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文化的消費活動の日記

ヒロ・ヒライ(監修) 『ルネサンス・バロックのブックガイド: 印刷革命から魔術・錬金術までのの知のコスモス』

 

ルネサンスバロック時代を取り扱った研究書をおもに紹介しているブックガイド。自分も執筆陣に加わっている。読みながら思い出したのは中学3年生ぐらいに買った洋楽ロックの名盤紹介ムックのこと。わたしは実家にいるあいだそのムックをずーっと大切に読んでいて「あ、こういうバンドもいるのか、聴いてみたいなぁ」とか「これは気になるなぁ」とか気持ちを高め続けていたのだった。

当時はCDを自由に買える身分でもなかったので興味と関心だけが先走ることになったのだが、この本もそういう役割を担ってくれると嬉しい、と執筆者のひとりとして思う。紹介されている本のなかでは、すでに絶版で入手困難なものもあるのだが、だからこそ高まる気持ち、刺激される欲望、というのもあるだろう。トイレに置いて毎日読む、みたいなそういう使い方が良いんじゃないか。

greenfunding.jp

さて、本書の刊行にあたってはプロモーションのためにクラウド・ファンディングが行われた。目標金額の30万円を大幅に上回り、最終的に200万円以上の支援が集まっている。これについて、ずっと気になっていることを書いておきたい。クラウド・ファンディングが盛り上がり、大成功に終わったことは喜ばしい。ただ、そこで集められた資金がなにに使われているのか(今時点で)不明確なのはいかがなものか、と思っている。

クラウド・ファウンディングのページには

この支援金は、『ルネサンスバロックのブックガイド』を広めるための販促費として使用させていただきます。まだまだ多くの人に本書を広めたい、そして復刊費用にも一部を充当

という記載があるが、どういう販促を実施したのか、復刊費用とはどのように使われているのかの説明が不足しているように思われる。収支を全部明らかにせよ、とまでは言わないけれど、なににお金を使っているのか出資者に対する説明責任はあるのでは? リターンに対する費用が実は大きいから大したことはできない、であれば、そう説明すれば良い。なにも説明なし、という状態がスッキリしない。

また、刊行記念のトークイベントが実施されたなら、どのような催しだったのか活動報告のページに報告があって良いと思うのだが*1、とくにそうした動きもないし。監修のヒライさんがFBやTwitterで情報を上げているのは見ているけれど、出版社はなにを? 「盛り上がってよかったですね」と一過性のお祭りで終わらせるのであれば、それで良いんですが、それじゃ、なんかもったいない気がするし、「良書を次世代にも伝えたい」と本当に思っているのであれば、継続したアプローチが必要なのでは、と思うのだった。

*1:工作舎のサイトにはレポートがあるとヒライさんから連絡をいただいた。ヒロ・ヒライさん×山本貴光さんのトークイベント/工作舎