sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

マヌエル・プイグ 『天使の恥部』

天使の恥部 (白水Uブックス) 作者:マヌエル・プイグ 白水社 Amazon 読んでいるあいだは面白いけど、あとから内容をまったく思い出せない、そういう本があるけれど、プイグの小説は自分にとってまさにそれで『蜘蛛女のキス』も『ブエノスアイレス事件』もそう…

『新古今和歌集』

新訂 新古今和歌集 (岩波文庫 黄 101-1) 作者:佐佐木 信綱 岩波書店 Amazon 丸谷才一の『後鳥羽院』から興味をもって『新古今和歌集』を読んでみる。古文に関しては過去に小西甚一の参考書を読み流しただけで、ほとんど馴染みがないのだが(受験勉強でもかな…

千葉雅也 『センスの哲学』

センスの哲学 (文春e-book) 作者:千葉 雅也 文藝春秋 Amazon おどろくように軽い文体で語られる、センス、ここではあらゆる芸術作品(あらゆる、だ!)の見方・味わい方を「センス」と呼んでいるのだが、の入門。千葉雅也の著作のなかでも最も軽く、難しい話…

斎藤幸平 『マルクス解体: プロメテウスの夢とその先』

マルクス解体 プロメテウスの夢とその先 講談社 Amazon 正直、本文の8割(え? マジかよ、って感じの誤植が序盤からあって、読んでて「これ大丈夫な本なの?」って思うのだが)『大洪水の前に』となにが違うんだ、って感じ。やってることは「これまでのマル…

デレク・ベイリー 『インプロヴィゼーション: 即興演奏の彼方へ』

インプロヴィゼーション: 即興演奏の彼方へ 作者:デレク ベイリー 工作舎 Amazon デレク・ベイリーが1974年にBBCのラジオ番組でおこなったインタヴューをもとにした本。インタヴュー対象者は、インドの伝統音楽の奏者、スパニッシュ・ギター、ロック・ギタリ…

丸谷才一 『後鳥羽院』

後鳥羽院 第2版 (ちくま学芸文庫 マ 37-1) 作者:丸谷 才一 筑摩書房 Amazon なんの因果で本書を手に取ったのかまったく思い出せないでいるのだが、丸谷才一が歌人としての後鳥羽院を語り尽くす、的な一冊。例によって歴史的かなづかい、かつ『日本文学史早わ…

『武満徹著作集 4』

武満徹著作集 4 作者:武満 徹 新潮社 Amazon 文化人類学者、川田順造との書簡集『音・ことば・人間』(1980年)と、大江健三郎との対談集『オペラをつくる』(1990年)を収録。いずれも異分野で活躍する人物との対話の本で、著作集の3巻を読んだときも感じた…

リチャード・E・ルーベンスタイン 『中世の覚醒: アリストテレス再発見から知の革命へ』

中世の覚醒 (ちくま学芸文庫) 作者:リチャード・E.ルーベンスタイン,小沢千重子 筑摩書房 Amazon 著者のルーベンスタインは紛争解決、公共問題の専門家が書いたギリシア〜中世までの思想史。なかなか密度がある本なので読むのも大変だと思うのだが、この時…

エルネスト・H・カントーロヴィチ 『王の二つの身体』

王の二つの身体 上 (ちくま学芸文庫) 作者:カントーロヴィチ 筑摩書房 Amazon 王の二つの身体 下 (ちくま学芸文庫) 作者:カントーロヴィチ 筑摩書房 Amazon 中世政治思想史の名著を復刊のタイミングで読む。読んだことには読んだのだが、20世紀前半の知識人…

張源『茶録』/ 許次ショ『茶疏』

明代二大茶書 張源『茶録』・許次ショ『茶疏』 全訳注 (講談社学術文庫) 作者:張 源 講談社 Amazon 16世紀・17世紀、中国の明代に書かれた煎茶道のHowTo本を読む。ひたすら、どこそこの茶は美味い、茶はどうやって煎れるべき、また栽培や収穫のタイミングな…

『西遊記』

西遊記〈上〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon 西遊記〈中〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon 西遊記〈下〉 (福音館文庫 古典童話) 作者:呉 承恩 株式会社 福音館書店 Amazon およそ1年ほど…

片岡一武 『ゼロから始めるジャック・ラカン: 疾風怒濤精神分析入門 増補改訂版』

ゼロから始めるジャック・ラカン ――疾風怒濤精神分析入門 増補改訂版 (ちくま文庫 か-86-1) 作者:片岡 一竹 筑摩書房 Amazon 単行本ヴァージョンでもあまりの明晰さに大きな感銘をうけた「シン・ラカン入門」的な著作が文庫化されてさらに良くなっている印象…

三浦哲哉 『自炊者になるための26週』

自炊者になるための26週 作者:三浦哲哉 朝日出版社 Amazon 「自炊者」。聞き慣れない言葉だが、端的に「自炊をする人」と理解しようとすると、自炊への入門、導入を誘うテイである本書はかなり奇特な内容だと思う。料理の入門書、であるならば、包丁の握り方…

浅田彰 『構造と力: 記号論を超えて』

構造と力-記号論を超えて (中公文庫 あ 51-2) 作者:浅田 彰 中央公論新社 Amazon 世の中にはさまざまな概要書・入門書の類があるけれど、大きくは、縦方向の解説と横方向の解説、というふたつに分けられると思う。前者は概念や仕組みを詳しく、丁寧に語り直…

2023年に読んだ本を振り返る

片岡一竹 『疾風怒濤精神分析用語辞典』 - sekibang 3.0 福尾匠 『日記〈私家版〉』 - sekibang 3.0 松原岩五郎 『最暗黒の東京』 - sekibang 3.0 向田邦子 『阿修羅のごとく』 - sekibang 3.0 松本卓也 『人はみな妄想する: ジャック・ラカンと鑑別診断の思…

『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン——大いなる探究の現在地』をご恵投いただきました!

現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン——大いなる探究の現在地 作者:山極寿一,佐藤勝彦,中村桂子,永井均,三牧聖子 青土社 Amazon 小田部・山内論考に挟まれて、それらと比べて即死の出来だったらどうしようかと心配したものの・・・、なんとかなっ…

『口訳 古事記』

口訳 古事記 作者:町田康 講談社 Amazon 町田康による『古事記』の現代語訳……現代語? いや、公共の電波にものらない土着的な関西弁で話す神々が登場するこの訳を現代語と言って良いものなのか。わからないが面白い。町田康と岸本佐知子による対談でも語られ…

桑瀬章二郎 『今を生きる思想 ジャン=ジャック・ルソー: 「いま、ここ」を問いなおす』

今を生きる思想 ジャン=ジャック・ルソー 「いま、ここ」を問いなおす (講談社現代新書) 作者:桑瀬章二郎,ジャン=ジャック・ルソー 講談社 Amazon 最新のルソー入門書。ルソーの生涯をたどりながら主要著作の解説とその思想を紹介しており、その解釈につい…

ジャン・スタロバンスキー 『モンテーニュは動く』

モンテーニュは動く 作者:ジャン スタロバンスキー みすず書房 Amazon 同じ著者がルソーを扱った『透明と障害』は難しくて途中で読むのを諦めたのだが、モンテーニュを扱ったこの本は最後まで読み通せた。38歳で隠棲してから死ぬまで『エセー』を書き続けた…

安達裕哉 『頭のいい人が話す前に考えていること』

頭のいい人が話す前に考えていること 作者:安達 裕哉 ダイヤモンド社 Amazon 部下の代わりに読むビジネス書のシリーズ、的なもの。課題を整理する方法や、良いコミュニケーションをとるための大原則的なものがわかりやすく説明されていて良い本なのだが、そ…

今井むつみ・秋田喜美 『言語の本質: ことばはどう生まれ、進化したか』

言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか (中公新書) 作者:今井むつみ,秋田喜美 中央公論新社 Amazon 話題書。人間の言語習得プロセスでは、その初期にオノマトペが重要な働きを成すこと(オノマトペが感覚/認識と記号を結びつけて理解する「記号接地」…

ノーバート・ウィーナー 『サイバネティックス: 動物と機械における制御と通信』

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫) 作者:ノーバート・ウィーナー 岩波書店 Amazon 古典に触れていると「こういうのを書ける人って今はいないんだろうなぁ」という感嘆を覚えることがあるが『サイバネティックス』もそ…

マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか: 市場主義の限界』

それをお金で買いますか 市場主義の限界 作者:マイケル・サンデル,鬼澤 忍 早川書房 Amazon 原題の副題は The Moral Limits of Markets 、つまり、市場における道徳的な制限、であり、邦題の副題だとなんのことだかよくわからない気がする。お金をインセンテ…

ベンジャミン・ピケット 『ヘンリー・カウ: 世界とは問題である』

ヘンリー・カウ ― 世界とは問題である 月曜社 Amazon 個人的な思い出話から書きはじめる。2002年の夏、高校で心血を注いできたオーケストラ部の最後の定期演奏会にバスーン奏者として出演し終えた翌日、だったと思う。同じ部活の2つ上の先輩を頼って、受験し…

虎屋文庫 『ようかん』

ようかん 作者:虎屋文庫 新潮社 Amazon 羊羹でおなじみの虎屋の資料室部門、虎屋文庫による羊羹本。500年以上続くと言われる社史も読みごたえがあるが、全国の美味しい羊羹や変わり種、羊羹に使われている材料、そして羊羹の歴史をひもとく羊羹好きにはたま…

『日本の昔話1 はなさかじい』

はなさかじい (日本の昔話 1) 作者:小沢 俊夫 株式会社 福音館書店 Amazon 福音館のハードカバー本(全5巻)。全体では301話の昔話が収録されているらしいのだが、この一巻目では年明けから春に関連した話を中心に収録しているらしい。子供(6歳)を寝かしつ…

坂本龍一 『坂本図書』

坂本図書 バリューブックス・パブリッシング Amazon 坂本龍一には現代思想やニューアカ的なものに傾倒していたイメージがあったが、それだけでなくかなり広範な領域をカヴァーしていたことがわかる。さすが、編集者の息子、って感じだし、読書好きなアーティ…

土井善晴 『味つけはせんでええんです』

味つけはせんでええんです 作者:土井善晴 ミシマ社 Amazon 土井善晴先生の新刊。帯に「雑文集」とあるが話題がとにかくころころと転がっていく、変わっていく。しかし、その自由な流れがいわゆるフローに入っているようで(その変化は本書でも名前がでてくる…

東浩紀 『訂正可能性の哲学』

訂正可能性の哲学 ゲンロン叢書 作者:東浩紀 株式会社ゲンロン Amazon 続・『観光客の哲学』的な著作。全体は大きくふたつに分かれている。前半部分では『観光客の哲学』で不十分なまま終わっていた、友敵理論、こっちにつくのか(友)あっちにつくのか(敵…

東浩紀 『観光客の哲学 増補版』

観光客の哲学 増補版 ゲンロン叢書 作者:東浩紀 株式会社ゲンロン Amazon 2017年に出た本の増補新版。 この年はほかにも面白い人文書がいろいろあったと記憶している。当時の感想を読み直すと相当感銘を受けているが、今なお本書の議論は面白いと思うのだが…