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吉澤誠一郎 『清朝と近代世界: 19世紀』

 

清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)

清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)

 

東アジアにおける日本の立ち位置を捉えなおすような意味で東アジアの近代史を学びなおすシリーズ。こちらは岩波新書の「シリーズ中国近現代史」の第1弾であるのだが、同様の試みで読んだ『新・韓国現代史』と同様大変に面白い一冊だった。17世紀に成立した清朝の繁栄と衰亡をコンパクトにまとめているのだが、政治文脈だけでなく、どういった学問がメジャーとなっていたのか、あるいは隣国との関係性まで絡ませながら密度はとても濃い。

高校で世界史選択だったわたしにとっては随分懐かしい名前が並んでいる感じ。だが、高校世界史では触れられなかったアヘン戦争の原因の経済学的側面*1とか「へー! そういうことなの!!」と驚きを伴う学びがいくつもある。

アヘン貿易は、実は、アメリカ南部の奴隷制綿花生産、イングランド北部の紡績業やロンドンの金融市場とも深く結びついていた(P. 43)

とか、めちゃくちゃ大きなグローバル経済圏の存在を感じさせ、そうか、19世紀にはすでに東アジアにグローバリズムの波が来てたんだなぁ、とか思う。そういうのを理解させるためには中等教育において経済学の基礎的な部分を学ばせないといけないよねえ、とも思ったり。

アヘン戦争あたりから清って政治は腐敗してるし、ズルズル列強にやられまくっちゃって滅亡しちゃうんだよね〜」みたいなイメージがあると思うんだけど、そのイメージに対して本書は「それって歴史の勝者が一方的に作ったイメージだよね(辛亥革命清朝を滅ぼした側が作った歴史観だよね)」と批判的な立場を取っているのも面白い。

たしかに国内で紛争が起きたり、列強にやられまくって大変ではあったのだが、列強との貿易は一方的に搾取されていたわけではないし、制度をいろいろを変えたりして途中で盛り返したりもしている。むしろ、清って頑張ったし、このときにできた経済圏が現代の中国の経済圏の礎になってるから重要だ、みたいな話はひたすら学びでしかない。

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*1:高校世界史的にはアヘンの流行によって国の治安や風俗が悪化したことが要因としてあげられていたと思うが、それだけでなくアヘン貿易によって清国内の銀が大量に海外に流出したことも問題視された