- 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本屋で導かれるようにして手に取った村上春樹訳の『グレート・ギャツビー』。たしか大学2年のときの英語のクラスで「なんでも良いからペーパーバックを1冊読んで感想を書け」という課題があり、無謀にもこの原書にチャレンジした覚えがある。その後、野崎孝の訳で気になる部分だけチェックする、という読み方をしていたのだが、今回「読み直し」てみて、俺はいったいなにを読んでいたのか、という思いに駆られた。んー、すごい小説。比喩の超絶技巧がこれでもかと連続し、まばゆいところはひたすらギンギラに、陰鬱なところはひたすらじっとりと描きこまれていてすごい。
恋愛小説であり、ミステリーでもある。そして、青春小説でもあろう。もちろん、主題のひとつであるギャツビーのもの哀しい虚構性にグッときつつも、語り手であるニック・キャラウェイの目の前でうんざりするような悶着が起こったときにその日が自分の30歳の誕生日に気づくところ。ここがとても良かった。ニックはその瞬間、人生の個人的に節目、というか、青春時代が終わってしまった! みたいな気づきをえる。絶望! かなり大げさな表現だけども、そういう気持ちはわからないでもない。本書の執筆を終えたときのフィッツジェラルドはまだ30歳になっていなかったのだけれども。
そういえば、昨年読んだチャンドラーの『ロング・グッドバイ』の訳者解説で、この小説との関連性というか、親近性について触れられていた。今年は年始に『ノルウェイの森』(この小説が印象的な使われ方をする)を英語で読み直した。『グレート・ギャツビー』のまわりをグルグルとまわっていたのかも。これも完璧な小説だなあ。