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文化的消費活動の日記

佐々木拓郎 『データを集める技術 最速で作るスクレイピング&クローラー』

 

データを集める技術 最速で作るスクレイピング&クローラー (Informatics&IDEA)

データを集める技術 最速で作るスクレイピング&クローラー (Informatics&IDEA)

 

 ひさしぶりに技術書を。スクレイピング(= Webサイトから情報を抽出すること)とクローラー(それを自動でやってくれるプログラム)をVBAなど会社勤めの非プログラマーが使える「普通の道具」を使って作る、という本。仕事で定期的にWebサイトを見にいって、アレコレするルーチンワークがあり、これでなんか効率化できるかなぁ、と思って買ってみた。結果、あ、これ、今解決したいことには使えないわ、ということが5分ぐらいで判明したんだけれど、そもそも、VBAIEを操作できる、っつー本書の基本的な部分についてまったく知らなかったので勉強になった。

相当な初心者目線で書かれている。ExcelVBAの開発タブを表示するには、という話から始まるぐらいなので、そもそもWebサイトのHTMLがどのようにして書かれているのかがわからない人にも充分理解できるレベルとなっている。親切。親切すぎて、そこそこVBAを書いたことがある、という人にとっては不要な内容も含まれているので、そこは不満になるかも。

昔、PythonとGAEを使って成田空港にある銀行の為替レートを拾ってきてDBに溜め込む、みたいなプログラムを動かしていたことを思い出した。よくわからずに適当に書いてたので、こういう本を読んでスクレイピングの基礎的な部分を理解しておけば良かったな、と今になっては思う(いま、プログラマーでもシステムエンジニアでもないから、技術を身につけておく必要性もないんだけれど)。

寺尾隆吉 『ラテンアメリカ文学入門: ボルヘス、ガルシア・マルケスから新世代の旗手まで』

 

 昨年末に山形浩生さんが紹介していた本。気になって読んでみたのだが、たしかにこれは良書。ラテンアメリカ文学を読んだことない方、『百年の孤独』は読んですげえ好きだけど、そのほかは読んでない方、あるいは結構読んでる方、さまざまにオススメできる。ラテンアメリカで小説が書かれるようになるまでの言うなれば文学の原始時代的なところから、それぞれの国の文化や社会情勢、そして出版社や編集者(あるいは読者層)といった文学が生まれるためのインフラ的な部分まで紹介していて大変勉強になりました。

著者の作家に対する評価もある特定の人に目一杯肩入れするのではなくて、有名な作家(たとえばガルシア=マルケスだったり、ロベルト・ボラーニョだったり)でも「コレは良い本だけど、アレはイマイチ」、「良い本だけど、この部分はちょっと……」とすごくフラットな評価をおこなっている。

政治がらみの部分だと、バルガス=ジョサがなんかの賞をもらったときにカルペンティエールキューバ政府から要請をうけて「賞金と同じ額の金渡すから、ベネズエラのゲリラ・グループに賞金を寄付してくれまいか」と交渉しにいった、とか結構スゴい話が載っている。「マジックリアリズム」の創始者でもあるカルペンティエールは本書では、毀誉褒貶ありつつも重要な立ち回りをしていて、読んでちょっとイメージが変わった。いや、見た目がジャバ・ザ・ハット的なオッサンなんだけれども、見た目通り、ダーティな人だったんだな、と。

70年代のラテンアメリカ文学ブームの作家だと、面白いことが書かれているのは、カルロス・フエンテスフエンテスが『澄みわたる大地』でデビューして脚光を浴びたあと(この人はめちゃくちゃダンディな見た目なんだけど)、女優と結婚したり、オシャレに気を使ったりして、イケイケな感じだった、とか、フランス語と英語が得意だったから、フエンテスラテンアメリカの作家をあちこちに売り込みに行ってた、とか書いてある。あと、ホセ・ドノソも良いキャラに描かれる(人が売れるのが悔しくて、神経症みたいになってた、とか)。

読む人によっては、ちょっとラテンアメリカの作家たちに幻滅しちゃうかもしれない。「文学入門」なら、門戸を広げる意味では、良いことしか言わない、とりあえず褒めておこう、というアティテュードもアリだとは思うんだけど、そういう営業的な嘘をやってない。真面目な本です。

2016年に買って良かったもの

 2016年に買って良かったものを以下に記録。

Kalita 電動コーヒーミル CM-50 (ブラック)

Kalita 電動コーヒーミル CM-50 (ブラック)

 

 ずーっと買おうか迷っていたコーヒーミル、手回し式にしようか、電動にしようか迷っていたが結果的にウチはこれで十分だった。ボタンを押している時間で粉の目の細かさが決ってくるため、毎回同じ細かさで挽くのが難しいのが難点、と言われているが、毎回粉の細かさが違うコーヒーを飲んでいても違いがわからない。とりあえず、挽きたては旨い。安い豆でもそのへんのコーヒーチェーンより美味しい。

 

カリタ コーヒーストッカー400N(容量400g用) #44189

カリタ コーヒーストッカー400N(容量400g用) #44189

 

 買ってきたコーヒー豆を保存するのに専用の容器があったほうが良かった。買ってきたばかりの状態がちょっと長持ちする。

 

 

 イヤホンはこのふたつを購入していた。ハンズフリーのほうは安いので使っている人をよく電車で見かける。前に書いたけども、これ付属するイヤーピースのサイズが微妙で、走ってる時に外れそうになったりするのがちょっと不満だったのだが、ビクターから出てるイヤーピース(買って余ってたヤツ)を試したら、不満が劇的に改善した。密閉性が高まるので、音もすごく良く聞こえるようになる。

 

パール金属 便利小物 くるみ・ぎんなん割り C-3747

パール金属 便利小物 くるみ・ぎんなん割り C-3747

 

 あと秋ぐらいに銀杏割り器を買って、銀杏を買って食べまくっていた。ハンマーでやるよりも楽。銀杏、スーパーで買って自分で煎るなり、レンジでチンするなりすると、飲み屋で頼むのが気が引けるようになる。フライパンを使って煎る場合は、最後に濃い塩水をぶっかけてやると、粉のように細かい塩がまわりにひっついて、料亭で出てくる煎り銀杏みたいになります(湯木貞一の本に書いてあった)。

 

レック 床用 ハンディブラシ ( タイルブラシ バスブラシ )

レック 床用 ハンディブラシ ( タイルブラシ バスブラシ )

 

 年末の大掃除用にホームセンターで見つけたお風呂の床用ブラシ。我が家のお風呂の床タイルは速乾床(カラリ床的なやつですね)なんだけれども、細かい目の部分に茶色い汚れがついちゃってなかなか落ちなくて困っていたのだった。その悩みがこのブラシで解決。毛もかなり強いし、なんせ速乾床対応だから今まで一生懸命ほかのブラシでゴシゴシしていたのが嘘みたいにキレイになった。

 

ナンファー トムヤムペースト 227g

ナンファー トムヤムペースト 227g

 

 これ、すごい。トムヤムクン味覇って感じのプロ仕様調味料。素直にトムヤムクン作るときも一瞬で味がキマるし、味噌汁にちょろっと入れたりしても美味。日清カップヌードルのシーフードに入れると、完全に日清カップヌードルトムヤムクンの味になる。

飲んだ焼酎を淡々と記録するよ。

去年の夏からビールより芋焼酎にハマっていた(糖質オフとか言って)。せっかくなので、こちらもカテゴリーを作って紹介していこう。焼酎は「すっきり」か「まろやか」ぐらいの語彙しかなく、まったくどれがどんな味だったか覚えていない。結局「ぜんぶうまい」みたいなことになってしまう*1

*1:それにしても「淡々と記録するよ」って、ちょっと前のインターネットっぽい語法すぎるな

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レフ・トルストイ 『アンナ・カレーニナ』

アンナ・カレーニナ 全3巻セット (新潮文庫)

アンナ・カレーニナ 全3巻セット (新潮文庫)

 

年末年始にまとまった休暇をいただいたので、長い小説を。トルストイの言わずと知れた大クラシック、文庫本3巻で大体2000ページぐらいある大長編なんだけれども、凄まじく面白くて。トルストイ、すげー、と思った。解説によれば、ドストエフスキートーマス・マンも「完璧」、「非の打ちどころのない作品」と絶賛したという。わかる。長いんだけど、すげえ読ませるんだよ。不倫や事件、ロマンスの予感が仄めかされると、ちゃんとそのあとに、不倫や事件、ロマンスが起きる。「やだな、やだなー」、「怖いな、怖いなー」と読者をライク稲川淳二にさせるような仄めかし、煽りからの出来事(!)の繰り返しが次から次へと起きて、超面白い。

https://www.instagram.com/p/BOzdStLAYE7/

アンナ・カレーニナの人間関係メモ。

普段は、こんなメモを取ることないんだけども、あまりに面白くて、このブログを読んでくださってる方々、皆さんに本書を読破していただきたく人間関係をメモってみた。長いので序盤で諦める方いるかもしれないので、この図が役に立つと嬉しい。すげえいっぱい登場人物がでてきて、脇役も非常に愛らしいキャラが多いんだけれども、基本的なキャラクターは第1編に出てくる彼らだけ覚えておけば良ろしい。これプラス、アンナのダンナさんであるカレーニン(第2編から登場)。逆にさらに削るならば、薄く緑でマーカーを引いた、リョーヴィンとキチイ、アンナとヴロンスキーだけでも構わない。

わたしが素晴らしいな、と思ったのがさ、人間描写の巧みさ、細やかさと「悪人」が出てこないところで。この物語がはじまる一番最初のきっかけを作るオブロンスキーも、浮気はするは、大したことない役人のくせに身の丈に合わない散財を繰り返す困ったヤツなんだけれども、根は良いヤツで憎めないんだよね。アンナの夫、カレーニンでさえそう。出世と世間体にしか興味がなくて、愛を知らない冷徹な人物……として描かれて、半ば悪モノなんだけど、そういう正確になったのにも生まれ育ちの環境があって「んー、人にはなんか色々理由があるんだなあ……」みたいな同情を誘う。

登場人物が敵味方に分かれて戦ってる、とかじゃなくて、一人一人が、みんな、それぞれの善意だったり、ポリシーがあって小説のなかで動いてて。ものすごい群像劇。それをざっくりとまとめるとリョーヴィンとキチイのカップルをめぐる話、アンナとヴロンスキーのカップルをめぐる話に集約される。さながら登場人物の原子がすげえぶつかり合って、いろいろくっついて、ふたつの分子を形成する。この構造がスゴい。

あと、場所の使い方もこの小説はスゴくて。最初はみんなオブロンスキーの浮気問題(離婚騒動)とか、キチイの結婚とかをきっかけにモスクワに集まってくるの。第1編はずっとモスクワでの話。第2編以降は、ペテルブルグだったり、リョーヴィンの領地であるポクローフスコエ村だったり、バーデン(ドイツの温泉地)だったりアチコチを舞台にして、いろんな話がある。一回集まったドラゴンボールが、そのあと、各地に散らばって……みたいな感じ?

とにかくモスクワに一端集結して「うわー、これなんかあるんだろな」って不穏な仄めかしを散々したあとに、アチコチで仄めかされた諸々が起きてエラいことになるんだけれども、ペテルブルグだったら派手な社交界が描かれ(モスクワにも社交界があるんだけど、ペテルブルグのほうが派手。ペテルブルグが港区なら、モスクワは吉祥寺か? わかんないけど)、リョーヴィンの領地なら田園生活が描かれ……って具合に、当時(19世紀末)のロシアの社会全体がここに書かれてるんじゃねーか、ってぐらい、いろんなことが盛り込まれている。ディス・イズ・全体小説。ヤベーっす。

久しぶりにこんな面白い本読んだな、って思ったんですが、たぶん読んだ時期も良かったんだろうな、と。わたし、今度の3月で32歳になるんだけども、オブロンスキーが最初34歳だから(小説のなかでは大体2年ぐらいの歳月が流れる。濃密すぎてすごい長い時間が経っている気がするんだけれども)、ほとんど同世代の人たちの話だったのだ。だもんで、Twitter風の言葉で言うところの「わかりみ」がスゴいあった気がする。

もちろん、今、自分が抱えている悩みが小説のなかにあって共感したわけじゃないんだけど、リョーヴィンが童貞っぽく悶々とするところとか、カレーニンが自分の奥さんを「ん? コイツ、浮気してんじゃねーのか?」と気づいてから「おっし、もう、コテンパンに言い負かしてやるからな」と話を組み立てるんだけど、いざアンナの前に立つと全然考えていたことが言えなくて……みたいなところとかさ「うわー、すげー、なんかわかるわー!」と。

だから、わたしの同世代かそれ以上の年代の友達にこの本読んでほしいっすね。で、感想を言い合いたい。「ヴロンスキーの愛を確認するために、他の男に色目を使うアンナ、めちゃくちゃヤバいよねー!!」とかさ。長いし、高尚な作品として偉そうにしてるような小説なんだけども、昼ドラ的メロドラマが化け物みたいに巨大化した本だと軽く構えて読んでもらいたいものです。

ビール批評 2016年晩夏

最近はビールよりも芋焼酎をいろいろと試していて、進捗がよくない。

https://www.instagram.com/p/BIPER4SDniL/#beercritic The Brooklyn Brewery / Summer Ale あっさりとしたエールでかなり飲みやすい。カットレモンが瓶に刺さってたので、コロナみたいにして飲む。もっとガンガンに冷やして持ってきて欲しかった。

https://www.instagram.com/p/BIzccdYj7hv/

#beercritic サッポロ / カンパイエール サッポロにしては良いかも。非常に滑らかな飲み口で、強く主張する香りはない。極冷えで、ジョッキで飲みたい。

https://www.instagram.com/p/BJEuV9tj_WZ/

#beercritic 福島路ビール / みちのく福島路ビール ピルスナー 期待してなかったが、ボディの豊かさが素晴らしい。これは世界でも戦えるヤツだが、いかんせん値段がやや高。ホップの香りも良いんだけれど、普段飲みではない。普段飲みできるクラフトビールを作ってるところはやはり偉い。

https://www.instagram.com/p/BJEvODoDtOb/

#beercritic キリン / 一番搾り 福島づくり 度数4.5%と軽めにしあげている。「ずっと飲み飽きない」というコンセプト通り、爽やかな味わいが長く続く。軽いけど、味わえる1本。こういうバランス感覚がキリンはとても上手い。

https://www.instagram.com/p/BJ7W99ajNkc/

#beercritic キリン / 秋味 堪能 麦芽をキリンラガーの1.5倍使用したフルボディなビール。度数7%とかなり高め。さすがの出来である。濃い。

https://www.instagram.com/p/BKcnnMoAs-0/

#beercritic Jever / Pilsener 鎌倉で「世界一美味いビール」と謳われていた。たしかにボディとホップのバランスが最高で、美味い。大麦を食べているような力強い味わいがある。

https://www.instagram.com/p/BKnZWjgAvHz/

#beercritic キリン / 十六夜の月 2016 Calypso IPA 去年も飲んだ。柑橘系のポップの薫りが良いが、このぐらいの苦味のものをIPAと呼んではいけない、と思う。あとキリンはもっと攻めて良い。

https://www.instagram.com/p/BKrpxN-geaB/

#beercritic North Coast Brewing / Mosaic Session Ale グレープフルーツのような薫りが素晴らしい。これまで飲んだセッションIPAのなかでも一番かも。キリンもここまで攻めてくれ!

https://www.instagram.com/p/BKrtXJEAoFl/

#beercritic Green Flash Brewing / Soul Style IPA ひょっとしてすでに飲んでるか? これも柑橘系の薫りが素晴らしい く、アフターの深い苦味が長く続く。中重系? グッドです。