sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

『武満徹著作集 4』

武満徹著作集 4 作者:武満 徹 新潮社 Amazon 文化人類学者、川田順造との書簡集『音・ことば・人間』(1980年)と、大江健三郎との対談集『オペラをつくる』(1990年)を収録。いずれも異分野で活躍する人物との対話の本で、著作集の3巻を読んだときも感じた…

リチャード・E・ルーベンスタイン 『中世の覚醒: アリストテレス再発見から知の革命へ』

中世の覚醒 (ちくま学芸文庫) 作者:リチャード・E.ルーベンスタイン,小沢千重子 筑摩書房 Amazon 著者のルーベンスタインは紛争解決、公共問題の専門家が書いたギリシア〜中世までの思想史。なかなか密度がある本なので読むのも大変だと思うのだが、この時…

エルネスト・H・カントーロヴィチ 『王の二つの身体』

王の二つの身体 上 (ちくま学芸文庫) 作者:カントーロヴィチ 筑摩書房 Amazon 王の二つの身体 下 (ちくま学芸文庫) 作者:カントーロヴィチ 筑摩書房 Amazon 中世政治思想史の名著を復刊のタイミングで読む。読んだことには読んだのだが、20世紀前半の知識人…

張源『茶録』/ 許次ショ『茶疏』

明代二大茶書 張源『茶録』・許次ショ『茶疏』 全訳注 (講談社学術文庫) 作者:張 源 講談社 Amazon 16世紀・17世紀、中国の明代に書かれた煎茶道のHowTo本を読む。ひたすら、どこそこの茶は美味い、茶はどうやって煎れるべき、また栽培や収穫のタイミングな…

『西遊記』

西遊記〈上〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon 西遊記〈中〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon 西遊記〈下〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon およそ1年ほど…

片岡一武 『ゼロから始めるジャック・ラカン: 疾風怒濤精神分析入門 増補改訂版』

ゼロから始めるジャック・ラカン ――疾風怒濤精神分析入門 増補改訂版 (ちくま文庫 か-86-1) 作者:片岡 一竹 筑摩書房 Amazon 単行本ヴァージョンでもあまりの明晰さに大きな感銘をうけた「シン・ラカン入門」的な著作が文庫化されてさらに良くなっている印象…

三浦哲哉 『自炊者になるための26週』

自炊者になるための26週 作者:三浦哲哉 朝日出版社 Amazon 「自炊者」。聞き慣れない言葉だが、端的に「自炊をする人」と理解しようとすると、自炊への入門、導入を誘うテイである本書はかなり奇特な内容だと思う。料理の入門書、であるならば、包丁の握り方…

浅田彰 『構造と力: 記号論を超えて』

構造と力-記号論を超えて (中公文庫 あ 51-2) 作者:浅田 彰 中央公論新社 Amazon 世の中にはさまざまな概要書・入門書の類があるけれど、大きくは、縦方向の解説と横方向の解説、というふたつに分けられると思う。前者は概念や仕組みを詳しく、丁寧に語り直…

2023年に読んだ本を振り返る

片岡一竹 『疾風怒濤精神分析用語辞典』 - sekibang 3.0 福尾匠 『日記〈私家版〉』 - sekibang 3.0 松原岩五郎 『最暗黒の東京』 - sekibang 3.0 向田邦子 『阿修羅のごとく』 - sekibang 3.0 松本卓也 『人はみな妄想する: ジャック・ラカンと鑑別診断の思…

『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン——大いなる探究の現在地』をご恵投いただきました!

現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン——大いなる探究の現在地 作者:山極寿一,佐藤勝彦,中村桂子,永井均,三牧聖子 青土社 Amazon 小田部・山内論考に挟まれて、それらと比べて即死の出来だったらどうしようかと心配したものの・・・、なんとかなっ…

『口訳 古事記』

口訳 古事記 作者:町田康 講談社 Amazon 町田康による『古事記』の現代語訳……現代語? いや、公共の電波にものらない土着的な関西弁で話す神々が登場するこの訳を現代語と言って良いものなのか。わからないが面白い。町田康と岸本佐知子による対談でも語られ…

桑瀬章二郎 『今を生きる思想 ジャン=ジャック・ルソー: 「いま、ここ」を問いなおす』

今を生きる思想 ジャン=ジャック・ルソー 「いま、ここ」を問いなおす (講談社現代新書) 作者:桑瀬章二郎,ジャン=ジャック・ルソー 講談社 Amazon 最新のルソー入門書。ルソーの生涯をたどりながら主要著作の解説とその思想を紹介しており、その解釈につい…

ジャン・スタロバンスキー 『モンテーニュは動く』

モンテーニュは動く 作者:ジャン スタロバンスキー みすず書房 Amazon 同じ著者がルソーを扱った『透明と障害』は難しくて途中で読むのを諦めたのだが、モンテーニュを扱ったこの本は最後まで読み通せた。38歳で隠棲してから死ぬまで『エセー』を書き続けた…

安達裕哉 『頭のいい人が話す前に考えていること』

頭のいい人が話す前に考えていること 作者:安達 裕哉 ダイヤモンド社 Amazon 部下の代わりに読むビジネス書のシリーズ、的なもの。課題を整理する方法や、良いコミュニケーションをとるための大原則的なものがわかりやすく説明されていて良い本なのだが、そ…

今井むつみ・秋田喜美 『言語の本質: ことばはどう生まれ、進化したか』

言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書) 作者:今井むつみ,秋田喜美 中央公論新社 Amazon 話題書。人間の言語習得プロセスでは、その初期にオノマトペが重要な働きを成すこと(オノマトペが感覚/認識と記号を結びつけて理解する「記号接地」…

ノーバート・ウィーナー 『サイバネティックス: 動物と機械における制御と通信』

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫) 作者:ノーバート・ウィーナー 岩波書店 Amazon 古典に触れていると「こういうのを書ける人って今はいないんだろうなぁ」という感嘆を覚えることがあるが『サイバネティックス』もそ…

マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか: 市場主義の限界』

それをお金で買いますか 市場主義の限界 作者:マイケル・サンデル,鬼澤 忍 早川書房 Amazon 原題の副題は The Moral Limits of Markets 、つまり、市場における道徳的な制限、であり、邦題の副題だとなんのことだかよくわからない気がする。お金をインセンテ…

ベンジャミン・ピケット 『ヘンリー・カウ: 世界とは問題である』

ヘンリー・カウ ― 世界とは問題である 月曜社 Amazon 個人的な思い出話から書きはじめる。2002年の夏、高校で心血を注いできたオーケストラ部の最後の定期演奏会にバスーン奏者として出演し終えた翌日、だったと思う。同じ部活の2つ上の先輩を頼って、受験し…

虎屋文庫 『ようかん』

ようかん 作者:虎屋文庫 新潮社 Amazon 羊羹でおなじみの虎屋の資料室部門、虎屋文庫による羊羹本。500年以上続くと言われる社史も読みごたえがあるが、全国の美味しい羊羹や変わり種、羊羹に使われている材料、そして羊羹の歴史をひもとく羊羹好きにはたま…

『日本の昔話1 はなさかじい』

はなさかじい (日本の昔話 1) 作者:小沢 俊夫 株式会社 福音館書店 Amazon 福音館のハードカバー本(全5巻)。全体では301話の昔話が収録されているらしいのだが、この一巻目では年明けから春に関連した話を中心に収録しているらしい。子供(6歳)を寝かしつ…

坂本龍一 『坂本図書』

坂本図書 バリューブックス・パブリッシング Amazon 坂本龍一には現代思想やニューアカ的なものに傾倒していたイメージがあったが、それだけでなくかなり広範な領域をカヴァーしていたことがわかる。さすが、編集者の息子、って感じだし、読書好きなアーティ…

土井善晴 『味つけはせんでええんです』

味つけはせんでええんです 作者:土井善晴 ミシマ社 Amazon 土井善晴先生の新刊。帯に「雑文集」とあるが話題がとにかくころころと転がっていく、変わっていく。しかし、その自由な流れがいわゆるフローに入っているようで(その変化は本書でも名前がでてくる…

東浩紀 『訂正可能性の哲学』

訂正可能性の哲学 ゲンロン叢書 作者:東浩紀 株式会社ゲンロン Amazon 続・『観光客の哲学』的な著作。全体は大きくふたつに分かれている。前半部分では『観光客の哲学』で不十分なまま終わっていた、友敵理論、こっちにつくのか(友)あっちにつくのか(敵…

東浩紀 『観光客の哲学 増補版』

観光客の哲学 増補版 ゲンロン叢書 作者:東浩紀 株式会社ゲンロン Amazon 2017年に出た本の増補新版。 この年はほかにも面白い人文書がいろいろあったと記憶している。当時の感想を読み直すと相当感銘を受けているが、今なお本書の議論は面白いと思うのだが…

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] スタイル Amazon 庵野秀明が1993年末に刊行した富野由悠季の劇場作品「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年公開)に関する同人誌を復刻したもの。100ページちょっとで3300円とかするのだが、富野由悠季…

土井善晴 『おいしいもんには理由がある』

おいしいもんには理由がある 作者:土井善晴 ウェッジ Amazon 土井善晴先生の連載をまとめた一冊。ローカルな食や伝統的な製法で作られた食材などをもとめて土井先生があちこちを訪問する食・紀行。東海道新幹線・山陽新幹線のグリーン車で配布されている冊子…

ロレンス・ダレル 『アレクサンドリア四重奏』

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ 作者:ロレンス・ダレル 河出書房新社 Amazon アレクサンドリア四重奏 2 バルタザール 作者:ロレンス・ダレル 河出書房新社 Amazon アレクサンドリア四重奏 3 マウントオリーブ 作者:ロレンス・ダレル 河出書房新社 …

源河亨 『「美味しい」とは何か: 食からひもとく美学入門』

「美味しい」とは何か-食からひもとく美学入門 (中公新書 2713) 作者:源河 亨 中央公論新社 Amazon 買ってから『悲しい曲の何が悲しいのか』と同じ著者の本だったことに気づく。分析美学を使って食を美学の対象として捉える、あるいは食という題材から分析美…

島泰三 『親指はなぜ太いのか: 直立二足歩行の起原に迫る』

親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) 作者:島 泰三 中央公論新社 Amazon 以前に福尾匠さんの日記で紹介されていた本。霊長類の形態がその主食によって決定されているという「口と手連同仮説」をもって人類の進化の謎にアプローチせん、…

つげ義春 『つげ義春日記』

つげ義春日記 (講談社文芸文庫) 作者:つげ義春 講談社 Amazon 昭和50年から昭和55年(1975年〜1980年)の日記。このあいだに息子の誕生、妻の癌、自らのノイローゼという出来事が大きなイベントのように発生している。妻との口論の内容までもが記録されてお…