sekibang 3.0

文化的消費活動の日記

山崎圭一 『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた』

 

 どういう話の流れだったかは、もう覚えていない。先日、子供(3歳)の寝かしつけ時のピロウトークにおいて、元寇の話をしていたのだった。昔、モンゴルから日本に攻めてきた人たちがいてね。(それで?)えーっと、天気が悪くて船がいっぱい沈んじゃったから助かったんだよ、そういうのが2回あったの。(それで? それでどうなったの?)……それでどうなったんだっけ?? 高校時代、受験で使わない科目はいっさい勉強しないストロングスタイルを貫いたため、世界史主選択だったわたしは、日本の歴史に関する記憶がかなり断片的になっていることに気づく。これではいけないんじゃないか。その反省から日本史を学びなおしてみようと思いつく。

それでオススメしてもらったのが本書。タイトルがなかなかの「ホントかよ」具合。YouTuber? 自分が買った版の帯にはいい加減な歴史講義をYouTubeで垂れ流していて大きく批判されたお笑い芸人が推薦文をあげている。「あやしい!」というのが第一印象だったが、読みはじめてすぐに「めちゃくちゃ良い本!!」と大絶賛したくなる。

年号を使わないという本書の特徴は、正直評価に迷うが(たしかに読みやすいのかもしれないが、年号がないと世界史と横に並べて「このとき外国ではなにが起きていたんだ?」というのがわからない)説明は抜群に頭に入ってくる。これは政権担当者を主役に展開しているから、というよりかは、ちゃんと出来事の背景にあるパワーバランスや、経済状況に関しての説明を物語的に語っているからなのだと思う。それゆえ、この本を社会人の読み直しに使うとしたら、経済学の基礎知識をもっていたほうがより効果的に読めそうだ。学生が受験勉強に使うときも、経済学を押さえておくと本書の知識がより生きたものになる気がする(中高生向けの経済学の教科書、ってあるのかな? 少し調べてみよう)。

学びなおしてみて改めて「あー、世界史選択で良かった。日本史難しいわ、なんか」ってちょっと思いつつ(だって細かくねえ?)、読み通してみて気づくのが、日本で金融緩和や財政出動を進めた施政者は、不遇の運命にあるのか? ということ。米ベースの経済から金ベースの経済に切り替えようとし経済を活性化させた田沼意次しかり、原敬高橋是清犬養毅も全員暗殺されている(この運命の力から逃れられた唯一の人物が、前首相……ということになるのだが、消費税上げたり、機動的な財政政策がハンパだったりしたから許されたのだろうか)。著者の経済観によるものだと思うのだが、緊縮財政をやると大体悪いことしかおきてないことを書いているのは教育的には良いと思う。