中原昌也の新刊。最近の著作は全然チェックできていなかったのだが、やっぱり最高だよな、と。脈絡のない悪夢のような作品が、連続性がないようでありそうな形で続いていく連作短編集で不穏さがすさまじい。笑わせようとしているのか、単なる文字稼ぎなのか、コピペみたいに同じ文章が利用されている箇所があったりして、それが絶妙なタイミングでくるものだから匠の技のようでもある。すごい。読む現代アート、とでも言うような。いかようにも解釈されうるが、それらをまったく無化してしまうような佇まい。このダルさ、このディストピア模様を平成末期のこの社会からも感じる。
青山真治、小山田圭吾、椹木野衣が巻末に文章を寄せているが、まともに面白かったのは小山田圭吾のみ。残る2名は中原昌也のパスティーシュ、というか、中原昌也に感染して「規定の文字数を埋めた」という感じだが、スベっている。小山田の談話のなかでは「アート・リンゼイが中原昌也を「先生」と読んでいる」という事実が明らかにされ、そのエピソード最高、と思った。