高くて良い国!っていう漠然としたイメージを打ち砕いてくれるモノ。

左派が経済政策について訴える際にスティグリッツの『プログレッシブ・キャピタリズム』とあわせて参照されるべき本だと思う。いずれも「いかに今の金持ちがいかに税金を払わず、しかも自分の資産を増やすのに有利な状況にあるのか」を分析した本であり、スティグリッツの本がより最近の米国の状況にクローズアップしたものだとすれば、ピケティの本は資本主義を産業革命前夜から今日までのスパンでスーパーロングショットで捉えたような分析になっている。

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