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文化的消費活動の日記

宮内悠介 『超動く家にて: 宮内悠介短編集』

 

超動く家にて 宮内悠介短編集 (創元日本SF叢書)
 

こないだギブスンなんて読んでみたのも、本書に収録されている「クローム再襲撃」(村上春樹の文体で「クローム襲撃」をリライトした作品。言わずもがな「クローム襲撃」+「パン屋再襲撃」である)を読んでみたくなったからでもあった。現代日本のSF業界を牽引する作家*1が、思いつきベースで書き進めたネタ小説、バカ小説を集めた一冊である。会話文がボケとツッコミに分かれて描かれるノリが含まれた作品は、まさに同人誌ノリ、という感じで(実際に同人誌に掲載された作品も)、そこはもうめちゃくちゃ苦手なんだけど「宇宙ステーションで野球盤をやる」みたいなハチャメチャな設定でも、ちゃんとした話を成立させててすげーな、と。フィクションの創作行為に、ある一定の形式のなかでやるゲーム性みたいなものさえ感じなくもない。それはまるでコード/モードのルールのなかでどれだけイケているプレイができるか競うような現代ジャズのごとく。

「クローム再襲撃」は、春樹文体で書き直されたことで、原作のちょっと都会的なブルース性、というか、ちょっと冴えない感じ(だけどそこが乗り遅れた青春っぽい感じ!)のエッセンスがより明らかになるような感じがして良かった。

*1:という理解で正しいのか全然わからない