sekibang 3.0

読んだ本などの記録

こどもが生まれてからのこと

https://www.instagram.com/p/BZGvfSeBtnx/

長男が生まれて8週間が過ぎた。

3636gで生まれた息子は、いま、推定6700gに成長していて、生まれた瞬間の写真と今の写真を見比べるとまるで別な生きものみたいでびっくりする。笑ってしまうぐらい月並みな言葉だけれども、子供の成長って速い。一度に飲む母乳の量が増えたり、泣き声が大きくなったり、出せる声の種類が増えたり、どんどん息子は成長・変化していくし、どんどん大きくなる。でも、彼が肺呼吸をはじめてまだ8週間しか経っていないのだ。それもまた驚きだ。

子供が生まれると驚くことが多い。今日は、はじめて湯船にいれてあげて、お湯にぷかぷかと浮かぶ姿に驚きながら爆笑してしまった。どういう仕組みなのか皆目分からない(ググればすぐ理由がわかるのだろうけれど、あえて調べないでおこう)し、とにかくぷかぷかしているのが可愛い。それから息子に話しかけている妻の優しい声色にも驚いてしまう(わ、すごい、お母さんだ、と)。そういう驚きをもってやってくる妻と子供の姿を見ていると、お父さん、頑張るね、と思う。

そんな感情が芽生えるようになったこと自体も、やはり驚きのひとつであって、相変わらず、政治とかよくわかんないし、なるべく関わりたくないと思っているのだが「息子の世代の世の中が、今より最悪になってて欲しくない!」と切に願うし、子供が生まれたら他所の子供も可愛く感じるようになった(もちろん、一番可愛いのは自分の息子だ)。

こうして文章に書き出してみると、こうした変化は、概ね一般的な「子供が生まれた家庭(父・母)」に見られる現象に違いない。人類にとってはこれっぽっちも意味もない変化。「子を産んで育てる」というライフスタイルを選択し、その型へと同化しているだけ、とも言える。けれども、いまはその型に同化する楽しさを目一杯享受したい、と考えるモードに入ってきている。「子供が大きくなったらキャッチボールがしたい」、「子供が20歳になったら一緒に居酒屋にいきたい」、そういうありきたりな希望を口にしたい。

そもそも、自分は「お父さん」になってみたかったのだった。そして、現在進行形で「お父さん」になりたい、と思っている。

今後もひきつづき、この「iwannabeyourfather」というカテゴリーで、育児日記的なものを書いてみようと思う。これはもちろん、プリンスの大名曲のもじりだ(息子が生まれた7月21日が、プリンスの月命日、亡くなってから1年と3ヶ月にあたることには、いま気づいた)。世の中の父親に対するなんらかのメッセージを出すつもりはないし、書く必然性も需要もない文章だが、自分が父親であることを反芻するために書いていく。

https://www.instagram.com/p/BZGD4P4BIxw/

本当は「そのうち、育児漫画で一財産築いてやりたい」という野望が胸中でギラついているのだが……。

東浩紀 『ゲンロン0: 観光客の哲学』

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

 

これまでの著者の本は、『郵便論的、存在論的』は学生時代に卒業論文を書きなが読み、良い本だなぁ、機会あればまた読み直したいな、と思い続けているし、『動物化するポストモダン』や『ゲーム的リアリズムの誕生』は(これまた学生時代の話だが)21世紀初頭に盛り上がった(盛り上がっていたよね?)ポストモダン論の最後の輝き的なものとして、もはや懐かしい本である。振り返ったら結構チェックしている。のだが、2011年3月以降はなんだかよくわからなくなってしまっていて、Twitterでよく炎上している人、もはや興味なし、って感じであったのだ。

で、ここにきて再び、その著作を紐解こうと思ったのは、これまたTwitterでの炎上がわたしのタイムラインに流入してきたことがきっかけで(わたしのTwitterは、なんかめんどくさいインフルエンサー的アカウントを積極的にミュートしているので、そもそもTwitter論壇的なものに触れるきっかけってないのだけれど)。著者が「今の政治かなにかの話で対立する党派のどっちも嫌だよ! どっちも最悪! 選びたくない!!」みたいなことを投稿していて、それに対してアイドルかなんかが「仮にも文章で飯食ってるオトナが、そんなこと言ってるのはダセエ。ガキかよ。オトナならちゃんと世の中にコミットしろよ」みたいに批判していたのを目にしたのだった。

その前に著者はこの本を「A派なのか、B派なのかという政治主張に対してどっちか選ぶことに戸惑ってる人・居心地の悪さを感じている人」向けの本と紹介していた、と思う。これも(ファッション雑誌のクリシェを使うと)「今の気分」だった。そうそう、原発推進なのか反原発なのか。リフレなのか緊縮なのか、改憲なのか護憲なのか、親韓なのか嫌韓なのか、どっちか選ばなくちゃいけないんじゃないか、という空気感ってあるし、主義Aの人が対立する主義Bの人を明確に敵扱い、かつ、バカ呼ばわりしているのを目にする。

これに対して、わたしやわたしの友人の数人は、どっちでもないし、選べない。だから選ばない、っていうスタンスにいる。そういうスタンスを時たま表明すると「選挙にはいくべきだよ」とお説教されたりして、著者が指摘する居心地の悪さには共感するものがあった。なんらかの主義をお持ちの方にとっては、選ばない人たちも敵扱い、みたいな感じもなんか嫌だ。

で、先に紹介した「選ばないのはガキ、オトナならコミットメントしろよ」という批判。まさにコレは本書で批判的に扱われている近代的な政治論・社会論のひとつのかたちであって、著者からすると「そうそう、お前みたいなのを俺はこの本で批判しているんだよ」というところだったんだろう、と思う。人間は社会にコミットすることではじめて大人になる的な政治観・社会観。これに対して、著者は、そういうのはもう限界なんじゃないのか、もっとユルい感じ、観光客みたいにコミットしないし、なんの責任もない、けれどつながる、みたいな社会の形ってないのか、と模索している。

これね、やっぱりグッときましたね。おお、東浩紀、すげーな、タダモノじゃねーな、って阿呆のような感想しか出てこない。けれども、今の世の中、居心地悪いな、って感じる同世代の人には、わたしと同じように「アクチュアルな本だな」って思うんじゃないか。書き方がまた上手で。サブカルチャーや情報技術の術語を使いながら、腹に落ちるように、やさしく書かれている。

2017年8月に聴いた新譜

8月も怒涛……もはやこれが通常運転なのかも。8月は一度も飲み屋に立ち寄ることなく過ぎ去った。

エイリアンズ (Lovers Version) 12

エイリアンズ (Lovers Version) 12"シングルレコード[Analog]

 

今月はなんといっても堀込泰行のシングル。リリース翌日ぐらいにリリースを知り、あわててAmazonで買おうとしたらファーストプレスはすでにプレミアがついており、慌ててタワレコを確認して渋谷店のラスト1枚をゲットしたのだった。


堀込泰行 - エイリアンズ(Live 2016 at 大阪umeda AKASO)

ライヴではすでに披露されていた「エイリアンズ」のダブっぽいヴァージョン。Apple Musicでも聴けたので、通勤退勤時に無限リピート聴きまくっていた。

Angles [Analog]

Angles [Analog]

 

ホアン・アトキンスとモーリッツ・フォン・オズワルドのシングルも良かったですね。これは息子と一緒に聴いたりしていた。変態っぽいミニマルテクノを聞かせると大人しくなる。

Quebranto

Quebranto

 
Recanto

Recanto

 

ブラジルの天才ギタリスト、ヤマンドゥ・コスタの関連作が2枚。「Quebranto」は同じブラジルのギタリスト、アレッサンドロ・ペネージとの共作。この人のデュオ作って面白いものが多くて、今回もホットな内容。「Recanto」はリーダー名義のソロ・アルバム。アルゼンチンのモダン・フォルクローレ好きにも受け入れられそうな、オシャレな曲が多数収録されている。

VERSUS [輸入盤CD] (IF1042)_436

VERSUS [輸入盤CD] (IF1042)_436

 

カール・クレイグのオーケストラとのコラボレーション作をまとめたアルバム。結構クセになる作品で、高度なことが試されているわけではないのだけれども、オーケストラを使って新しい音を生み出している感じはすごくある。

ACROSS THE MULTIVERSE [LP] [Analog]

ACROSS THE MULTIVERSE [LP] [Analog]

 

LAを拠点に活動しているSSW、デント・メイ。この作品で初めて知ったのだけれど、なんでだれもこの人のことを教えてくれなかったんだ、ってぐらいに、わたし好みのアーティスト。西海岸サウンド、というか、猛烈なブライアン・ウィルソンフォロワー臭。あらがえないです。これはアナログで聴きたくなって注文。 

Traffic Lights

Traffic Lights

 

イギリスの新人。トラックは、The InternetとかUKのモダン・ヒップホップ、あるいは今様R&Bの潮流に乗っかっている感じなのだが、声が可愛い。良いです。


Ruby Francis - Fall Asleep

Girl Disrupted [Explicit]

Girl Disrupted [Explicit]

 

松尾潔が今年の暫定ベストアルバムにあげているアメリカの女性SSWのファースト・アルバム(といっても、彼女のキャリア自体はすでに長い)。これまた今様R&Bって感じなのですが、良い歌心をお持ちであるなぁ、と。

Heritage

Heritage

 

クラブ・ジャズ界隈で活動していたquasimodeのピアニストのソロ・プロジェクト。何度か同じような感想を書いていると思うのだが、日本の「クラブ・ジャズ」が持つ絶妙なダサさが苦手で、quasimodeも全然聴いてなかったのだが、このアルバムは、ロバート・グラスパー系列感がすごく感じられて、言うなれば「Jジャズ感」がなくて良かった。

Elephant and a Barbar

Elephant and a Barbar

  • Ichiro Fujiya & Takeshi Kurihara
  • ジャズ
  • ¥1500

日本のジャズではJazztronik関連ミュージシャンによるこちらのアルバムも良かった。

Spectrum

Spectrum

 

こちらも松尾潔のラジオで知ったイギリスのSSW。衝撃を受けました、え、これ、男性シンガーかよ、と。声域的にはカウンターテナーなのかな。プリンス、マクスウェルやジョージ・マイケルの影響を受けている、ということなのだが、なるほどね、と思う。こういうの聴いちゃうと、もう新しいロックとかは良いかな……R&Bだろ、って思う。


Until The Pain Is Gone (Live London Session)

Can We Talk

Can We Talk

 
Freudian

Freudian

  • Daniel Caesar
  • R&B/ソウル
  • ¥1350

若い男性R&Bシンガーでは、トーン・スティスとダニエル・シーザーのアルバムも良かった。

ウラジーミル・ソローキン 『23000』

23000: 氷三部作3 (氷三部作 3)

23000: 氷三部作3 (氷三部作 3)

 

「氷3部作」の完結編。『氷』、『ブロの道』で語られたすべての秘密の顛末がここで語られる。金髪碧眼の人間のなかに紛れ込んでいる「光の兄弟たち」、宇宙から飛来した氷で作られたハンマーで心臓を殴打されると彼らは目覚める。23000人の光の兄弟たちがついに目覚め終え、結集すると……どうやら地球が破滅するらしい、というストーリーはエヴァンゲリオン人類補完計画を彷彿とさせるのだが、本作では、暗躍する光の兄弟団の物語と、彼らに誤って拉致され心臓を殴打された被害者たちが、兄弟団の謎を解き明かすために立ち上がる、という二つの物語が対位法的に進行する。

兄弟団と被害者たちの対峙は、『MMR』的な陰謀論との対峙であって、それは「9.11」以降、という感じがするけれども、全体的には「グローバリズムの世界の話だな」という印象がとても強い。兄弟たちを目覚めさせる氷のハンマーは、フィンランドにある工場で中国人労働者たちの手によって製造され、また、ハンマーの部品は中国の工場で製造されている。光の兄弟団たちの触手がいたるところに、権力だけでなく、経済的にも伸びているのがかなり緻密に書き込まれている(北半球しかでてこないのは意図的なのか……?)のが面白かった。

最後まで「これはどっちに転ぶんだ……?」と予測がつかないエンターテイメント・スリラー。クリストファー・ノーランあたりが監督しているハリウッド映画みたい。日本も舞台になっていて「仕事の前にはナンパしたコギャルの耳に射精するのをルーティーンとしている殺し屋」というキャラクターもでてくる。このあたりはスティーヴ・エリクソンも彷彿とさせるんだけれども、エリクソンみたいなややこしさがソローキンにはない。

関連エントリー 

sekibang.blogspot.jp

sekibang.hatenadiary.com

國分功一郎 『中動態の世界: 意思と責任の考古学』

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
 

ものすごく暴力的にざっくりと要約するのであれば

  • 人間のふるまいってだいたい能動と受動の2つにわけられるけれども、はっきりしないこともあるよね(カツアゲされてお金を差し出すのは、果たして能動? 受動)
  • 能動は自分の意思によってされているとみなされ、自分の意思が働いているから、そこには責任がともなう、とされている。でも、行動って100%が自分の意思によっておこなわれてるんだろうか

……などのテーマを「言語には能動態と受動態ってものがあるけども、今は忘れられた中動態っていうのがあって、それを使うと良い感じで表現できそうだぞ」というアイデアをもとに迫っていく本。大変に面白かったし、良い本だと思う。

まず、良いのは記述のやさしさ。だいたい英語の文法を普通に学んだ高校生でも頑張れば読めるであろう。あと、この本の、中動態っていう未知の概念を使って、表現しにくかったものが表現されていくっていうプロセスは、ザ・哲学って感じで。ガチ哲学系の本ってかなりひさしぶりに読んだけれども、言葉によって世界が拡張されていく感じ、とでもいうのか、刺激的だな、って思った。「こんなのタダのことば遊びじゃないの?」と冷めた高校生なら言うかもしれないけれども。

著者が一時期夜のニュース番組でコメンテーターをやっていたときに「この人は姜尚中の後釜を狙っている知識人タレントなのかな……?」などと思っていたのだが、こんな筋肉質(だが、読みやすい本を書く)人だったとは、と思って自分のなかの評価がガラリと変わった一冊である。あとがきに書いてある本書執筆の経緯なんか、古典ギリシア語を学び直した、とか、スピノザラテン語で暗記しようとした、とか、努力の証が開示されていて感激する。

2017年7月に聴いた新譜

7月も結構怒涛で、いつこの流れが途切れるのやら……という感じだったし、家族が増えるなど色々と変化があった。

Negicco 2011~2017 -BEST- 2 [CD+Blu-ray Disc]

Negicco 2011~2017 -BEST- 2 [CD+Blu-ray Disc]

 

そんななかNegiccoの2枚目のベスト盤がやはり最高で。新曲1曲、初音源化1曲を含んでいるのだが、新曲はKIRINJI、初音源化曲はHomecomingsが提供している、というなんとも俺狙い撃ち的なものであってナイス。過去の曲も全体的に音圧があがって音が良くなっている(特に「アイドルばかり聴かないで」は劇的に良くなっている……!)ので、すべて新曲のような感覚で聴けるほど。特典でついてくるライヴBDも内容が素晴らしくて……。Negicco、まずはこれを聴いてくれ、と思う。8月にアナログがでるのだが、今それを買うかどうかめちゃくちゃ悩んでいる。


Negicco「愛は光」(作詞・作曲 堀込高樹、編曲 KIRINJI)

パープル・レイン DELUXE-EXPANDED EDITION

パープル・レイン DELUXE-EXPANDED EDITION

 

プリンスの『Purple Rain』リマスターも楽しみにしていたアイテム。ファン向けのアイテムには違いなく、そもそも『Purple Rain』って個人的にそんなに好きなアルバムじゃないから、そこまで衝撃を受けなかったんだけれど、アンドレ・シモンに提供した「Dance Electric」のプリンス・バージョンなど未発表音源が聴けて楽しい。あと、これもライヴDVDがついてくる。あまり画質も音質も良くないんだけれど、プリンスのセンス爆発の演出が最高で、生前に一度もライヴを見れなかった自分としてはグッときた。とくにプリンスがギターのネックを激しくコスると、ヘッドの先から液体がピューッとでるシーン。

Mellow Waves

Mellow Waves

 

Corneliusは11年ぶりでしたか……。METAFIVEでの活動やしょっちゅういろんな人のライヴに参加したりで、なにかしら姿形を見ていたから全然久しぶり、って感じがしない。音と音の隙間、構成で魅せていくところは前作を踏襲した感じがあるが、今回注目すべきは、音の質感で、とくに冒頭の「あなたがいるなら」のギター・ソロに顕著だけれど、ギターだけやけに生々しい、というか、空気の存在を感じる音で録音され、周りのペカペカした超クリア、超ハイファイな音とのものすごい差を感じる部分、これが面白かった。畏友、tmymさん(a.k.a メロウ番長)ともやりとりしたのだが「小山田圭吾までメロウって言い出して、やっぱ、時代はメロウだよな」と。

なぎ

なぎ

 

あと7月は環ROYの新譜を繰り返し聴いていた。名前は知っていたが、ちゃんと聴いたのは本作が初めて。日本人ラッパー、なのだが、この人の書くリリックの世界観やリズム感は、ヒップホップ、という感じではなくて、佐野元春と隣接するように思っていた。ビッグヒットなキラーチューンが含まれているわけではないのだが、アンビエント的なトラックも心地良くて、自然と聴く回数が多くなった。まぁ、疲れていたんだな、と思う。Corneliusも、環ROYも、なんとなく聴き流してても気持ちよい音。

リラックス

リラックス

 

4月に出たドメニコの新譜はピンとこなかったが、カシンの新譜は良かった(そういえば昨年のカエターノ・ヴェローゾの来日の際にも、彼の姿を見かけたな)。2000年代以降に活躍しはじめた「MPB新世代」のなかでも、この人のプロデュース能力やセンスは群を抜いている、と改めて。「Something Stupid」のポルトガル語カヴァなど、坂本慎太郎のソロにも通ずる音。

日韓台米混合のアイドル・グループ、TWICEの日本デビュー盤。最高ですよね、これ。ヒット曲「TT」をすでに聴いていたので「え、日本デビューまだだったの」という感じだけれども。日韓で歌詞の内容に違いがあるかどうかまで確認してないのだが、やはりヒット曲「TT」が良い曲すぎて。改めて、恐ろしいグループだな、と思った次第。成熟したパフォーマンス、で、歌詞は幼稚とも言えるほどガーリー。この落差はつんく♂中田ヤスタカばりの発明。このコンセプト、天才すぎる。


TWICE「TT -Japanese ver.-」Music Video

MOVE YOUR BODY

MOVE YOUR BODY

 

世界的なブギー・ムーヴメントの最中、注目を浴びる日本人ビート・メイカーのファースト。いや、これすごいな、と。今が2017年で、21世紀で、3年後には2回目の東京オリンピックが控えているとは思えないほど、燃え上がるようなブギー / ディスコの音で、言うなれば、アナクロニズムなのだけれども、めちゃくちゃカッコ良い。ジャケットのエッチな雰囲気も含めて最高。

音楽と私(限定盤)(DVD付)

音楽と私(限定盤)(DVD付)

 

原田知世のセルフカヴァ。伊藤ゴローのプロデュースがいい仕事、って感じで呉田軽穂がどんだけ良い曲を書きまくっていたか、を主に再確認した。

アーキテクト・ジョビン

アーキテクト・ジョビン

  • アーティスト: 伊藤ゴローアンサンブル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

伊藤ゴロー仕事でもう一枚。ジョビン名曲集。伊藤ゴローのブラジル音楽リスペクトものって、なんかキレイにまとまりすぎる感じがしてそこまでハマれてなかったのだが、これは大変に良かった。全編、クラシックの室内楽風のアレンジで演奏されているのだが、とくに「Luiza」(ジョビンが愛娘に捧げた大名曲)における遠藤真理(チェロ)と村治佳織(ギター)の演奏が美しすぎる。聴いていると、ジョビンがどれだけドビュッシーラヴェルといった印象派の作曲家に影響を受けていたのかを再確認することもできる。

Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]

Sounds of Crenshaw, Vol.1 [日本語解説つき]

 

テラス・マーティンの新プロジェクト。自身名義によるアルバムも最高にメロウでシャレオツだったけれども、こちらも最高。30歳過ぎたら、メロウに行かなきゃね、と再確認する。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンなど著名なジャズ・ミュージシャンが参加。アナログで出て欲しいな。

MANIJU(通常盤)

MANIJU(通常盤)

 

佐野元春の新譜、これは快作だなぁ、と。よくこんなカッコ良い日本語を思いつくよなぁ、と感心しまった。いまだに日本語ロックの可能性を広げてくれるようなアルバム。日本語でディランみたいな言葉の乗せ方を自然に実現してたりして。

新譜ではないけれど、佐藤博の『awakening』もよく聴いた。美容室で読んだ雑誌で藤原ヒロシだったかが紹介していたので聴いて見たんだけれども、今聴いても全然古びてないし、むしろ、今聴くのにすごく良いアルバム。 

「江戸博物文庫」シリーズ

江戸博物文庫 鳥の巻 ―――天地を舞う

江戸博物文庫 鳥の巻 ―――天地を舞う

 
江戸博物文庫 花草の巻 ―――四季を彩る

江戸博物文庫 花草の巻 ―――四季を彩る

 
江戸博物文庫 魚の巻―――水界の王族たち

江戸博物文庫 魚の巻―――水界の王族たち

 
江戸博物文庫 菜樹の巻―――恵みの稔り

江戸博物文庫 菜樹の巻―――恵みの稔り

 

書店でたまたま見かけて思わず全巻その場で買い求めてしまった本。ふだん読んでいる本のカテゴリー的なところからすると意外に思われるかもしれないが、これまで工作舍の本を熱心にフォローしてきてないわたしであるけれど、これは大変素晴らしいシリーズと思った。

18世紀末から19世紀のなかば、江戸時代後期に描かれた博物学的な図を、特定のテーマで集めて、それぞれに気の利いた短いコメントがついている。ただ、それだけの本なのだけれども、パラパラとめくっているだけで、ほわわ〜んと楽しくなってくる本である。読んでいて、そういえば子供の頃、図鑑を眺めるのが好きで、飽きずに何度も読んだっけ、と童心を思い出しつつ、こういう本を楽しんで今も読んでいる、つまりは三つ子の魂百まで、的なことわざを強烈に意識せざるをえない。

とりわけ「鳥の巻」を興味深く読んだ。扱われている鳥たちには、日本で見ることのできる種類だけでなく、東南アジアやニュージランド、あるいは中東やアフリカで見られる鳥も含まれている。これらは観賞用や愛玩用に珍妙な姿形をした鳥たちが輸入されていたという事実にもとづいている(生体だけでなく、剥製も輸入されていたという)。「江戸時代 = 鎖国」的なイメージをもっていると、こうした外国からの流入物が少し意外にも感じられるところであろう。

ただ「日本には好奇心と美意識、アートとサイエンスが一体となっていた幸福な時代があった」というキャッチコピーはいかがなものか。まるでこうした芸術と博物学の融合体的なヴィジュアル文化が日本固有のもの(日本文化はすごい!)と煽るかのようだが、有名なものであれば、ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテの『バラ図譜』のような例があるし、そもそも、日本の絵画史に写実的な表現がもたらされたのには、中国の沈南蘋の影響や、西洋の銅版画のインパクトがあったはずである。

つまりは、根元には海外からの文化の流入が存在しながら、独自の文化が育まれていったわけであって、ちゃんとこのへんの歴史的な経緯を掘り返したほうが、当世のグローバリズム的な時流に乗っかっているのではないか、と思う。世界のなかの江戸の文化、みたいな感じで。

ぶつくさと書き連ねたが、大変良いシリーズなので、ぜひバカ売れしてこの先も続刊が出て欲しいものである。新書サイズで場所を取らないのもグッド。