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文化的消費活動の日記

川上未映子 『乳と卵』

 

乳と卵 (文春文庫)

乳と卵 (文春文庫)

 

芥川賞受賞作。今度出る新作『夏物語』は本作の登場人物がでてくる、とのことで予習のために。表題作について。文体は「女の町田康」みたいで、初期のエッセイとの連続性を感じ、実はそれが割と苦手なのだが、クライマックスに起こる、もう、これはエモいとしか言いようがない感情のぶつかり合い、論理的な物語的説明を拒否するような盛り上がりにグッとくる。卵。その象徴的意味、記号的な意味を問うこと、なんで? という問いかけを無意味にさえ感じさせる圧倒的なイベント。書かれていない勢いを感じさせるのは、文体の力なのか。見事に女性しか物語らず、女性の身体の不都合さへとフォーカス。フェミニズム。その社会的な問題提起よりも、積み上げられたロジックがクライマックスでめちゃくちゃになってしまう、めちゃくちゃのなかで問題がなぜか解消してしまう、その力を言祝ぎたい(言祝ぐ、って言いたいだけ)。積み上げからの逸脱する瞬間の快楽は、『ウィステリアと三人の女たち』でも良いな、と思った。