sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

大野盛雄 『イラン農民25年のドラマ』

積ん読の古層から発掘された本(買ったのは多摩センターに昔あったブックオフの100円本コーナーだった。なんか創作のネタになるか思って買ったことを覚えている)。著者は人文地理学者で、1964年から25年間にわたって実施されていたイランのヘイラーバードというテヘランから1000km以上離れた農村研究をまとめたのが本書(時期的には井筒俊彦テヘランに住んでいた頃と一部かぶっている、が、本書にはまったく関係ない話)。地味だがなかなか起伏に富んでいる。調査の開始段階では、近代化を進める王政に乗っかって成り上がった人物が、まわりの農民たちが力をつけていくにつれて周りとの軋轢を生むようになり、1979年のイラン革命によって権力構造が大きく一変する……というのが本書のドラマの大筋となるが、中央権力による規制が行き届かなくなった農村では農民たちが勝手に井戸を掘るようになって地域の水資源の枯渇が問題になりはじめる……みたいな話が面白い。