不干斎ハビアンの名前を知ったのは、平岡隆二さんの研究がきっかけだったと思う。16世紀から17世紀の、元禅僧でありながらイエズス会修道士となった日本人で、当時の日本で信仰されていた各種の宗教を批判的に比較し、キリスト教を広めようとする著作『妙貞問答』を記したが、その後、棄教して今度は逆に反キリスト教の立場から批判書『破堤宇子』を記した人物。本書『不干斎ハビアン: 神も仏も棄てた宗教者』は、そのハビアンを扱った一般向けの本。著者は現役の僧侶で、大学の先生。
先に全体的な評価をしておくと、この本、結構期待して読んだんだけど、あんまり面白くなかった。ハビアンの人となりを分析する箇所で「わたしも宗教者だから気持ちがわかるんだけども」みたいなノリでプロファイリングに入ったり、突然ベイトソンへの言及があったり、内田樹を引用してみたり(あとで調べたら、著者は内田樹と親しい人物だったらしい。先に知ってたらこの本、読まなかったかも)、悪い意味で(?)一般人向けの本、っていうテイストで。大学の先生がこういうモードの本でやらかしがちな、全然面白くないユーモアも随所に挟まれている。そういうのすごく苦手。研究書の体裁でもなければ、一般向けにもアピールできてない中途半端な本。
『妙貞問答』と『破堤宇子』の内容を見ていく部分も、結局、仏教からキリスト教にいって、そのあとまたキリスト教を捨てちゃう、っていう特異なプロフィールを持つ歴史上の人物のメンタリティがどんなもんだったのか? をテクストのパッチワークで作ってるような感じ。これならハビアンの著作を直接読んだ方が面白いんではなかろうか……。