おどろくように軽い文体で語られる、センス、ここではあらゆる芸術作品(あらゆる、だ!)の見方・味わい方を「センス」と呼んでいるのだが、の入門。千葉雅也の著作のなかでも最も軽く、難しい話が排除されている本に思える。センスが語られる際に、なんらかの芸術に語ろうとする際にまずもって触れられるだろう歴史やコンテクスト、つまり、教養を身に付けて、それらの対象にアクセスしましょう、という見方を二の次に置いていることも関係している。適宜、現代思想や美学の概念や理論が参照されるものの、日常の言語によって構造的な読解、そして制作への態度が示される。ラカンの精神分析に寄りかかって語られるところも多いのだが、主体の特異性を承認していくような最後も鮮やか。